「データサイエンス教育と教育DXで豊かな社会づくりに貢献する」
<話し手>
株式会社データミックス
代表取締役 堅田 洋資 氏
1982年生まれ。
桐光学園高等学校出身。
一橋大学商学部 統計学・データサイエンス専攻。サンフランシスコ大学データ分析学修士号。卒業後、外資系大手企業で経理とマーケティングに従事。その後、KPMG FAS、(株)を経て、WINフロンティア(株)の取締役就任。 有限責任監査法人トーマツ、白ヤギコーポレーションにてデータサイエンティストとして活動した後、2017年当社を設立、代表取締役に就任。
【株式会社データミックス概要】
設 立 :2017年2月1日
資本金 :9,360万円 (資本準備金を含む)
所在地 :東京都千代田区神田神保町2-44第2石坂ビル2階
事業内容:ビッグデータ、人工知能、機械学習をはじめとするデータサイエンスに関わる教育・研修事業、有料職業紹介、法人向け研修、コンサルティング等
従業員数:49名 (2021年8月1日現在)
<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋氏(右)
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。
鮫島正洋の知財インタビュー
データサイエンス教育と教育DXで豊かな社会づくりに貢献する
鮫島:御社が目指しているところを教えてください。
堅田:創業4年目の、データサイエンス教育と教育DXで新しい価値を提供しようとしている会社です。ビジネスにどうデータを活かしていったらよいかという点に力を注いでいます。当社は、「豊かな社会に繋がるオープンラボになる」というコンセプトを掲げています。これは、様々なビジネス領域の方と、データサイエンスという共通項で、新しい取り組みを考え、世の中に提案していこうとしています。鮫島:データサイエンス教育は、競合も増え、大手も参入してきています。御社の強みはどのようなところですか。
堅田:当社は、設立当初からスクール事業、研修事業など、教育に力を入れてきました。数学が苦手な、文系出身のビジネスパーソンが、たとえ初心者であっても、受講後は、データを使って、現場に何か意味付けや付加価値を与えられるように育成します。鮫島:受講生は具体的にはどういうことが学べますか。
堅田:BtoC対象のデータサイエンティスト育成コースは、7ヶ月のプログラムで、統計学、機械学習・AI、プログラミングを学んでいただきます。特に、弊社が大事にしているのは、課題発見・設定スキルです。あくまで統計学や機械学習・AIはツールであり、いかに自分の業務の中でデータを使って課題発見、解決できるかを考えることに重点を置いています。卒業前には、受講生自ら課題を考えて、データ分析プロジェクトを企画し、実際に1ヶ月かけて分析、最後に発表をしていただきます。卒業生の中には、企画のアウトプットや取り組んだ実績を、転職の際にアピール材料とされる方もいらっしゃいます。所属する企業で上司にAIやDX推進のアイディアとして提案する受講生も数多くいます。受講生は20代、30代の社会人の方がボリュームゾーンです。受講料は、742,500円(税込)です。弊社のプログラムは経済産業省のReスキル講座に認定されています。一定の条件を満たす方は最大70%の助成が受けることができ、多くの受講生がこの制度を利用しています。
鮫島:今後は法人向け(B2B)にも注力していかれますね。
堅田:以前なら、企業のデジタル推進室やワーキンググループなどの方々が参加されるBtoBパッケージプログラムであったのが、最近は研修の一環として千人単位のオーダーが増えています。大手証券会社、大手通信会社から商社、製造業、監査法人、新聞社など幅広い業界から研修注文をいただいています。鮫島:「Excert(エクサート)」と「データ分析実務スキル検定(CBAS)」をリリースされました。
