「シルクのバリューチェーン改革に向けた知財戦略」
<話し手>
代表取締役 高嶋 耕太郎 氏
1982年6月17日生。高崎経済大学卒業後、(株)デイトナ・インターナショナル入社。Freaks-Store事業部で商品バイヤーやMDに従事。その後、Amazon-Japanでアパレル部門のBuying部長、Consulting部長、(株)TOKYO BASEで商品部長、EC 部長、取締役事業本部長を経て、2021年6月当社設立、代表取締役就任。
【株式会社NEXT NEW WORLD】
【設 立】2021年6月15日
【所在地】群馬県桐生市本町6丁目-2
【資本金】5,000千円
【事業内容】シルクを用いた製品開発および研究開発事業
<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋 氏
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。
鮫島正洋の知財インタビュー
「シルクのバリューチェーン改革に向けた知財戦略」
鮫島:AmazonやTOKYOBASEなどアパレル業界で華やかなキャリアを積んできた高嶋さんが、群馬県桐生市で新たなチャレンジを始めました。当地は古くからシルクの街として国内外で知られていますね。
高嶋:高崎経済大学在学時より桐生市の方と交流があり、シルクの歴史に触れました。アパレル資材だけでなく、食品や化粧品・医薬品など、自然原料でありながら高機能でかつ多くの用途開発ができる可能性をシルクは持っています。このサステナブルな素材を用いて、環境負荷の大きいプラスチック等を代替えし、気候変動を防ぐことをビジョンとして事業に取り組んでいます。
鮫島:SDGs社会において、シルクに対する期待が今後高まっていくだろうと私も注目しています。海外でも同業が台頭してきている中で、貴社はどのような事業展開をお考えでしょうか。
高嶋:繊維向けに最適化されているシルクのバリューチェーン改革が必須で、そのために「シルク原料のコストダウン」と「需要創出し単価を上げる」ことが当社の戦略です。前者は、蚕に与える代替餌の技術を有する海外企業と協業しており、今後は新種開発も視野に入れています。後者の取組みでは、独自開発のシルク石鹸「soooo silk fluffy soap」がMakuakeで大ヒットし大手百貨店でも取り扱われるほどで、他にも医薬部外品や食品添加剤でのプロダクトを仕込んでいます。いずれも研究に裏打ちされた付加価値が成功要因と捉えており、知財戦略が目下の課題です。
鮫島:貴社説明資料のように、特許の観点でもカオスマップの作成は重要です。その上で留意すべきは、誰も参入していない領域に大きな「市場」があるかどうかです。ベンチャーとしては、最初はポテンシャルマーケットを押さえて技術の有用性を証明するのも有効な一手だと思います。
高嶋:とあるシルクR&D会社の独占的実施権を受けて、シルク原料を用いた動物向けサプリメントを今年ローンチする予定です。確かに小さな市場かもしれませんが、熱狂的な潜在ユーザーは確認できています。また、同分野の主要企業とのタイアップも進めていますが、新しいもの・付加価値の高いものを強く求めており、当技術の市場性を証明するにはうってつけの分野であると捉えています。
鮫島:企業や大学等からの独占ライセンスだけでは知財戦略として十分とは言えません。上市後に新たな課題を発見することもあるので、改良を重ねて追加の特許取得を貴社としても検討されることを推奨します。
高嶋:小売業界での長い経験から真似できない/付加価値のある本物を提供すればお客様は必ず支持してくれると信念を持っており、その源泉が特許であると認識を新たにしました。我々が得意とするプロダクト開発とマーケティングで特許技術のブランドを確立し、それをライセンスビジネスに昇華するビジネスプランですが、戦略的な特許取得について引き続きご助言いただければ幸いです。本日はありがとうございました。
―「THE INDEPENDENTS」2023年3月号 P10より
※冊子掲載時点での情報です