「超汎用性他家免疫細胞療法で、がん治療の新時代を切り拓く」

リバーセル株式会社　代表取締役 梶川 益紀 氏　×　弁護士法人内田・鮫島法律事務所　弁護士 鮫島 正洋 氏

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鮫島：鮫島家はいわゆる「がん家系」で、本日のテーマは他人事ではありません。従来のがん治療は手術療法・放射線療法・化学療法が知られていますが、バイオ医薬品と共に近年注目されているのが免疫療法です。

梶川：京都大学医生物学研究所所長（京都大学教授）の河本宏博士が世界に先駆けて開発した「多能性幹細胞からのキラーT細胞再生技術」を基本技術とする他家免疫細胞療法の提供を目指し、2019年に創業しました。がん患者の40％は標準治療では治らないと言われている中、最後の砦としてがん治療の新時代を切り拓くべく、研究開発に取り組んでいます。

 

鮫島：自身の細胞を用いる現行の自家細胞療法では患者への負担が大きく、時間や費用もかかる事が難点でした。貴社技術によって実現する他家細胞療法を用いることで、より多くの患者を救える可能性が高まります。

梶川：他家細胞療法になくてはならない３つの基盤技術を有しているのが当社の強みです。１つは「超汎用性細胞」技術で、T細胞やNK細胞からの免疫拒絶を抑制します。2つ目は、抗原特異的なT細胞レセプター（TCR）を幹細胞に遺伝子導入する「TCR-iPSC法」です。3つ目は、ここまでの幹細胞から高活性キラーT細胞を高効率に分化誘導する「DP単離法」です。こうやって高品質かつ大量に作られた細胞を凍結保存しておくことで、「誰にでも」「すぐに」使えるoff-the-shelfの他家細胞療法が可能になります。

 

鮫島：自社開発パイプラインを進めながら、大塚製薬(株)はじめ国内外製薬企業へのライセンスを既に実施しています。他家細胞療法に対する期待の高さであると同時に、特許の強さの証左でもありますね。

梶川：非常に幅広く権利化された特許であり、今後は次世代の開発目標に向けて自社での特許出願にも注力していきます。事業計画上、マイルストーンフィーは少し先になりますが、複数社へのアップフロントフィーが開発資金を下支えしています。当社技術はがんだけでなく、感染症や自己免疫疾患などあらゆる疾患の治療に適応していける可能性があり、各社との交渉を重ねていますが、フィー相場が日米でかなり乖離がある点が悩みです。

鮫島：無形資産に対する捉え方の違いはあると思います。米国では2000年頃から無形資産に対する投資が有形資産を上回っていますが、日本は依然として有形資産を重視する傾向です。知財業界としても重要なイシューですが、政府が今まさに是正しようとしていると聞きます。

梶川：年内を目標にシリーズBの資金調達活動を行っていますが、我々の特許化された基盤技術が企業価値の源泉であり、この目に見えない資産を如何に評価してもらうかがポイントだと感じます。業界全体での免疫療法の活性化を目指して企業同士や産官学の連携を積極的に推進しており、当社の成功によって少しでも無形資産への投資促進につながればと身の引き締まる思いです。本日はありがとうございました。

―「THE INDEPENDENTS」2023年8月号 P.10より

※冊子掲載時点での情報です