「日本版SBIR制度見直しへの期待」
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インデペンデンツクラブ代表理事
秦 信行 氏
早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)。野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。1994年國學院大学に移り、現在同大学名誉教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。2019年7月よりインデペンデンツクラブ代表理事に就任。
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SBIR(Small Business Innovation Research)は1982年に米国で出来た制度である。この制度に詳しい京都大学の山口栄一氏に言わせると、この制度は米国政府が設けた科学者が起業家に転ずるための「スター誕生」システムだという。
制度の概要は、米国の各省庁(現状は11省庁)の研究開発予算の一定割合、現在は3%強を毎年中小ベンチャーに振り向けることを義務付ける制度で、その背景には、当時米国大企業の中央研究所が次々に閉鎖されるなかで、これからのイノベーションのエンジンは大企業ではなく中小ベンチャーだという認識があったと思われる。
支援は3段階の選抜方式で行われる。まず各省庁で開発目標を明確かつ具体的に公示して応募者を募る、その中からフェーズ1に進む企業を選抜し、彼らに1000万円程度の資金を提供して約1年で所謂POC(Proof of Concept)、つまり実現可能性を調査してもらう、同時に起業家教育も受けてもらう、そしてPOCの結果を見て企業を絞り込みフェーズ2に進んでもらう。フェーズ2は商業化の段階で、1億円弱を提供し、2年をかけて行われる。そこが上手く行くと最終段階のフェーズ3に進む。フェーズ3は最終段階で、資金提供はされないが、有力VCを紹介され資金調達の機会を与えられると同時に、課題を提供してくれた省庁が商業化出来た製品の「ファーストカスタマー」になって購入してくれる仕組みになっている。
米国のSBIRを参考に同様の制度が日本でも日本版SBIR制度=中小企業技術革新制度として1999年に設けられた。日本版SBIR制度創設にあたっては、経済産業省で研究会も開かれ米国のSBIRをかなり研究したのだが、残念ながらその内容はかなり違ったものになってしまった。内容が相違してしまったそもそもの原因は各省間の政治的な問題だとも聞いているが、それはともかく、最近ようやくその見直しが図られようとしている。
その見直しの概要については、中小企業庁に代わって新たにこの制度の司令塔としての役割を担うことになった内閣府でご担当の田邊彩乃氏に、インデペンデンツクラブ月例会でのパネルディスカッションでお話頂いた。フリーペーパー「THE INDEPENDENTS」8月号にその要約を掲載したので参考にして頂きたい。
見直しの要点は、実効性向上のために内閣府を司令塔にすること、各省連携強化のために根拠法を「中小企業等経営強化法」から「科学技術・イノベーション創出の活性化法」に移管すること、新たに各省で統一的な運用を目指す「指定補助金等」が加えられること、その「指定補助金等」の運用にあたっては明確で具体的な課題が与えられた上で段階的選抜による連続的な支援を行うこと、開発成果の政府調達を促進すること、などである。
日本版SBIR制度の見直しが実行に移されることによって、現在米国通信・半導体大手のQualcommや創薬大手のGileadのようなハイテクベンチャーのスター企業が数多く日本でも生まれることを期待したい。
※「THE INDEPENDENTS」2020年9月号 掲載
※冊子掲載時点での情報です