「製造現場で自由自在に動き回る球体駆動式全方向移動プラットフォームの開発」

株式会社TriOrb　代表取締役　石田 秀一 氏
　×　弁護士法人内田・鮫島法律事務所　弁護士 鮫島 正洋 氏

石田：私たちは九州工業大学と産業技術総合研究所の研究開発をベースに、製造現場で自在に動き回る移動のプラットフォームを開発しています。ロボットの脚に対して車輪の代わりに「球」を使う中核技術によって、「360°全方向移動」と「ミリ単位の高精度な移動」を実現、さらに「高い耐荷重」も持ち合わせています。

鮫島：御社の技術についてどのような特許を取得していますか。

石田：まず、隣り合って配置されている駆動用の３球体を、同時に同一方向に回転駆動させるための3つの駆動手段（モーター）があるという構造について基本特許を取得しています。加えて強化特許として、球体をより高精度に駆動制御させる構造についてPCT出願しています。

鮫島：ここまで革新的な技術であればノウハウもあるので簡単には真似できないとしても、ある程度模倣品が出てくることはやむを得ないものです。ハードウェアの特許は完璧なものではなく、特にグローバルではカバーしきれない部分が出てしまいます。そのためにブランディングやビジネスモデルによる差別化戦略も重要になっていきます。

鮫島：御社の技術・技術効果は非常に画期的ですが、普及させていくためにどのような戦略を立てていますか。

石田：当初のターゲットは、人海戦術に頼る製造現場の工程間搬送と付随作業の自動化/省人化です。ものづくりの現場で人が作業している通路やエリアは非常に狭く、床面も荒れており、従来型のロボットではその環境下で動作することができません。そこで当社のコンパクトかつ荒れた走行面でも走行可能な全方向移動プラットフォームがあれば、今までロボット導入ができなかった工程に対して自動化の検討が可能です。例えば、人が運んでいる製品を、複数のロボットを連携させて効率的に動かすことや、これを拡張してよりフレキシブルな生産ラインを構築させることにも活用できると考えています。

鮫島：現在は導入のためのPOCを行っている段階ですか。

石田：はい。国内メーカーでPOCを行っており、より具体的なユースケースを作っていくことで導入を早めようと考えています。また、製造ライセンスを付与している会社等もあり、保守や量産も協力体制のもと整えています。1台あたり500万〜600万のロボットが何百台と動いている世界で移動のプラットフォームを提供します。

鮫島：今後の戦略・ストーリーについて教えてください。

石田：私たちは偶然にも九州工業大学の同級生で集まり事業を行っていることもあり、上場して雇用を産んで北九州に貢献したいという思いがあります。また、私自身が九工大時代にロボット研究をしており、ロボットを専門とする人にとっての受け皿を作りたいとも考えています。

鮫島：北九州で事業を行うことのメリットはありますか。

石田：製造業が盛んな地域であり、優秀なエンジニアや経験豊富なシニアスタッフが多くスタートアップにない観点を獲得できることは他の地域にはない利点だと思います。さらにスタートアップとして挑戦する若者が加わり、幅広い年齢層との接点を持てる場所を作ることにも大きな意義があると考えています。私どもは「全方向移動プラットフォーム」によって、日本の製造業をより強く魅力的なものにするために、「移動」を基軸として貢献していきたいと思います。