「低温蒸留技術を用いた酒蔵再生の新たなビジネスモデル」
ナオライ株式会社 代表取締役 三宅 紘一郎 氏 × 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏
鮫島:日本酒でも焼酎でもない第三の和酒「浄酎(じょうちゅう)」を生み出し、日本各地の日本酒酒蔵を未来に引き継ぐ広島県呉市のスタートアップです。
三宅:「浄酎」は日本酒を原料とし、独自の低温蒸留によって日本酒由来の豊かな香りと風味そのまま凝縮した、これまでにない全く新しいお酒です。2019年、広島県神石高原町にあった酒蔵をリノベーションし、浄酎のための蒸留所をスタートしました。かつて4,000箇所あった酒蔵が40年間で1,200箇所に減少している中、浄酎という新たな選択肢を提示することで酒蔵再生というチャレンジを続けているところです。
鮫島:浄酎をつくるための製法特許(=低温蒸留)をおさえながら、全国各地の銘酒とコラボレーションしていくのは洗練されたビジネスモデルだと感銘を受けました。
三宅:各酒蔵と浄酎という新たなジャンルを一緒に創り上げていきます。浄酎販売と合わせて、低温蒸留の副産物として抽出されるアミノ酸エキスを化粧品原料などに利活用することで、同じ量の日本酒販売に対して8.5倍の売上が見込めます。浄酎生産所一拠点あたりのROIについて再現性が確立した暁には、47都道府県のローカルコミュニティへ、このナオライ浄酎モデルを水平展開していきます。
鮫島:知財戦略においては、情報のオープン/クローズを巧みに管理されるとよいでしょう。製法特許はむやみに権利化を進めると重要なノウハウ流出のリスクがあります。一方で「浄酎」という名称は一般普及しやすいよう過度な保護はしない。ワインが産地によってボトル形状が異なるように、意匠権を用いたブランディングも面白いかもしれません。
三宅:浄酎のボトルは浄化されたピュアなアルコールの水滴が落ちる瞬間をモチーフにしたもので、意匠権も取得しています。日本らしい、神聖なアルコールというイメージです。コカ・コーラのボトルやヤクルトの容器のように、一目で見て浄酎とわかるようにブランドを確立させていきたいと考えています。
鮫島:日本酒で海外市場に挑戦する動きも増えてきています。最後に、今後の展望をお聞かせください。
三宅:日本酒酒蔵の再生をテーマにしていますが、狙うは蒸留酒マーケットです。新鮮さが売りの日本酒とは異なり、浄酎は熟成することで価値が上がります。これは、劣化せず常温輸出が可能であることも意味します。特に中国ではホワイトリカー市場が巨大で、時価総額ランキングに白酒メーカーがあるほどです。日本酒ではできなかったことを、日本酒を原料とする浄酎によって克服し海外で稼ぐ。これにより、日本酒文化を持続的なものにしていくことが我々の使命です。
―「THE INDEPENDENTS」2023年9月号 P.10より
※冊子掲載時点での情報です
<話し手> ナオライ株式会社 代表取締役 三宅 紘一郎 氏(→ イベント登壇情報) 生年月日:1983年6月12日 出身高校:広島県立呉宮原高校 親族に酒蔵関係者が多く、幼いころから日本酒に興味を持つ。立命館大学時代は日本酒を中国で広げたいと上海交通大学へ交換留学。その後20代の9年間を上海で過ごし日本酒を売り歩く。2014年日本に帰国し2015年ナオライ株式会社を創業。2019年浄酎をリリース。 ナオライ株式会社 設立日 :2015年4月6日 所在地 :広島県呉市豊町久比3960番地 資本金 :75,740千円 事業内容:日本酒を蒸留した「浄酎」の生産販売 |
<聞き手> 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏 1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。 1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。 1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。 1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。 1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。 2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。 |
ナオライ株式会社
- 住所
- 広島県呉市豊町久比3960番三角島
- 代表者
- 代表取締役 三宅紘一郎
- 設立
- 2015年4月6日
- 資本金
- 75,740千円
- 従業員数
- 事業内容
- 日本酒を原料とした新たなお酒である「浄酎」の製造販売
- URL
- https://naorai.co/
- 情報更新日
- 2023年9月27日
※上記は、情報更新日時点での情報です。