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「東北地域におけるハイテク産業形成の条件」

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東北大学大学院経済学研究科
教授 西澤 昭夫さん


西澤 昭夫 氏
東北大学大学院経済学研究科 教授
日本ベンチャー学会 副会長

1980年筑波大学大学院社会科学研究科経済学専攻博士課程満期中退。1982年日本合同ファイナンス(現・ジャフコ)入社、企画部長、NJI取締役などを歴任。93年敬和学園大学人文学部国際文化学科助教授に就任後、東北大学経済学部教授、東北大学大学院経済学研究科教授、NICHe副センター長、東北大学TLO社長、TICC監査役などを歴任。05年東北大学総長特別補佐(利益相反マネジメント担当)





≪東北大学未来科学技術共同センター(NICHe) 概要≫
住所:宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-10
TEL:022-795-7105 FAX 022-795-7985(開発企画部)
http://www.niche.tohoku.ac.jp/

―東北では大学を核とした新産業創出が期待されています
東北大学には工学部を中心に世界最先端技術の研究開発が集積している。会津大学も創立から15年経って、東北ITの拠点になる可能性が出てきた。これからはサイエンスやテクノロジー分野での事業成功は大学から出てくる。アメリカでは大学のない地域は伸びない。ボストン、サンフランシスコ、オースティン、その他のハイテク産業形成地域は世界トップクラスの大学を核に発展している。

―国の役割や産業政策も変わっていく必要がありますか
意欲的な地域を支援するインセンティブ的な政策が必要。全国一律的な公共投資では、地域それぞれに特徴的な産業は育たない。大学からの技術移転でベンチャー企業を興し、SBIRなど国の支援制度を活用しつつ、地域全体で育てるエコシステムが必要。大企業と中小企業の従来型サプライチェーンでは新しい産業創出は難しい。

―大学発ベンチャーは全国1000社以上設立されました。今後の課題について教えてください
フォトニックラティスという東北大学発ベンチャーがある。日立マクセル出身の岸田さんという方が経営を見るようになってから業績が改善している。大学の先生はアイディアの追求はできるが、製造を均一化して製品にするのは不得手。東北地域には技術のネタはたくさんあるがビジネスにできる人が少ない。経営的に事業をバックアップする人材が課題。

―地域自治体による事業支援の成功例はありますか
山形県鶴岡市にヒューマン・メタボローム・テクノロジーズという慶應大学発ベンチャー企業がある。市が全面的にバックアップしており、国の補助事業でも11億円を獲得するなど、同じ事業では東北大学医学部を上回る実績を上げた。この成功の契機となる慶応大学先端生命研究所の誘致では、前の市長が旗を振って全面的にバックアップしている。事業の目利きはバイオフロンティアパートナーズというVC。市長自らが地域活性化にどれだけの責任を持てるかがポイント。

―東北地域にはソニーやアルプス電気など大企業があります
大学と大企業との共同研究はたくさんあるがベンチャーを興す人は少ない。大企業の経営者にも自らが事業部門をMBOする気概が欲しい。地域の核となる企業は必要だ。仙台をスマートシティの実験場にして世界へ販売する構想も面白い。

―東北地域では上場企業は少ないですが、中堅企業に意識変化はありますか
震災を契機に、経営者に現状でいいのか、という危機感が出てきた。外部資本も受け入れ、経営体制を見直そう、新たな成長モデルを築き、単なる下請けから脱皮しようという意識に変わってきている。

―資金面のバックアップ体制は整っていますか
東北イノベーションキャピタルは40億円を募集する。地域活性化にはファンドの力が必要。新しい資金調達手法や、産業革新機構や投資銀行的業務を持つプレイヤーの進出にも期待している。

―東北地域で今後注目される成長分野を教えて下さい
未来科学技術共同センター(NICHe)を中心とした研究会に「次世代移動体システム」「ナノテク・低炭素科材料技術」がある。「脳トレ」で有名な川島隆太教授の研究もNICHeから全国に発信された。東北大学連携ビジネスインキュベータ(T-Biz)では東北大学からの研究シ―ズをビジネス化している。
(2011.6.2)


※全文は「THE INDEPENDENTS」2011年7月号 - p19にてご覧いただけます