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「関西発のIPO輩出に向けて」

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2022年1月14日新春交流会(大阪)では、IPOを達成された伊藤氏、鈴木氏よりお話を伺いました。

伊藤 一彦 氏(BCC株式会社 代表取締役社長) 2002年前身となるIT営業アウトソーシング事業の営業創造(株)を設立し、代表取締役に就任。2012年スマイル・プラス(株)をグループに迎え、ヘルスケア分野に参入。2016年グループ全社を合併し、代表取締役社長に就任。2021年7月6日東京証券取引所マザーズ市場上場(7376)。


鈴木 規之 氏(株式会社アスタリスク 代表取締役)
大学院(修士)修了後、東レ(株)に入社。コンピュータシステム、営業、生産管理、販売システムの企画・実行をプロジェクトリーダーとして推進。2006年(株)アスタリスクを設立し、代表取締役に就任。モバイルによる業務改革「AsReader」事業を国内外で展開。2021年9月30日東京証券取引所マザーズ市場上場(6522)


<モデレータ>國本 行彦(株式会社Kips 代表取締役)


國本:IPOおめでとうございます。上場できたポイントを教えて下さい。

伊藤: 創業時から上場を目指していたので、最後まで諦めず行動し続けたことがポイントだと思います。リーマンショック時には債務超過に陥り、自分で株を買い戻さなくてはなりませんでした。当時VCの方が「買い戻せる額で結構です」と言って助けてくださいました。この苦しい時期に残ってくれた従業員と一緒に危機を乗り越えました。19年4か月かかって上場できました。
鈴木:債務超過の時、社員が「そろそろ弁護士に相談しましょう」と言ってきましたが、僕は「いや、まだやれることがある」といって諦めなかったです。創業当時はIPOまでは考えていませんでしたが、「人生をかけて仕事をするとは」「世界一の企業にするとは、どういうことをやるべきなのか」と社員と対話を続ける中で、やがてIPOがひとつの目標になりました。

國本:監査法人との契約はいつからされていますか。

伊藤:アドバイザリーとしての契約は2006年からです。早い時期から契約をしており、新規事業を始めるたび、会計処理について都度相談ができました。その結果、上場審査の際に会計面は論点にならなかったです。
鈴木:上場準備に入るまでに監査法人と信頼関係をしっかりつくれたことが良かったです。こういう会計を持ちたいと方針を出すと、法令を遵守しつつ監査法人が合わせてくれました。

國本:管理部門の方はどのように採用されたのでしょうか。

伊藤:前職で一緒に仕事をしていたのが常務の岡林です。当社の前にIT関連の企業で上場準備を一通り経験したのちに当社にジョインしてくれました。審査対応を一手に引き受けていました。
鈴木:証券会社の紹介で、大企業で取締役や監査役、IPOの経験のあった方に入ってもらいました。ただし当時は資金繰りに苦労していたので、銀行対応にも力を発揮いただきました。

國本:良い面、悪い面を含め上場して何が変わりましたか。

伊藤:採用の内定承諾率が上がり、上場後すぐの四半期で25名を採用しました。悪い面は思いつきませんが、Yahooファイナンスに書き込まれた当社のコメント欄を、厳しいお言葉も含め毎日見ています。
鈴木:業績が良い時は「ルーク(鈴木社長の愛称)カッコイイ」とか書かれ、業績が下がるとすぐに厳しいコメントが並びます。大きな変化はなく、取材が多少増えたくらいです。

國本:M&A、事業の進め方などIPO前後で変化はありますか。

伊藤:IPO前は「会社を売ってください」とM&Aを勧める連絡を多数いただいていましたが、上場後は「会社を買いませんか」と、トーク内容が一転しました。リーマンショック後は東京での資金調達に変わり、拠点を置きました。
鈴木:東京で実績を作って、関西にもってくるやり方の方が上手くいくことがわかってきました。

國本:関西からIPOを目指すということをどう考えますか。

伊藤:大阪本社でも大丈夫です。大阪産業局をはじめ、サポーターも大勢います。ですが東京との情報量の格差はあり、そこを自ら埋める行動が必要です。
鈴木:関西は企業社数が少なく、VCに投資をお願いしても決定機関が東京にあり、そこがネックになっています。そのことへの気付きから、東京でプレゼンをする戦略に変えました。東京の企業やVCはプレゼン後の反応も早く、「他社に先駆けて使います」と良い反応をもらえたことは事実です。まとめますが、本社がどこにあるかは重要ではなく、「世界をめざす」という姿勢が良いのではないでしょうか。どこに拠点を置いていても事業は成長させることができます。

國本:東京を含め、あらゆるリソースを上手く活用することが大事ということですね。本日はご登壇いただきありがとうございました。



※「THE INDEPENDENTS」2022年2月号 - P17より
※冊子掲載時点での情報です