「食品ロス課題を抱えるブランド企業とエシカル消費者をスマートにつなぐ」
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【代表取締役 文 美月 氏 略歴】
生年月日:1970年9月9日
出身高校:奈良高校
同志社大学経済学部卒業後、日本生命入社。留学・結婚・出産を経て、2001年ヘアアクセサリー製造・卸・ネット通販のリトルムーンインターナショナル(株)を起業。2015年にビューティフルスマイルを設立し、2018年4月食品ロス削減事業「ロスゼロ®」を立ち上げ、本年10月に社名を(株)ロスゼロに変更。
【(株)ロスゼロ】
【設 立】 2015年1月15日(旧社名 株式会社ビューティフルスマイル)
【所在地】 大阪市西区北堀江1-1-21 四ツ橋センタービル9階
【資本金】 10,000千円
【事業内容】 食品ロス削減サービス「ロスゼロ」提供
【売上高】 N.A
【従業員】 7名(アルバイト含む)
<起業家インタビュー>
食品ロス課題を抱えるブランド企業とエシカル消費者をスマートにつなぐ
■未利用の原料や食品を消費者につなぐ、ECを中心としたフードシェアリングサービスを行っています
製造や流通段階で行き場を失った余剰・規格外食品を消費者に直接つなぐBtoC事業は、ギフト食品、高級菓子、食品などメーカーや商社から直接仕入れ激安販売はせず、各社のイメージ向上につながるブランディングに力を入れています。未利用の原材料を使ったオリジナルの「アップサイクル食品」を製造・販売するDtoC事業は、余剰となった製菓材料、ドライフルーツ、ナッツを使ったチョコレート「Re:You(りゆう)」を企画・製造・販売しています。
■食品ロス問題に意識の高い層から支持されています
ユーザー分析すると40代の女性の方々が比較的多くリピート率は77%になります。価格はBtoCで4,000~5,000円となっており、オトクに購入したいが激安価格を望む訳ではない社会的意識の高い購買層がユーザであると言えます。食品ロスに共感いただいた大手百貨店とのコラボレーションイベントも好調です。ある自治体ではふるさと納税品として当社商品をご活用いただいています。ある鉄道会社とは、サステナブル視点を取り入れた街づくりでご一緒しています。
■EC事業の成功から社会貢献活動に注力、そしてロスゼロ事業に転換した経緯を教えてください
就職、結婚、専業主婦を経て、 e-コマースという言葉もなかった時代に、楽天市場でアクセサリー販売をすることを思い立ち、2001年10月に「Littlemoon(リトルムーン)」を自宅で起業しました。創業当初は、商品を仕入れし、販売する形態でしたが、価格競争を避け、買いやすい値段かつ百貨店レベルの商品クオリティを目指して自社製造に乗り出し、2005年には中国に工場を作りDtoCに移行しました。この時期に楽天市場ショップオブザイヤーを3度受賞するなど、月商7,000万円、毎日の配送件数が1,000件を超え、顧客数も100万人程度に成長し、リピート率の上げ方、顧客管理などコンテンツマーケティングのノウハウを得ました。
しかし徐々にモノを売るばかりでなく、社会貢献、CSR活動に関心を持ち、日本全国から使わなくなったアクセサリーを回収し途上国に提供するという活動を始めました。2015年頃にはラオス、カンボジア、ベトナム、アフガニスタンなどに活動範囲も広がり、中でもカンボジア訪問は10回を超えました。
■途上国支援目的のクラウドファンディングで、規格外チョコレートのポテンシャルを確信
2018年2月にカンボジアの子どもに「トイレを作る」「文房具を贈る」というクラウドファンディングを企画しその返礼品を探していました。たまたまハイブランドのチョコレート製造会社の友人社長がおり、毎月数十キロの規格外チョコレートができ割引販売もできずに困っていることを知りました。そこで食品ロス削減と途上国(カンボジア)支援ができ更にブランドの価値を維持ができると規格外チョコレートの提供をいただける事になりました。この瞬間、同じような悩みを抱えている食品会社の経営者はたくさんいるに違いないと確信しました。ここがロスゼロの原点です。■サブスクモデル「ロスゼロ不定期便」は出足好調です
昨年の11月からスタートした「ロスゼロ不定期便」は不定期・不定量に発生する食品ロスの特性をポジティブに活かし、「わくわく福袋」として、2か月に1回、送料込み5,000円(税込)でお届けします。 食品ロスはその発生を正確に予測することが難しいため、基本的にサブスクモデルによる提供はハードルが高くなります。しかし開始3か月で利用者は1,600人を超え、食品ロス削減量は毎月3-4トンの積み増しとなりました。■最後に、今後の展望についてお聞かせください
「ロスゼロ不定期便」のユーザーを年内には5千人にすることが直近の目標です。これほど反響があったのは「ロスゼロ」というブランドに対する信頼だと受け止め、新規獲得だけでなく解約率も注視していきます。ユーザーの嗜好性を取得分析し個別最適な中身で構成する、組合せの妙で驚きを提供するなどのプランはあり、そのための顧客システムや物流体制が今後の鍵になります。また、中身が見えなくても安定した需要を確保できる「ロスゼロ不定期便」の強みを活かせば、安売りしてブランド毀損するくらいなら廃棄すると選択してきたメーカーとも共存が可能です。他にない食品ブランドが中身として届くことをユーザーも歓迎し、好循環が始まると期待しています。
ロスになる食品をお得に買うという価値観を否定はしません。しかし、我々の存在意義はそこにないと考えています。食品ロス問題の背景を発信し適正な価格で買ってくださるユーザーを集め増やしていくこと、メーカーにもその利益を還元しビジネスとして持続させていくこと。この、双方に1円でも高く、を実現できるかどうかが弊社事業の付加価値でありブランドです。「ロスゼロ」を長く愛されるブランドに育んでいくことで、食品ロス削減に貢献し続けていきます。
(2022.3.15 interviewed by 大東理香)
※「THE INDEPENDENTS」2022年4月号 - p4-5より