「東京プロ市場の意義」
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インデペンデンツクラブ代表理事
秦 信行 氏
早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)。野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。1994年國學院大学に移り、現在同大学名誉教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。2019年7月よりインデペンデンツクラブ代表理事に就任。
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最近東京証券取引所の東京プロ市場(TPM)に上場する会社が増えている。東証のデータで東京プロ市場への上場会社数を見ると、2016年が16社、2017年22社、2018年29社、2019年33社、現状36社と着実に増えている。 東京プロ市場は、1995年にロンドン取引所に生まれた新興株式市場であるロンドンAIM市場に倣って、ロンドン取引所と東証との合弁で2009年に作られた東京AIM市場が母体、その後2012年に両者の合弁が解消しAIMに代わって新たに誕生した市場なのだ。
市場としての特色は幾つかあるが、まずこの市場で株式を売買できる投資家は一般投資家ではなく、プロ投資家等に限定されている。プロ投資家とは金融商品取引法で規定されている適格機関投資家を中心とした投資家のことで、法人が大半を占め個人は少ない。個人については保有金融資産が3億円以上で投資経験が1年以上、且つ証券会社にプロ投資家として認定される必要がある。現状の投資家数は100程度であるようだ。
2つ目の大きな特色は、この市場への上場に際しては、一般市場のように取引所が基準を設けて証券会社と共に上場審査するのではなく、J-Adviserと呼ばれる専門業者が上場を指導する形を取る。J-Adviserは取引所が審査をして認定する。審査にあたっては財務内容や業務遂行能力など見る。J-Adviserはプロ市場に上場後の会社のタイムリーディスクロージャ―の指導なども行うため、取引所による定期的なモニタリングも行われる。現在J-Adviserの数は10社程度になっている。
3つ目の特色は、プロ投資家の市場であるため上場の要件が一般市場に比べて緩い点である。一般市場のように上場のための形式基準は設けられていない。極端に言えば株主が1人でも上場できなくはない。四半期決算の義務化なども求められていない。但し、1年間の法定監査は必要で、J-Adviserの指導の下に上場後は適時開示を行わなければならない。
最近東京プロ市場への上場会社数が増えているのは、上場することで会社に対する信頼度や透明感に対する周りの評価が高まることで他社との提携などがやり易くなることや、財務状況が開示されることで銀行との関係が良好に働くことなどが挙げられるように思う。加えて、プロ市場から一般市場、マザーズやジャスダックといった市場にステップアップする会社も出て来ており、それも追い風になっているようだ。確かに、プロ市場という規制の緩い市場で適時開示の経験を積んでから一般市場に進むことの意味はありそうではある。
ただ、問題はプロ市場に上場しても資金調達が現状難しい点だ。勿論、制度的に出来ないわけではなく、最近では資金調達に成功した会社も出て来てはいるが、投資家層が依然薄く資金調達が難しい。加えて、証券会社の関心も現状低いようで、その点も気になる。
今後、東証は証券会社との連携を一層深め、協力して投資家層の拡大、中でも個人の富裕層投資家の拡大を図っていくことが求められる。それによってプロ市場の上場会社の資金調達が容易になれば市場の魅力は更に高まると思われる。
※「THE INDEPENDENTS」2020年11月号 掲載
※冊子掲載時点での情報です