「起業家と未来をつくるまち、長岡」
<特別インタビュー>
特別企画として、新潟県長岡市における創業・スタートアップ支援の取組みをご紹介いたします。
長岡高専の学生ロボコンメンバーが集結し創業した (株)FieldWorksのインタビューや、長岡市の創業支援制度、長岡高専のプレラボ(Pre-laboratory)制度など、「起業家と未来をつくるまち、長岡」に是非ご注目ください。
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2023.8.18 長岡インデペンデンツクラブ@ミライエ長岡 |
< インタビュー>
長岡に集結した技術者達が、草刈ロボットから日本中の農作業課題解決に挑む
株式会社FieldWorks 代表取締役 山岸 開 氏 (写真右 山岸 開 氏、写真左 小黑 司友 氏) |
■ ロボコンで意気投合、メンバーの一声から開発始まる
長岡高専を卒業後、長岡科学技術大学へ進学しました。高専時代と大学時代に学生ロボコンへ参加。それぞれで出会った仲間たちと一緒に、大学卒業後も何らかのロボットに関わる仕事をしたいと話をしていました。ロボコン仲間の一人が米農家で、その両親から夏場の草刈りを楽にできないかと相談があり、そこからFieldworksの取組みが始まりました。副代表の小黒は長岡高専時代から一緒にロボコンやっていたメンバーです。
■ 草刈りロボットの開発状況と今後の課題は?
長野県の山奥にある田んぼの畦道の草を刈るという課題がスタートでした。そこから草刈りについて調査する中で、畦道以外の幅広いシーンで需要があることがわかりました。そして、見学・ヒアリングを重ねる中で、最初に依頼を受けた山奥の畦道という環境がロボットを用いた草刈りにおいて非常に技術難易度の高いものだということもわかってきました。そこで、まずは技術ハードルが比較的低い場所、例えば空地や畑の畝間から着手し、経験と実績を積みながらロボットをアップデートしていくことで、段階的に草刈りロボットを高度化していこうと考えています。山奥の畦道を100とするなら、現在の到達度は30くらいですね。
■ 高専卒業生で周囲も起業する人が多いのでしょうか。
長岡高専・長岡技術科学大学で同級生だった樋口翔太さんが起業した株式会社Closerでバイトさせてもらった経験が、私自身の起業のきっかけです。ロボコンを通じて、与えられた課題を如何に解決するか、という考え方が鍛えられたからか、社会課題を自分が作った事業によって解決したいという想いが奥底にあったのかもしれません。就職ではなく起業するという選択をする周囲の知人も増えており、以前のような起業に対する抵抗感や敷居の高さはなくなってきているように思います。
■ 長岡市は学生起業のサポートが充実しています。
長岡市学生起業家育成補助金の活用について、イノベーション課の皆さんには手厚くサポートいただきました。起業や経営の知識がゼロでも温かく支援してもらっていて、長岡市の協力なしにはここまで進められなかったと感じています。いま入居している施設も長岡市が運営しているもので、安く貸してくれています。創業当初のスタートアップにとってはこれが一番ありがたいですね。
■ Fieldworksの今後の野望について
会社として立ち上がったばかりなので、しっかり顧客へのヒアリングを行い適切な機能を搭載できる環境を作っていきます。最終的には、最初に相談を受けた長野の農家のように、人口減少が進む地域をロボットの力でサポートできたらと考えています。また、草刈りだけに留まらず、それ以外の農作業についても自動化していくことを考えています。昨年より始まっている政情不安、これに起因する食糧不安は、日本も他人事ではないです。一方で、日本では田んぼがどんどん手つかずになってきて、また高齢化も進んでいる状況。最終的には米作りのすべて自動化を目指して、まず草刈の問題から解決していきます。
< 長岡高専の取組み>
プレラボ(Pre-laboratory)制度は、教員の萌芽的研究支援と学生教育を主目的として低学年からの研究活動を活発化させる事を目的として長岡高専で運用されているものです。本制度は、「萌芽的研究・アイデアの具現化(学生教育)」、「各種セミナーの開催」、「新しい教育の模索」の三つを柱としており、誰もが萌芽的テーマやセミナー等を全学生(学年横断・学科横断)・全教職員に提案出来ることに大きな特徴があります。
■ 事例(音の見える化による異常検知ソリューション)
長岡市内の印刷工場から与えられた課題として、業務の属人化と人手不足が挙げられました。ここで取り上げたのが、不良品として廃棄することになる糊の染み出しをベテラン社員が自分の耳で聞いて判別しているという非効率です。これに対し、AIに動作音を学習させ異常検知するソリューション「その音どーいが?」を開発しました。これによりベテラン社員の属人的な業務をAIで代替することができ、人手不足の解消にも貢献します。このプランは、「第4回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2023(DCON2023)にて、企業賞を受賞し、今後法人化も検討しています。
< 長岡市の取組み>
今年7月にオープンした「米百俵プレイス ミライエ長岡」に「NaDeC BASE」を移転し、4大学1高専(長岡技術科学大学、長岡造形大学、長岡大学、長岡崇徳大学、長岡工業高等専門学校)、産業界、支援機関の英知を結集する開かれたイノベーションの拠点として、連携・協働を推進しています。
■ ファーストペンギンプログラム
天敵が潜む海に餌を求めて最初に飛び込む勇敢なペンギン(=ファーストペンギン)のように、ベンチャースピリットを持って挑戦する起業家を応援する長岡市独自のプログラムです。この中核となる「リーンローンチプログラム」は、デザイン思考による事業アイデア発想や、仮説検証を繰り返して効率的に新規事業を立ち上げる方法「リーンスタートアップ」などを学び、アイデアの事業化を目指すプログラムとして令和元年度から開催し、修了者から5社の起業が実現するなど実績が出始めています。
■ パワーエレクトロニクス産業の振興
長岡技術科学大学には最先端のパワーエレクトロニクス研究室が6つあり、学生数100人以上と世界で見ても屈指の研究体制を有しています。本学とながおか新産業創造センター(長岡市運営)、新潟県工業技術総合研究所で「長岡パワーエレクトロニクス研究会」を設立し、関連分野企業の「ラボ」の進出と優秀な学生の好循環を生み出すことで、「パワエレ村」として長岡から世界へ挑戦できる企業を輩出していきます。
※「THE INDEPENDENTS」2023年10月号 P.2- 3より
※冊子掲載時点での情報です
株式会社FieldWorks
- 住所
- 新潟県長岡市深沢町2085-16ながおか新産業創造線t-あ ルーム8
- 代表者
- 取締役 小黑 司友
- 設立
- 2023年6月15日
- 資本金
- 50万円
- 従業員数
- 事業内容
- 農業用ロボットの開発・製造
- URL
- https://fieldwork-s.com/