「デカフェ市場をテクノロジーとデザインで変革する」
公開
<話し手>
代表取締役 岩井 順子 氏
1984年愛知県立芸術大学卒業後、ブラザー工業(株)入社(開発部)。1991年北澤デザインオフィス設立、ブラザー工業(株)新規事業開発部 外部ディレクター、(株)Ziba Tokyoを経て、2014年Dia-Log Japan(株)設立、代表取締役就任。2014年MormediS.A.(Spain)Japan Director 就任。2018年当社取締役就任。2020年代表取締役就任(現任)。
【ストーリーライン株式会社】
【設 立】2018年7月13日
【所在地】東京都世田谷区奥沢4-26-7
【資本金】58,914千円(株主:経営陣、VC)
【事業内容】超臨界CO2抽出技術を用いたデカフェコーヒー事業
<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋 氏
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。
鮫島正洋の知財インタビュー
「デカフェ市場をテクノロジーとデザインで変革する」
鮫島:デカフェと言えば、妊婦や健康に問題がある人向けのカフェインレスコーヒーのイメージが一般的です。それ以外の人には味も値段も美味しいとは言えません。これを変革しようというのが貴社の取組みです。
岩井:値段については流通が問題です。東アフリカや中南米などの生産国で生産しドイツやカナダで加工するため、コスト高になってしまいます。これを生産・加工を同じ地域で行い消費地へ運ぶことで解決しようと2018年創業しました。現在、アフリカで唯一のデカフェ工場をルワンダに設置し、美味しくて手軽な価格のデカフェ商品化に向けて取り組んでいます。鮫島:貴社で販売しているデカフェを先日いただきましたが、香りや風味は全く普通のコーヒーと遜色ありませんでした。これを実現するのが東北大学と共同研究している超臨界二酸化炭素抽出技術です。最近では東北大学ベンチャーパートナーズから出資も受けていますね。
岩井:我々は技術起点の大学発ベンチャーではありません。実現したいビジネス構想に対し、カフェイン除去方法がボトルネックになっていました。リサーチを重ねる中で超臨界技術の可能性に行き着き、知人の紹介で(株)東北テクノアーチがこの分野で先駆的な研究を行う渡邊賢教授をつないでくれました。異なる領域での応用研究をされていましたが、ご自身がコーヒーマニアだったこともあり、二つ返事で快諾してくださいました。鮫島:おそらく知財調査をしてもデカフェと超臨界技術は結びつかなかったでしょう。偶然の賜物かもしれませんが、事業に対する強いこだわりを感じます。貴社の場合はブランディング戦略がより重要ですね。
岩井:超臨界は水と二酸化炭素のみを使う安全な技術で、短時間にカフェインのみを選択的に抽出でき有効成分が損なわれません。本技術を用いれば生産物の高付加価値化を実現できるので、買取価格の適正化はじめ様々な仕組みで生産者のQOL向上を支えることが可能になります。この美味しいデカフェ技術と生産者とのサスティナブルな関係性をコアに、製造プロセス全体でブランディングを図ります。鮫島:経済性と持続可能性を両立させる、まさにデザイン経営ですね。生産者と対等な関係を維持しより多くの利益を還元していくためにも、デカフェ市場の裾野拡大にチャレンジしてください。
岩井:今年10月に日本橋でオープンした「CHOOZE COFFEE」は、”カフェイン量をコントロールする”がコンセプトです。国内デカフェ市場はコーヒー市場全体の0.6%しかありませんが、仕事効率を上げたいビジネスパーソンや身体によいものを取り入れたい健康嗜好の人など潜在顧客層へ新たなコーヒースタイルを提案します。将来的には、「CHOOZE COFFEE」で社会の行動変容を起こしつつ、ストーリーライン式スペシャリティ・デカフェ豆の卸売(BtoB)で国内外での事業拡大を目指します。―「THE INDEPENDENTS」2022年12月号 P12より
※冊子掲載時点での情報です