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「モデルチェンジ品の形態模倣についての保護期間(不正競争防止法2条1項3号)について判示された事例」

公開


弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士/弁理士 高橋 正憲 氏

2004年北海道大学大学院工学研究科量子物理工学専攻修了後、(株)日立製作所入社、知的財産権本部配属。2007年弁理士試験合格。2012年北海道大学法科大学院修了。2013年司法試験合格。2015年1月より現職。

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知財高裁平成31年1月24日判決

1 事案

 本件は、サックス用ストラップ(以下「原告商品」という。)を販売する控訴人が、サックス用ストラップ(以下「被告商品」という。)を販売する被控訴人に対し、被告商品は原告商品の形態を模倣した商品であり、被控訴人による被告商品の販売は、不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為(商品形態模倣行為)に該当すると主張して、被告商品の販売等の差止め等を求めた事案です。

2 争点

 商品形態模倣行為の保護期間は、「日本国内において最初に販売された日から起算して3年」(不正競争防止法19条1項5号イ)と規定されているところ、本件では、旧原告商品の販売から3年経過していましたが、旧原告商品をモデルチェンジした原告商品の販売から3年経過していないので、問題となりました。

3 知財高裁の判断

 不正競争2条1項3号「によって保護される「商品の形態」とは、商品全体の形態をいうものであり」、「原告商品の形態と旧原告商品の形態は、実質的に同一の形態とは認められない」のであり、「原告商品の販売が開始されたのは、平成28年3月ころであること」「によれば、原告商品が日本国内において最初に販売された日は同月ころと認められるから」、本件は、「日本国内において最初に販売された日から起算して3年」(不正競争防止法19条1項5号イ)を経過していないとして、保護期間内であると判断しました。

4 本裁判例から学ぶこと

 商品形態模倣行為の保護期間は、「日本国内において最初に販売された日から起算して3年」(不正競争防止法19条1項5号イ)と規定されており、3年を経過した商品に保護は及びません。なぜならば、不正競争2条1項3号の趣旨が、先行者の投資回収にあるところ、先行者の投資回収期間としては3年程度で十分であり、また、同期間を長期に設定すると後行者の開発意欲を制約することになるからです。
 保護期間については、商品形態が当初の形態から変更された場合に、「最初に販売された日」がいつになるのかが(当初の販売日か、変更品の販売日か)、問題となります。
 この点について、商品に若干の変更が加えられたのみでは、先行商品の販売開始日が「最初に販売された日」であるとされます(東京高裁平成12年2月17日判決)。
 他方、本件のように、先行商品と、変更品を全体として比較して、実質的同一ではなければ、変更品の販売開始日が「最初に販売された日」とされ、変更品は先行商品とは独立して、別個保護期間が設定されることになります。
 モデルチェンジした製品については、先行商品の販売日から3年が経過していたとしても、不正競争防止法2条1項3号の保護が及ぶ場合があるので、本件は参考になります。
 なお、商品形態については、今回紹介した不正競争防止法2条1項3号の他、周知な形態であれば不正競争防止法2条1項1号の保護を受けることができ、また、意匠権による保護も可能であり、各制度を駆使して、模倣品対策を施すことが肝要です。

以上

※「THE INDEPENDENTS」2023年3月号 P11より
※掲載時点での情報です

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