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「リアルタイム津波浸水被害予測システム」

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【越村 俊一氏 略歴】
生年月日:1972年2月18日
出身高校:滝川高等学校
(兵庫県神戸市)
東北大学大学院工学研究科博士課程後期修了博士(工学)。日本学術振興会特別研究員、人と防災未来センター研究員、東北大学大学院工学研究科助教授を経て、東北大学災害科学国際研究所教授。(株)RTi-cast設立代表発起人。2018年3月同社を設立し、CTOに就任。



【(株)RTi-cast】
【設 立】2018年3月1日 
【所在地】
宮城県仙台市若林区新寺1-3-45
【資本金】48,000千円
【株 主】国際航業、東北大学ベンチャーパートナーズ、エイツー、日本電気ほか)
【役 員】
(代)村嶋陽一、越村俊一、撫佐昭裕、加地正明、鈴木孝之、(社外取)長濵勉 (監)並木信二
【事業内容】津波浸水・被害の予測と情報配信のサービス
【従業員】15名

<起業家インタビュー>

リアルタイム津波浸水被害予測システム


■産官学連携で高度な予測が可能に

(株)RTi-cast(アール ティ アイ キャスト) は、2018年3月に東北大学発のベンチャーとして設立され、世界初の民間事業者による、リアルタイム津波浸水被害予測サービスを行っています。2011年3月に発生した東日本大震災をきっかけに、国際航業(株)、(株)エイツー、日本電気(株)の研究者や技術者が結集し、産学連携研究によりリアルタイム津波浸水被害予測システムを開発しました。従来の、多くの計算とコストを要するデータベース型に対して、本システムは、スーパーコンピュータを用いて、津波発生時に即時に浸水予測、被害推計までを行う世界初のフォワード型予測を行うところが特徴です。

震災当時、津波警報が発令されたものの、どこに、どれくらいの津波が内陸に浸水したかが分からず、被害の全貌を把握するすべはありませんでした。被害の全貌がわからない中、あらゆる場所で、津波災害への対応が迫られていました。この問題意識がきっかけとなり、地球物理学、津波工学、計算機工学の専門家が結集し、システムが開発されました。今後はシステムに新技術やAIの搭載を図りながら、サービス向上に努めています。


■被害を最小化する情報発信・共有

この10年で研究が進み、スパコンの処理スピードも格段に上がりました。これまで「6時間先までの浸水予測」に18分かかっていたものが、今では2~3分でできるようになりました。関連特許を既に3件取得済みです。

当社のシステムは、内閣府総合防災情報システムにも採用されています。巨大地震が発生した場合、30分以内にレポートを配信することが契約事項に入っています。システムでは、対象地域の浸水深の予測情報や建物被害分布の情報が確認できます。自治体ごとに被害推計結果を集計してまとめることで、津波災害発生時の被災地救援活動を支援します。現在は太平洋沿岸が予測対象領域となっており、来年は日本海側まで広げます。

■実証実験を展開し、パートナーを増やす

南海トラフ地震被害が予想される高知県など地方自治体に加え、損害保険業界向けにもシステムが運用されています。このシステムの構築・運用費用やサービス費用をいただきながら、収益を確保していきます。海外では、リスク評価を行っているアメリカの企業と連携しつつ、再保険も含め、事業拡大を目指します。人的被害をゼロに近づけられるような、Society5.0社会の実現に貢献します。


※2021年10月号掲載時点での情報です