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2016年10月に日本で初めて第一種少額電子募集取扱業者として登録、2017年5月に株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」を開始して以来、現在まで累計成約額76億円5524万円・累計成約件数235件(2022年2月14日時点)と圧倒的なシェアを誇る(株)FUNDINNO(旧社名:日本クラウドキャピタル)と(株)Kipsの共催セミナーレポートをお届けします。株式投資型クラウドファンディング活用に関する利点や課題等について、上場をサポートする立場である野村證券(株)長尾裕史氏、FUNDINNOを実際に活用された(株)トルビズオン増本社長にも登壇いただき、パネルディスカッションを行いました。

<パネラー>

株式会社FUNDINNO 代表取締役COO 大浦 学 氏

株式会社トルビズオン 代表取締役社長 増本 衛 氏

野村證券株式会社 法人開発部 次長兼上場サポート課長 長尾 裕史 氏

<モデレーター>

株式会社Kips 投資事業部 エグゼクティブマネージャー 岩佐 威秀 


①資本政策において株式投資型クラウドファンディングを如何に活用するか?

岩佐:まずは昨年10月にFUNDINNOを活用して60,030千円の資金調達を成功された増本社長より、その経緯についてご説明いただきたい。
増本:Kipsよりシード投資を受け、地方自治体や事業法人とPoCを進めたものの、シリーズA時期の事業計画があったものの、コロナ禍でCVCからの投資がストップした。重要な法改正前でもあったので(※注1)、事業を一歩でも前に進めたいという思いがあり、Kipsに相談を持ちかけ。FUNDINNOを勧められ6月には検討を開始した。途中自身がコロナに罹って一時中断になったものの、9月17日に投資家募集開始。132秒で目標募集額1503万円達成、24分で上限募集額6003万円達成。10月には無事着金した。

岩佐:FUNDINNOではどういった事業ステージや業種の企業が多いのか?
大浦:最も多いのはプレシリーズA段階の企業である。スタートアップ活動が科学され、PMF(プロダクトマーケットフィット)は達成されているか、ユニットエコノミクスは健全であるかなど、勝ち筋が見えているシリーズA以降の企業には多額のVC投資が集まっているが、そこに至るまでの仮説検証や実績づくりのための資金調達を求める企業も少なくない。このギャップに対する橋渡しとしてのファイナンスが得意。これを可能にしているのは、VCはじめプロ投資家のように経済合理性のみを追求せず、企業の成長を楽しみたいという共感も重視する投資家の存在である。30~40代を中心に90,000名を超える投資家登録があり、医師も多いためバイオやヘルスケア領域の案件も支持されている。

岩佐:野村証券がFUNDINNOと連携を強めた背景は。
長尾:2021年6月に資本業務提携を締結した目的は、未上場企業に対するサービスの拡充である。その時点では取引のボリュームが小さく十分な対応ができていなかった企業群に対し、FUNDINNOにつなぐことで事業成長をサポートできるようになった。

岩佐:同じ資金調達でも、VC出資より株式投資型クラウドファンディングが向いている企業はあるか。
大浦:2021年3月TOKYO PRO Marketに上場した琉球アスティーダスポーツクラブ(株)のような「ファン共創型」は株式投資型クラウドファンディングならではの事例である。また、安定成長型の企業や研究開発に長い時間を要する企業なども、VCファンドのような満期のない株式投資型クラウドファンディングなら支援できる。当社では、2021年10月に第一種金融商品取引業の登録を受け、12月より未上場株式のセカンダリーマーケットとして「FUNDINNOマーケット」を開始した。これにより多様なExitプランを提供することができるようになり、カーブアウト型の企業や社会貢献を重視しIPOもM&Aも目指さない企業にも門戸を広げることができると考えている。
増本:当社事業である「ソラシェア」を推進してくれる人材を「スカイディベロッパー」と定義し、これを習得するセミナー受講の優待制度を持ち分に応じて株主(新株予約権者)へ提供している。全体の1割程度の方が参画し非常に熱量の高いコミュイティになっており、大きな財産となった。IRを工夫することで、株式投資型クラウドファンディングの価値を何倍にも上げることが可能だ。

②株式投資型クラウドファンディングがその後のファイナンスやIPOに与える影響は?

岩佐:一部のVCは株式投資型クラウドファンディングに対してネガティブで、活用された企業への出資を敬遠する事例もある。
大浦:VC側の懸念は大きく2つあると認識している。1つは、株主間契約の問題。株主間契約(投資契約)の中で、ドラッグ・アロング・ライト(強制売却権)、みなし清算条項など株主の権利を確保した契約書の締結を希望される。そのためには通常既存株主から同意をもらう必要があり、株式型クラウドファンディングで多くの個人投資家が既にいる場合大変な手間や課題も生じる。そこで我々は「新株予約権」のしくみをつくり、関係者の懸念をクリアにした。 2つ目は反社チェックの問題だ。我々は3度チェックする社内体制をとっている。投資家登録の段階はもちろん、登録後にも毎月データベースが更新されるタイミングで継続的なチェックを行っている。利用登録者が9万人もいるが、定期的なチェックを欠かさない。我々と投資家間で、万一に備え、反社と判明した際は、発行者が指定する第三者に権利を売るという契約を事前に結んでいる。FUNDINNO活用前後でVCが出資している事例も蓄積されてきたので、丁寧な説明を続けていく。

岩佐:IPOできないという意見を耳にすることもある。証券会社としての見解は?
長尾:結論としてIPOできないという事はない。ただ、反社チェックを行う体制が整備されていると確認できることが必要。それは、FUNDINNOでそのような機能があるからという説明では不十分で、やはり発行体企業側にもそのような体制整備が求められる。

③視聴者との質疑応答

Q:1月29日に施行された法改正について解説してほしい
大浦:株式投資型クラウドファンディングによる資金調達額は、過去1年間において他の有価証券での調達額と通算して1億円未満でなければならなかったが、株式投資型クラウドファンディングのみで1億円未満であることと変更になった。これにより、VC等から1億円+株式投資型クラウドファンディング0.5億円など、資本政策の柔軟性が高まった。

Q:株式投資型クラウドファンディングには光の部分もあれば影の部分もあるが、日本で定着するか?
大浦:ベンチャー投資なので影の部分として倒産リスクは当然ある。海外では株式投資型クラウドファンディングを活用した企業の1割が倒産しているデータがあるが、例えば英国では4000億円の市場に成長もしている。リスクはゼロではないという正しい理解を普及することが肝要だ。当社としても、安全な会社ばかり審査を通すことは「挑戦する人に対し資金供給をする」という使命に反するので、リスクはあっても応援してもらえる企業の支援に取り組んでいく。

※注1 2022年に予定されている航空法の改正。有人地帯における補助者なし目視外飛行、いわゆるレベル4の解禁のこと。

※「THE INDEPENDENTS」2022年3月号 - P16-17より
※冊子掲載時点での情報です