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「経済成長戦略「フードバレーとかち」」

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帯広市
市長 米沢 則寿さん

1956年03月 北海道帯広市生まれ
1978年03月 北海道大学法学部 卒業
1978年04月 石川島播磨重工業(現IHI)入社
1985年11月 日本合同ファイナンス(現ジャフコ)入社
1989年06月 同社ロンドン駐在員(平成5年所長就任)
1995年06月 北海道ジャフコ取締役社長就任
2005年02月 ジャフココンサルティング取締役社長就任
2010年01月 ジャフコ経営理事
2010年04月 帯広市長当選 就任

人口:約17万人(十勝地域全体で約35万人)
面積:東京23区と同等(十勝地域全体では岐阜県と同等)
http://www.city.obihiro.hokkaido.jp/

「フードバレーとかち」構想を掲げ、食と農業を柱とした産業政策に取り組む帯広市。
ベンチャーキャピタル会社から昨年4月に帯広市長となった米沢則寿氏にお話を伺いました。

私が金融の仕事に携っていた10年前の北海道は、地元からたくさんの上場会社が育った華やかな時代でした。しかし今や北海道地域を取り巻く環境も大きく変わり、新しい経済成長戦略(産業政策)が必要とされています。地域産業政策は、それまでの地域の文化や歴史を踏まえ、さらに飛躍するものとしなければなりません。そこで新しいキャッチフレーズとして「フードバレーとかち」を掲げました。

1.農業を成長産業にする
 十勝は豊かな自然と先人たちのたゆまぬ努力により、安全・安心な農作物を数多く産み出す、日本の食料生産基地として発展を続けています。小麦、馬鈴薯、小豆、ビート(砂糖大根)などは、日本一の生産量です。
 十勝地域の食料自給率は1100%、畑作耕作面積は全国の約5%、農家1戸当たりの耕作面積も約40haと全国平均の約40倍でヨーロッパの農業に匹敵する水準にあります。先日、国が公表した「我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」で示された5年後の日本のあるべき農業が、既にここにはあります。

2.食の価値を創出する
 これから食に求められるのは、安全なものをハイクオリテイで大量に作る事です。3月11日の震災以降、食の安全が見直され、従来のAdd Value(付加価値)から、Basic Value(基本価値)が重要になってきました。十勝には2,000時間を超える日照時間や水・空気などの良質な自然に恵まれた環境があります。地域の大学、試験研究機関などとの連携によって、研究開発力やブランド力を高めていきます。

3.十勝の魅力を発信する
 帯広市を中心に十勝全体がスクラムを組み、一丸となって「フードバレーとかち」を推進し、開拓以来培ってきた「食と農林漁業」の優位性や地域特性を活かし、生産・加工・販売などが連携した十勝型フードシステムの形成を進め、アジアの食と農林漁業の集積拠点を目指していきます。

・特区の申請
 現在、北海道、札幌市、函館市、江別市、北海道経済連合会と、十勝管内の19市町村が共同で、「北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区」を国に対して申請中です。
 規制緩和により、農業コストを下げ、安全を訴えていきながら、東アジア等への食品輸出拡大を考えています。われわれはTPPが騒がれる1年以上前から食クラスター地域としての本格展開を見据えています。
 農業分野にチャレンジするヒトが、日本だけでなく世界中から集まる地域にしたいと思います。

・民間企業との連携
 十勝の農産物は全国の大手企業によって加工販売されています。新しく開発された小麦品種「ゆめちから」は、製パンや中華麺などへの加工利用に期待されています。太陽光発電やバイオマスなど、エネルギー供給地区としての可能性も求めています。最近は大企業トップとの交流も深まりつつあり、先日は「2030年の農業と社会について考える」ことをテーマにした勉強会なども十勝で行われました。

・金融の活用
 農業はアグリカルチャーと言われるように、従来はビジネスとして必ずしも注目されませんでした。
 市長になってからの1年半は種まきでしたが、今後は金融の活用も考えていきます。
 成長のために必要なエクイティとデットを組み合わせた地域ファンド設立なども検討しています。
 
※右写真:TOKYO AIM取引所より北海道Nomad構想の説明を受ける米沢市長

※全文は「THE INDEPENDENTS」2012年1月号にてご覧いただけます