「揚げ調理の課題解決で環境貢献を実現する次世代フライヤー」
<話し手>
代表取締役 山田 光二 氏
生年月日:1950年7月16日 出身高校:静岡県立沼津東高校
早稲田大学第一文学部卒業後、日本ビクター(株)入社。早期退職後の2006年にフライヤー研究開発事業に参画。同事業は頓挫したが多くの改良余地と可能性を知り、2009年より独自の研究開発を開始。現在のクールフライヤーに繋がる基本構造が固まり特許出願を行って、2014年当社設立、代表取締役就任(現任)。
【クールフライヤー株式会社】
【設 立】2014年7月22日
【所在地】神奈川県横浜市泉区緑園6-44-14
【資本金】48,050千円
【事業内容】次世代フライヤーの開発・製造販売
<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋 氏
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。
鮫島正洋の知財インタビュー
「揚げ調理の課題解決で環境貢献を実現する次世代フライヤー」
鮫島:食べるのも料理するのも大好きなので、油の劣化を防ぎ、油ハネも大幅低減できるフライヤーが如何に画期的であるかはよく理解できます。どのような原理なのでしょうか。
山田:全ての課題を解決する鍵は「沈殿の促進」にあります。揚げカス・不純物が油槽内で加熱されて、炭化したり(≒油の劣化)、水分が沸騰気化したりして油ハネを起こすことが、揚げ調理のさまざまな課題を生む要因です。これに対し、独自の構造と加熱制御により水分を素早く油槽下部の低温油槽に沈殿させることで、気泡が減少して揚げカス等の微細な固形物が沈殿しやすくなり炭化の進行が抑えられます。また高温で水分と油が接触する機会が減って加水分解による油の劣化も抑制されます。
鮫島:創業前より長くフライヤーの研究開発に関与し、既に4件の特許も登録済みです。
山田:油槽の底部を水で覆い、ヒーター直下の油(低温油槽)を水冷する仕組みです。これにより、調理中に発生した水分や微細な揚げカスは低温である底部にすばやく落下沈殿し、気化や炭化を防ぐことが可能です。また独自の自動注水制御とオーバーフロー構造により底部の冷却力を保ち、冷却水の節約を実現しています。これら特許技術に加え、食材投入を自動検知し、発生した水分の落下を妨げないように独自のヒーター構成と、二系統のヒーターを独立制御する加熱制御技術によって、油槽中央部に下降対流+を発生させています。米国・中国でも出願済みです。
鮫島:第三者機関による分析試験でも高成績が出ており、経済性だけでなく環境負荷軽減の観点でも高い貢献度が期待されています。
山田:1日10kgで10日間の調理実験を実施しましたが、一般的なフライヤーの1日目の劣化程度の低い酸価値(=0.69)が確認できました。これは油の使用量を平均で40%以上削減できる程のインパクトです。飲食店やコンビニ等にとっては油の交換や濾過だけでなく廃油・清掃のコスト圧縮が期待でき、世界の食用植物油消費量で見れば年間2000万t(揚げ油を、油消費量全体の25%で試算)の削減となるなど、フードロス問題やSDGs、カーボンニュートラルへの貢献にもつながります。
鮫島:ビジネスとしては、ファブレスでの製造販売と調理家電メーカー等に対するライセンスを考えておられますが、クールフライヤーという商標にブランド認知が蓄積されるよう工夫したいですね。”Intel inside”のように、名称が表に出るようにライセンス先と交渉されてみては如何でしょうか。
山田:そのようにしたいと思います。シンプルでスケールアップも容易な構造であるので、家庭用・業務用・食品工業用のパートナー候補に広く知ってもらうことが重要になりそうです。当社技術は「美味しさと健康」「安全と快適」「環境SDGsへの貢献」が提供価値であると認識しており、単なる技術・製品の提供ではなくソリューションとして提案できる体制構築を目指していきます。
―「THE INDEPENDENTS」2023年2月号 P8より
※冊子掲載時点での情報です