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「国内だけでなく海外の出資者にも評価されるVC」

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アント・キャピタル・パートナーズ株式会社
代表取締役会長兼社長 尾崎 一法さん

昭和24年長崎県に生まれる。昭和43年埼玉県立浦和高等学校 卒業。昭和47年上智大学経済学部 卒業。昭和47年石川島播磨重工業㈱ 入社。昭和59年日本合同ファイナンス㈱(現・㈱ジャフコ) 入社。平成11年ゼネラル・エレクトリック・インターナショナル・インク 入社。GEキャピタル 上級副社長。平成13年アントファクトリージャパン㈱(現・アント・キャピタル・パートナーズ㈱)入社 代表取締役社長。平成19年同社 代表取締役会長兼社長 就任。

住所:東京都千代田区丸の内1-2-1 東京海上日動ビルディング新館5F
TEL:03-3284-1711 設立:2000年10月23日 資本金:3,086,945,965円
http://www.antcapital.jp/

―ファンド総額1300億円
尾崎:ファンドコミットメント額で一番大きいのはPE部門(プライベート・エクイティ、中堅企業へのバイアウト投資)で確実に2倍から3倍とコンスタントに実績が出ています。VC部門は、日興キャピタル時代のアセット引継ぎ部分を含め、ファンド総額は業界大手のひとつです。VC部門は昨年今年とIPO環境悪化の影響で厳しいのですが、じっくりと構えています。セカンダリー部門は既存ファンドの満期前出資分を売却希望する出資者から直接買います。国内セカンダリー業者としての実績や知名度も高く、安定した配当収入が期待できます。現在ファンド募集中のセカンダリー部門、来年にかけて募集計画するPE部門を合わせて400から500億円の募集を見込んでいます。

―戦略的な株主構成
尾崎:昨年日興シティに代わり農林中金、三菱商事と我々役職員が当社の大株主になりました。投資会社にもある程度のスケールモデルが必要で、我々にとって一番好ましい株主はどこか、慎重に選んだ結果でした。両社とも非常に懐の深い株主で、短期的結果より中長期的成果を求めています。2社とアント・キャピタル役職員が力を合わせ、PE業界でのアント・キャピタルの卓越したポジショニングを確固たるものにしていこうと考えています。ただコンプライアンスは非常に厳しく求められております。我々はスピード感を失わないこと・自由闊達さを失わないことを大原則に真面目に取り組んでいます。

―ファンド募集体制を強化
尾崎:今後は株主からもファンドにコアマネーを出資していただくことになるでしょうが、大半は外部からの出資者から募集します。出資者は金融法人、事業会社が中心です。各投資グループが原則ファンド募集をしますが、出資者全部に説明に出向いていると投資ができなくなります。そこで募集をサポートする部隊を作りました。法人営業(RM)や海外募集のプレースメントエージェント対応を担当します。海外の年金には5年前からアプローチしています。ハードルは高いのですが、海外の一流機関投資家から出資されるファンドにしたいと思います。

―部門間シナジー効果と責任分担体制
尾崎:VC部門は、年間500社くらい案件開発をしながらあらゆる経営者や最先端トレンドを見て投資五感を鍛える修行の場です。一方PE部門にはストラクチャリングやエグジットの発想力が求められます。セカンダリー部門にはポートフォリオ全体を見る眼が要求されます。3つの部門でそれぞれ凌ぎを削って専門性の中で養われた知見が相互に影響し合っています。VC部門とファンド管理部門は分社化して管理会計上の責任分担を明確にしています。ファンド管理部門は他社ファンドからも管理を受託する収益部門です。

―パートナーによる投資体制
尾崎:投資体制はパートナーを中心に案件ベースでチームを組成しています。個人インセンティブはチームでの貢献度によって決まります。パートナーは現在22名で、投資決定に投票権を持ちファンドの運営に深くコミットしています。特に海外の出資者は、ファンドの主体となるパートナーに対して成果報酬やキーマン条項など、結果と責任を強く求めています。

―転職2回以上が採用条件
尾崎:当社メンバーは中途採用が基本です。様々なキャリアを持っている人のほうがファンド募集の面でもアピールになります。新卒は採用していません。20代後半もいますが2社経験して当社が3社目という人たちが多くいます。コンサルティングファーム、投資銀行、商社、事業会社、国家公務員などの出身者や公認会計士、USCPA、弁護士もいます。

―右肩上がり前提の投資はできない
尾崎:これからは成長モデル型の投資がとても難しい時代です。日本の人口ですが、今後5年で150~200万人位減ると予想されていて、これは150万人の都市がひとつなくなるのと同じインパクトです。全部右肩上がり時代、すぐ売上が伸びて、増収増益で・・・日本においては30年間に渡って成長し続けるような、例えばキヤノンやソニー、京セラのような成長モデルの時代は二度と来ないと思います。アジア、中国などと違い、日本はエコノミクス全体の底上げの中での時流にのる投資はできません。誰でも儲けられる時代は終わりました。

―変化する価値観についていけるか
尾崎:時代のテクノロジーに対するイノベーションは昔なら10~20年にひとつだったのが、今はもう3~5年に1つから2つ起き、テクノロジーの重みが変わってきます。スピードが出る車に乗りたい、大きな家に住みたい・・・こういう高度成長モデルは終わりを告げ、世の中の社会現象をニーズとして捉えたビジネスモデルというのが主流になるでしょう。経営者像もだいぶ変わってきています。一見完成された経営者タイプではなくて、現場主任のような方が経営者であったりします。戦略なきガンバリ型経営手法だけでは事業環境の変化に対応できません。

―案件そのものよりも担当者を見る
尾崎:若い人は、皮膚感覚でこれはいけますよと言ってきます。SNSに一度もアクセスしたことのない人に、これはすごいと言っても理解できません。時代が要求するサービスや技術の方向性が見えてきたらそのトレンドを捕まえる投資をしたいと考えています。

―フォーカスして支えきるVC投資
尾崎:今年の投資金額は40億円が目標で、現在半分くらいの進捗です。一件当たり投資金額は2億、大きいもので4~5億です。今は小粒の案件は様子見です。ただ前向きなステップとしてダウンラウンド投資を行い、良いと思う会社は徹底的にサバイバルさせてしまうのも戦略です。残った方が勝ちです。どれを支えるか、プロの判断力が問われます。VC専業者としては良い時代、鍛えられる時期です。厳しい局面ですがすごく面白い、差別化の時期であり、3年後の順位ががらりと変わる時代だと思います。

※全文は「THE INDEPENDENTS」2009年8月号 - p15-16にてご覧いただけます