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「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが付与された著作物の利用について著作権侵害が肯定された事例」

東京地裁令和4年7月13日判決

 

1 事案

 
 本件は、原告が、被告がその管理運営するウェブサイトに本件写真を基にして作成した本件画像をアップロードしたことが、原告の本件写真に係る著作権を侵害したと主張して、被告に対し、著作権に基づき、本件写真の複製等の差止めを求めるとともに、損害の賠償を求める事案です。
 原告は、本件写真共有サイトにて本件写真を投稿し、公開するとともに、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(作品を公開する著作者が条件付きで作品の再使用を許可するに当たって容易にその意思を表示できるようにクリエイティブ・コモンズが策定した条件付使用許諾の類型。)を付与し、著作者の表示等を条件に本件写真の複製等による使用を許諾していました。
 

2 東京地裁の判断

 東京地裁は、著作権侵害について、以下のとおり判断しました。
 「前記前提事実、証拠(甲3、4)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、・・・遅くとも平成29年11月4日までに、外注会社に本件被告サイトの制作を依頼し、同外注会社をしてビジュアルハントから本件写真の画像データをダウンロードし、別紙URL目録記載〈1〉のURLによってアクセスできるように、上記の画像データから作成した本件画像の画像データをサーバーに保存して、本件写真を有形的に再製するとともに、本件被告サイト内の同目録記載〈2〉のURLによりアクセスできるページに、上記サーバーに保存された本件画像データへのリンクを張ったことが認められる。
 上記認定事実によれば、被告は、本件被告サイトにおいて、本件画像をサーバー内に保存することにより、本件写真を複製し、送信可能化したと評価することができる。そして、前記前提事実(4)のとおり、本件被告サイト内において、本件写真の著作者が原告であることは表示されていない。
 したがって、被告は、前記前提事実(3)の原告が付与した使用許諾条件に違反して本件写真を複製及び送信可能化し、かつ、原告の実名又は変名を著作者として表示することなく本件写真を公衆に提供又は提示したといえ、原告の本件写真に係る複製権及び自動公衆送信権並びに氏名表示権を侵害したといえる。」


3 本裁判例から学ぶこと

 インターネット上には、多くの著作物が掲載されています。その中で、インターネットサイト上で、「著作権フリー」とか、「フリー素材」とか、「無料画像」など表示され、一見、著作物を自由に利用できるかのような表示がされていることがあります。しかし、このような表示のあるインターネットサイトでも、そのほとんどが、利用に関し条件を付しています。同条件は、法的には利用許諾の条件となり、条件違反での利用は著作権侵害を構成します。
 本件でも、本件写真はインターネットの写真共有サイトで共有されていましたが、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが付与されており、本件写真の利用には、著作者の表示等の条件が付されていたため、被告が行った著作者の表示を欠く利用が著作権侵害と認定されました。
 インターネット上の著作物を利用する場合には、「フリー素材」などの表記がある場合でも、必ず利用条件を確認することが必要でしょう。
 

以上
 

※「THE INDEPENDENTS」2023年7月号 P13より
※掲載時点での情報です
 

 
  弁護士法人 内田・鮫島法律事務所 弁護士/弁理士 高橋 正憲 氏

2004年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻修了後、(株)日立製作所入社、知的財産権本部配属。2007年弁理士試験合格。2012年北海道大学法科大学院修了。2013年司法試験合格。2015年1月より現職。【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】
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