堅田:「Excert」は、試験監督機能付きのオンライン試験システムです。商工会議所や各種団体が行っている資格認定試験などにご利用いただいています。もともと、コロナ禍で物理的に人が集まって試験を実施しにくくなり、リモートでの試験監督付きで在宅試験できたら良いなと思って作り始めました。ただ、リモート監督機能にスポットライトが当たりやすいですが、本システムのもう一つの強みは、多肢選択だけでなく自由記述やプログラミングテスト等の様々な出題形式にも対応できることです。そして、2020年7月からExcertを使った、「データ分析実務スキル検定(CBAS)」を開始しました。当社が開発したCBASは、データ分析プロジェクトを立ち上げる流れに沿って出題していますので、統計学、AI・機械学習といった知識だけでなくプログラミング、データ利用に関する規約など、ビジネスシーンでデータを活用する際に知っておくべき基本的なことを押さえているかを測り、証明します。
鮫島:「Excert」は、試験監督機能への活用だけでなく、教育DXにも利用していけそうです。
堅田:教育現場では、複数生徒の学ぶ様子をリアルタイムで、一括把握したいというニーズが確実にあります。例えばCADの授業や、パソコンを使った授業など、カメラ映像と音声だけの一般的なオンライン会議システムの利用では、生徒の手元が見えないなどの課題があります。一方、Excertは、生徒の顔と手元がスクリーン上に同時に映せる特徴があります。そこで、今後、専門学校、中学・高校・大学の教育現場で講師の課題、生徒の課題を手触り感を持って調べていくことを考えています。鮫島:人の目だけで試験監督を監視するシステムの作りこみ方では、特許法が対象とする「発明」とはならないことに注意が必要です。一方で、そのような人為的な処理を経ることなくAIを使っているなどの処理とすれば、特許法が対象とする「発明」になってくると思われます。
顧客のご要望に基づいて機能追加に関する企画会議をすると、色々なアイデアが出てくると思いますが、その時点で発明が生まれています。多くの企業で見過ごしがちなのが、サービスをリリースしてしまったら、特許が出しにくくなることへの理解不足です。つまり、企画会議からリリースまでの数か月間に、特許出願を行う必要があるのです。なお、特許出願時点でコーディングが終了していることは不要です。
堅田:確かに、機能追加する際に、社内でアイディアを出す企画会議は行われるのですが、その会議はもちろんリリース直前まで、特許申請にまで頭が回っていないことがあると思います。今日のお話を伺うことをきっかけとして、当社も企画会議をする際、特許申請の視点を持ち、議論の内容をチェックする担当者を置こうと強く思いました。鮫島:20年前ならば、データサイエンスは、ある意味特殊な領域でしたが、今や、社会的にも基礎講座の位置づけにかわりました。市場が拡大するとしたら、後発企業が、ビジネスを真似てくる可能性も考えられます。後発企業の動きを予測し、2-3件、先に特許を申請しておく「防衛的なアクション」も有効です。また、良い教育コンテンツを作れば作るほど、模倣する人が出てくるので、「これは自社の教材である」ということを示す著作権表示をしておくことが、後々とても大事になってきます。
*対談後のコメント
鮫島:特許化のポイントには二つの方向性がある。一つはデータサイエンス教育のシステムに関する機能やそれを支えるユーザインターフェース。他社とは異なり、同社の場合、より一般的な教養としてデータサイエンス教育を普及する戦略を採っているため、他社にない機能が必要となる。もう一つは試験監督機能「Excert」の他用途展開の際に必要となる機能。いずれも、数点の特許を出願しておくことによって、投資家に対して高い訴求力を与えうる。
堅田: データサイエンスは、自分で生み出した「問い」をデータと統計学・AIを使って検証したり、発見したりする営みで、そのアウトプットは新しい知見・発見であり、見方を変えれば、知財だと改めて認識しました。データミックスのビジョンである「オープンラボ」を創るには、データサイエンスに取り組む全ての人が知財を生み出しているという認識を持ち、データミックスが知財に関しても模範を示していく必要があると改めて思いました。
(文責 大東理香)
―「THE INDEPENDENTS」2021年10月号 P16-17より
※冊子掲載時点での情報です