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「シェアリングプラットフォーム企業の提携戦略と組織づくり」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(右)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
株式会社ピーステックラボ
代表取締役 村本 理恵子 氏
東京大学文学部社会学科卒業後、時事通信社にて世論調査分析に携わる。専修大学にて経営学部教授としてマーケティング戦略を研究。2000年(株)ガーラ代表取締役会長に就任し、ネットコミュニティビジネスの立ち上げを行い、2001年ナスダックジャパン(現・JASDAQ)上場。その後、エイベックス・デジタル(株)にて「BeeTV」立ち上げと、立ち上げ後の事業戦略、マーケティング戦略、編成戦略策定に携わる。2016年当社設立、代表取締役就任。

【株式会社ピーステックラボ】
設 立 :2016年6月23日
所在地 :東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ8F MOV内
資本金 :445,500千円(株主:経営陣、事業会社、VCほか)
事業内容:モノの貸し借りプラットフォームの開発運営

<特別対談>これからのIPOスタイル

シェアリングプラットフォーム企業の提携戦略と組織づくり


小原:幾度も事業を立ち上げてきた村本社長の新たなチャレンジがモノのシェアリングプラットフォームです。まずは事業内容をお聞かせ下さい。


村本:モノの貸し借りプラットフォーム「Alice.style(アリススタイル)」を2018年10月にローンチし、現在登録ユーザー数は約30万名、月間流通総額は今年3月に1億円を超えました。個人および法人から出品されたモノを貸し借りするレンタルモデルに加え、旅行代理店等と連携し旅先で必要なモノを手配するトラベルモデル、不動産企業と連携しお住まいの家電等を月額で提供する住宅モデルの3つのスキームで現在展開しています。

小原:創業時よりシェアリングモデルのあるべき姿を明確に定義し、それを緻密に実現してきたことに感銘を受けました。後から考えると正解だと言えても、最初から見えている人はそういません。


村本:20世紀型の消費社会は必ず終わりが来る、その転換点で新たなビジネスを手掛けたいと考えたのが起業のきっかけです。社会学専攻だったので、世の中の大きな流れをビジネスに落とし込んで考える癖があり、社会が人の行動を規定することへの関心は常にあります。

小原:数々の大手企業との提携は他のベンチャーにとってお手本になります。


村本:最初からプラットフォーム事業に必要なピースとなる企業を定め、どうアプローチするかまで含めて粒度を細かく戦略を立てました。前提としてベンチャーはできることが限られています。不得意なこと、経験がないことまで自分達で完結するのではなく、得意なことにエッジを効かせながら組んでくれる相手企業のメリットを具体的に提示することが大事です。初期に資本提携いただいたアスクルのケースでは、BtoC面での協業を持ちかけました。女性から支持されるサービスとして開始したのも、それが提携候補先から魅力に思ってもらえると考えたからです。

小原:村本社長はじめ、事業立ち上げの成功体験を持つメンバーが揃っていたことも大きいですね。事業経験がなければ、何ができて何ができない、つまり時間のかけ方に大きな差がついてしまいます。


村本:実行面でできない理由を見つけてしまう人はもったいないですね。私どもは事業経験が豊富なメンバーで構成された点も強みですが、未知の状況でも”気持ち悪がらず”に前へ進める対応力が圧倒的だと自負しています。実は私から声をかけたのは一人だけで、他はみな新しいことをやってワクワクしたいと集まってくれた自慢の仲間です。

小原:(株)ガーラ(JQS:4777)代表取締役会長としてIPOも経験されていますが、時代と共に求められる組織のあり方も変化してきています。ピーステックラボとしてIPOを目指すにあたり、組織づくりはどのように進めていきますか。


村本:現在従業員は7名ですが、段階的に組織の壁があることは経験値として理解しているつもりです。目標を明確に設定してわかりやすくすることと評価制度をセットにしたいと思います。また、創業者は人数が増えても想いが行き渡っていると考えがちですが、幻想だと割り切ることも大事です。(株)ガーラ時代、一緒に頑張ってきた仲間が辞めることがショックでした。よくよく考えると、自分だって組織を離れた経験がある。人にはそれぞれライフステージがあるので、一緒に働いてくれる内は最大限のパフォーマンスで活躍してもらえる仕組みが大事なのだと今は思っています。

小原:そういった村本社長の考えが、早い段階から会社の文化として定着できたら強いですね。これからのIPOストーリーをどう表現するか、事業戦略と合わせてお聞かせください。


村本:IPO後も成長し続けられる事業基盤やボリュームにまで未上場時に育てていきます。そのためにも、ここからの資金調達が大きなポイントです。今後、追随する企業が出てくる事もあり得ますが、絶えず進化させ新たな施策を打ち続け、ブルーオーシャンを自ら開拓していきます。一つの事に集中せよと指摘されることもありますがポートフォリオで考える事が重要。コロナによる巣篭もり消費でレンタルモデルは伸びましたが、これが明ければトラベルモデルの成長が期待できます。事業や領域を複数持っておくことで環境変化への対応が可能になり、それこそが強い会社であると考えています。これを投資家にどうご理解いただくか、ここからが勝負です。

小原:プラットフォーム事業はそもそも広がりのあるものです。貴社はモノを調達できる仕組みは確立されており、その出口として様々なビジネスを手掛けていける可能性を持っています。時価総額数千億円でのIPOも全く夢ではないと思いますので、頑張ってほしいと思います。本日はありがとうございました。


■対談を終えて


小原:起業から計画的・戦略的にビジネス(モデル)を構築できた貴社に期待するのは小さくまとまったIPOではなく、世界に互してゆけるプラットフォーマーにまで成長することです。それには大きな資金調達と多少の時間を要すると思われますが、村本社長の『経験知』とメンバーの協力があれば可能でしょう。今後が非常に楽しみです。


村本:小原さんの鋭いご質問に回答することが、自らのビジネスの強みと未来への戦略を考える良い機会をいただけたと思います。また、ご経験豊富な小原さんに認めていただきとても光栄です。弊社はベンチャーの死の谷を脱し、やっと成長軌道に乗ることができました。時価総額数千億円でのIPO、口で言うのはたやすいですが、その道のりは大変厳しいものだと認識しています。一方、小さくまとまることは容易ですが、常に高い頂上を目指すという意志を持つことの大切さを改めて強く感じた対談でした。

■株式会社AGSコンサルティング 会社概要

代表者  :代表取締役会長 虷澤 力/代表取締役社長 廣渡 嘉秀
スタッフ :400名(公認会計士61名・税理士76名)2019年10月現在
東京本社 :東京都千代田区大手町1-9-5 大手町フィナンシャルシティノースタワー24F
      TEL 03-6803-6710 FAX 03-3510-2800
大阪支社 :大阪府大阪市中央区今橋3-3-13 ニッセイ淀屋橋イースト 5F
      TEL 06-6232-0600 FAX 06-6232-0616
名古屋支社:愛知県名古屋市中村区名駅 4-2-28 名古屋第二埼玉ビル 9F
      TEL 052-533-6695 FAX:052-533-6698
福岡支社 :福岡県福岡市中央区天神1-9-17 福岡天神フコク生命ビル 14F
      TEL 092-737-8211 FAX 092-724-0320
海外拠点 :シンガポール、香港、マレーシア
事業内容 :マネジメントサービス、事業承継支援、企業再生支援
      IPO支援、M&A支援、国際業務支援
URL  :http://www.agsc.co.jp/

※「THE INDEPENDENTS」2020年8月号 - p12-13より
※掲載時点での情報です