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「豊富な最先端の3次元による設計実績と品質管理に強み 3Dデジタルコンストラクションのリーディングカンパニーを目指す」

公開

<話し手>
<代表取締役 安藤 浩二氏 略歴>
生年月日:1962年1月24日
出身高校:大分県立中津工業高校
1980年大手ゼネコンに入社し、設計・土木技術者として活動。国内外で土木構造設計の経験を積む。1990年に日本ベクトルエンジニアリング有限会社を設立。1996年株式会社ベクトル・ジャパンに組織名称を変更。2007年に中国現地法人(大連向量技術開発有限公司)を設立。

【株式会社ベクトル・ジャパン】
設立: 1990年2月 (日本ベクトルエンジニアリング有限会社。1996年10月に (株)ベクトル・ジャパンへと組織名を変更)
資本金:10,000千円
所在地:東京都中央区銀座8丁目12-8 PMO銀座八丁目7F
事業内容:建築構造設計、土木構造設計、構造解析、動的・静的非線形解析のコンサルティング
業績:429,830千円(2021年5月期)
社員数: 40名(他、大連事務所社員22名)

<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋氏(右)
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。

鮫島正洋の知財インタビュー

「豊富な最先端の3次元による設計実績と品質管理に強み
3Dデジタルコンストラクションのリーディングカンパニーを目指す


鮫島:貴社は、最先端技術を積極的に使い、建築構造設計や土木構造設計まで幅広い案件を受注されています。安藤さんは設計・土木技術者として大手ゼネコンで活躍された後、30年前に一人で起業されました。

安藤:現在社員は40名になり、オフィスビルやマンション、集合住宅など民間の建築構造設計から、上下水道施設、ダム、橋梁、道路など大規模建設の土木構造設計、耐震診断などを大手ゼネコンや設計事務所から年間500件受注しています。

鮫島:今、注目されているものはどういった技術ですか。

安藤:3次元モデル作成のビム(BIM; Building Information Modeling)です。コンピューター上に現実と同じ建物の立体モデル(BIMモデル)を再現しています。BIMモデルを使うメリットは,2次元の図面と比べ建物や構造物がよりイメージしやすくなる点です。また、BIMモデルはオブジェクトの集合体であるため、例えば建材パーツに幅・奥行・高さ、素材や組み立て工程も盛り込め、図面以外にも多くのデータを持つことができます。メーカー・品番・価格も入れられ資材管理や建設後のメンテナンスにも使えます。建築業界や国土交通省は、設計段階から運用、解体時までデータにより構造物管理する方向を推進しています。



鮫島:貴社ではいつ頃からBIMを研究されてこられたのですか。

安藤:2014年から米国Autodesk社の「Revit(レビット)」というソフトウェアを使用し当社独自のBIM活用方法を開発してきました。たとえ使うソフトウェアは同じであっても、どういう組みあわせでデータを使うのかによって、得られるアウトプットやメリットは変わってきます。当社も活用方法や得られるメリットを研究し、時間と労力をつぎ込み、社内に独自ノウハウを蓄えてきました。

鮫島:具体的に、貴社の実務のどのような部分が、他社に対して差別化できておられるのでしょうか

安藤:BIMソフトで鉄筋コンクリートの中に鉄筋を入れる設計をし、実行ボタンを押すと、次の鉄筋加工で必要なデータをQRコードで出力できるようになった例があります。このように汎用ソフトを使って当社が新たに開発した使い方は特許として認められるのでしょうか。

鮫島:ソフトウェアの利用規定を確認する必要がありますが、貴社独自の使い方により、他社と比べて差別化できているとポイントがあるとすれば、知的財産となる可能性はあります。貴社の設計や提案により、関係者の業務効率が著しく向上した、プロセスの自動化がされた、貴社と顧客とのコミュニケーションが円滑になった部分がもしあるならば、アイデアや発想自体がビジネスモデル特許の対象になりえる可能性があります。ただし、どこまで特許に含められるかは、同じようなアイデアをどれくらいの人が考えつくかによって変わってきます。


安藤:特許を申請し自社の知的財産を持つことまでは、考えが及んでいませんでした。当社は先端技術の使い方を研究することに時間を割き、新しい活用方法やメリットを見出したならば、それをいち早く顧客提案に取り入れ、お客様に喜んでもらうことで満足してきました。今日の対談でこの考え方が大きく変わりました。早速に特許出願を検討する社内体制をつくっていきます。

鮫島:注意点もあります。アイデアを誰かに話してしまうと、特許がとれなくなる可能性があります。NDAを結んだ関係者間では比較的大丈夫なケースが多いですが、すでに自社サイトに公表されている、学会や業界誌で発表してしまうと、特許は原則として取れません。ですから、今後はアイデアを閃かれ、活用の方向性が見えた段階ですぐに弁理士にご相談ください。

安藤:必ずそうしたいと思います。アイデアは複数あり、社内で再チェックをしてみます。

鮫島:この業界において貴社がなぜ特許を取るのか、ビジネス上の意義や目的もしっかり考える必要があります。特許を取りシステム化してパッケージとして売り出す、他社を市場に入れないようにするためなど、色々な特許戦略があります。

安藤:私は、良いアイデアが浮かぶと、業界人のみならず世の中の人に広く使ってほしい、現場の生産性が上がってほしいとつい考えてしまいます。

鮫島:社会的な意義も意識されながら、貴社は日々行動していらっしゃるのですね。似たような考え方の事例として、かつてIBM社は、環境系技術を持つ企業が参加した「持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)」と共同で、環境系の特許を多数出願した時期がありました。後に、WBCSD主導で「エコ・パテントコモンズ」というしくみがつくられ、地球環境および生態系を直接的にもしくは間接的に改善または保護する活動に対して特許の公開を促進した事例です(エコ・パテントコモンズの活動は2016年に終了)。むろん当時のIBMにもビジネス的な思惑があったと考えられますが、社会によりよい結果をもたらす部分もあったと考えます。

安藤:特許をそのような形で活かせるのですね。

鮫島:ある技術に対してもし特許がないと、それぞれ勝手なビジネス活動が出来てしまいます。反対に、もし貴社に特許がある場合は、特許を使いたい企業との間でビジネス交渉のチャンスは広がります。また、利用規約に「テロ目的や反社会的な行動には自社の特許を使わせない」「環境保全を後退させるような活動には使わせない」とでも表明されていれば、特許を取得する行為が社会や組織に対し一定の強制力や抑止力を発揮できます。

安藤:ビジネスの可能性を広げられる。さらに、めざすべき社会づくりに貢献できるということですね。本日の対談では特許の持つ可能性を知ることができました。特許戦略を早速社内で検討していきます。

対談後のコメント

鮫島:建築関係など、従前特許戦略とは関係がないと思われていた業界から特許戦略に参入する例が増えている。同社も同様の認識であったが、実際にヒアリングをしてみると「宝の山」であるような気もしている。この宝を知財権に変え、事業競争力に転換することが同社の今後にとって重要であることは論を待たない。


安藤:今後もBIMをはじめ、持続可能な社会へ貢献できる新規技術開発に精力的に取り組んでまいります。特許取得の際には是非お力添えいただけますと幸いです。貴重なお時間をありがとうございました。

(文責 大東理香)
―「THE INDEPENDENTS」2022年2月号 P8-9より

※冊子掲載時点での情報です