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【喜多 甚一 氏 略歴】
1966年8月石川県かほく市生まれ。石川県立津幡高等学校卒業後、20歳になる1986年に20歳で鶏肉の卸売配送業を創業。2012年に㈱ビーイングホールディングスに社名を変更。2020年12月には東証二部上場(9145)を果たす。趣味は釣り、読書(中国古典)。座右の銘は「知行合一(ちこうごういつ)」。

【(株)ビーイングホールディングス】


<特別講演>

2022年3月4日 スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2021
オープンピッチイベント


株式会社ビーイングホールディングス 喜多 甚一 氏


■軽トラック一台から全国に52か所の拠点をもつ総合物流輸送企業へ

 (株)ビーイングホールディングスは総合物流輸送企業12社で構成される全国ネットワークのサードパーティー・ロジスティクス企業で、混載物流業、物流センター業、情報システム業、車両整備業などを展開しています。
 生活物資に特化した物流事業を中核事業として、コンサルティングやセンター運営を行っています。また、自社開発の物流・オペレーション管理システム「Jobs(ジョブス)」の情報を顧客と共有し、構内配送業務の徹底した合理化・効率化を実現しています。このオペレーションを「運ばない物流®」「見える物流」と称し、「運ばない物流®」は2021年4月に商標登録されました。売上はグループ連結で200億29百万円(2021年12月期)、従業員数はグループ全体で約2800名です。東北から近畿まで物流拠点は52か所まで広がり、2020年12月には東証二部に上場しました。
 

■起業に大それた目標設定は必要ない

 能力・経験を活かしたい、ニーズを発見した、己の信念を貫きたい、他社から依頼された。創業動機を聞けば多くの方がいずれかを挙げますが、私の場合そうではありませんでした。とにかく一人で生きていけるようになりたいという経済的な自立がゴール設定としてあっただけです。ただ、これがあったおかげで、鶏肉の配送業という私にとって大きな転機に巡り合うことができました。崇高な動機は必要ありません。身近なゴール設定があるかないかで、目の前のビジネスチャンスを見つけ掴めるかどうかが決まると言っても過言ではありません。

■計画的偶発性を愛してチャンスを掴む

 ビジネスパーソンとして成功した人のターニングポイントの8割が、本人の予想しない偶然の出来事によるものだと言われています。キャリアを左右するのは予期せぬ出来事であるということ、そしてそれが起きるのを待つのではなく自ら掴み取る準備が必要であると私は捉えています。
 ギリシャ神話にも「前髪しかない神様カイロス」という話があります。チャンスが近づいてきたら、ためらうことなくパッとその前髪を掴まなければなりません。また、「運は後からやってくる」とは萩本欽一さんからいただいた言葉です。やりたくないことも進んで受け入れることで、大きなチャンスにつながります。誰もやらない、大手がやらない、やりたくない事業を突き詰めたことで当社もニッチ化に成功しました。やりたいことを計画通り遂行できる人はほとんどいません。予期せぬやりたくないことも好きになってあげて、たくさんこなしていく先にしか、成功の道はないと考えています。

■わかる できる やる

 人づくりは、わかるように教え、できるように育て、やる人間として立たせることだと考えていました。しかし、自分の経験を振り返ってみると、わかったから、できたから、この仕事をやり始めた訳ではありませんでした。まず「やる」ということ。やれば「わかる」ようになり、「できる」ようになっていきます。そしてできるようになると、やる気が芽生え、やり続けていくことができる。この順番が大切だと最近は考えています。経営者の中には「わかる人材がいない、できる人材がいない」と嘆く人もいますが、トップの仕事は「やる」と決めることです。そしてどうやってやるか考える、時には率先垂範してやってみせる。組織を巻き込んでこれを実践し、皆のやる気を生み出し続けることが、すなわち経営であると思います。
 ビーインググループの存在意義は「社会をつくる人間をつくる」すなわち「社会のお役に立てる人間づくりのために経営する」ことです。会社をつくることは、人間をつくること。人間をつくることは、社会をつくること。これから創業をされる方や既に経営される方にとって、少しでも参考になるものがあれば嬉しく思います。本日はありがとうございました。


※「THE INDEPENDENTS」2022年4月号 - P13-14より
※冊子掲載時点での情報です