アイキャッチ

「「地域に根ざした街の保健室として、 新しい価値を持つ薬局によるヘルスケアプラットフォームを目指します」」

公開

<話し手>
<代表取締役 服部 雄太 氏 略歴>
生年月日:N.A
出身高校:N.A
薬学部卒業後、アボットジャパン(株)、日本調剤㈱チェーンを経て、2016年3月にGOOD AID(株)を創業、代表取締役就任。2020年3月から、子会社であるセルフケア薬局(株)代表取締役も兼任。


【GOOD AID株式会社】
【設 立】2016年3月1日
【資本金】資本金 275,771,500円(4月28日時点)
【所在地】名古屋市中村区太閤一丁目20番10号4階
【事業内容】セルフケア薬局・調剤薬局・訪問看護の運営、EC事業
【事業所数】 保険調剤薬局 26、零売薬局 6、訪問看護 2
【主要子会社】セルフケア薬局株式会社
【従業員】182 名 (約 80 名. の薬剤師、約 30 名の看護師・リハビリ職在籍含む)

<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋氏(右)
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。

鮫島正洋の知財インタビュー

「地域に根ざした街の保健室として、
新しい価値を持つ薬局によるヘルスケアプラットフォームを目指します」


鮫島:保険や病院だけに頼らない医療の形を、薬局が地域と連携した「街の保健室」として世の中に提案・実現を目指されています。処方箋がなくても薬剤師のカウンセリングにて病院の薬を購入できる零売(れいばい)専門薬局を展開されています。

服部:セルフメディケーションができる零売専門の「セルフケア薬局®」を6店舗、処方せん受付に加え処方せんなしでも一部の病院のお薬が購入できる「おだいじに薬局®」は26店舗展開しています。本社は愛知県ですが、東京、神奈川、静岡、愛知、京都、大阪と事業拡大中です。今年で創業7年目となり、訪問看護、医薬品ECなども行っています。

鮫島:駅中や駅ビルに積極的に出店しています。LINEやオンラインビデオで事前問診し、通勤や買い物のついでに薬局に立ち寄るというスタイルで、お客が薬を手にするまでたいへんスピーディです。

服部:2021年2月にセルフケア薬局がJR西国分寺駅内にオープンし、JR東日本スタートアップと資本業務提携が実現しました。JR東日本に続いて、名古屋鉄道、近畿ベンチャーパートナーズと資本業務提携を結びました。鉄道会社は、デジタル対応を進めながらも、地域創生や顧客対面を重視するという姿勢をお持ちで、我々の目指すところと共通するところが多くあります。症状が把握できており、「早さX安さX気軽さ」を享受しながら、薬剤師によるカウンセリングで医療用医薬品を欲しいと考える20歳~50歳台の方々に多くご利用頂いています。湿布薬、軟膏、ビタミン剤、鼻炎薬、頭痛薬、ステロイドのぬり薬などをよくご購入いただいています。

鮫島:国が認めているにもかかわらず、零売という選択肢があることを知らない方も多そうです。

服部:病院で処方されている薬の内、約半分の7,300種類は、実は薬剤師による対面販売が認められていることはあまり知られていません。零売サービスの普及を目指し、消費者や取引先の安心・安全に資するため、法令等を遵守した零売事業に関する適正なガイドラインの整備や啓蒙活動を行うため、2020年3月に「一般社団法人日本零売薬局協会」を設立しました。「即治療」となる医療機関に比べ、薬剤師は不調者に対して零売を含む健康の選択肢を提案する「健康の水先案内人」を目指します。

鮫島:フランチャイズや異業種との提携は考えておられますか。

服部:差別化を図りたい地域の調剤薬局と連携し、零売上乗せの「コンバージョン支援型加盟店モデル」を展開していきます。集客サポートと零売システム利用を、零売事業の継続とガバナンスのカギに据え、全国の零売データ集約モデルを構築します。業務提携については、150-200社程度からお声がけをいただいている状況で、選択が必要ですし、タイミングをみようとしている状況です。

鮫島:零売から入ってきた顧客に対し、D2Cで漢方を販売していく計画を立てておられます。

服部:漢方本来の「薬」としての力を発揮しきれていないと、我々は漢方市場を見ています。歴史ある企業が漢方に携わっているものの、1回限りの診断で終わっています。早いうちから、その時の体調に合わせて柔軟に漢方を届けるビジネス「Le’ANZU(レアンズ)」を展開していきます。漢方専門薬剤師監修の本格診断で、個人に合わせた生薬配合の漢方をサブスクリプション形式でお使いいただくイメージです。

鮫島:日本はアメリカとは違い国民皆保険です。高齢化が進んでいることもあり、国民医療費は毎年膨らみ続けています。

服部:2020年度医療費は42.2兆円で今後も膨らむ一方、財務省発表の社会保障費圧縮は「診療報酬・薬価報酬改定」を中心に、令和2年度の削減幅が全体の0.37%にしか満たない状況です。フランスには皆保険制度はあるものの、医療費は症状が軽度なほど自己負担額が多くなるしくみをとりいれています。しかし、日本では自己負担3割という制度により軽微な症状でも病院を受診することが習慣づいてしまっていることが課題です。

鮫島:今後の抱負を教えてください。

服部:ヘルスケアに新たな基準を創り続け、世界をもっとwell-beingに変え、薬局のあり方を変え続けるヘルスケアプラットフォームになります。今後は医師不足の過疎地域も増え、プライマリケアのポジションで地域へお役立ちを目指します。上場を経験することで、零売薬局に対する社会的信頼を得たいと考えます。

鮫島:零売薬局を増やすというよりは、零売の先をどう作るかがこの事業のカギになりそうです。社会の持つイメージと、どう整合させていくかがポイントです。時代のパイオニアである貴社に今後期待しています。


対談後のコメント

鮫島:同社のビジネスの強みはすでに零売という制度が存在し、厚労省も医療費削減という文脈で制度活用を進めている点である。ユーザに訴求できる魅力的なビジネスモデルが提示できれば、かなりの勝機があるという印象を受けた。


服部:直近の課題は「零売」の認知度や信頼度の向上ではありますが、「零売」はあくまで手段であって、ゴールではありません。あらゆる健康課題を解決出来る「健康の水先案内人」として、弊社及び弊社の薬剤師、看護師、リハビリスタッフ等の人財が、社会に対して価値提供出来るよう、事業展開をして参ります。

(文責 大東理香)
―「THE INDEPENDENTS」2022年6月号 P14-15より

※冊子掲載時点での情報です