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「木谷高明の起業ロード」

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<木谷 高明 氏 プロフィール>
1960年石川県生まれ。武蔵大学経済学部を卒業後、山一證券株式会社を経て、1994年に株式会社ブロッコリーを設立。2001年にJASDAQ上場を果たす。2007年株式会社ブシロードを設立。2012年には新日本プロレスリング株式会社を子会社化。2014年8月からはBushiroad South East Asia Pte. Ltd.(現 Bushiroad International Pte. Ltd.)のCEOを兼任し、シンガポールに駐在する。2017年10月に株式会社ブシロードの代表取締役社長の地位を辞して、当社デジタルコンテンツ事業及び広報宣伝を管掌する取締役、株式会社ブシロードミュージックの代表取締役社長を兼任し、コンテンツ開発の最前線に立つ(現任)。

<講演レポート>

木谷 高明 氏(株式会社ブシロード 取締役)


■起業ロード~木谷高明のこれまで

ブシロードは2019年7月29日に東京証券取引所マザーズに上場しました。私自身は、起業1社目のブロッコリーに続いて2度目の上場で、周囲から称賛いただきましたが、大したことはありません。1度目がうまくいかなかったから2度目がある、そんな風に考えています。1社目の代表を退任することになった時、二つの思いがありました。一つは創った会社を辞めなければならなかったこと。もう一つは、またゼロからチャレンジできるということ。1社目のような小売業は4勝1敗でも赤字になることがあります。しかし、IPメーカーであれば1勝4敗でも大きな黒字を出せる可能性がある。後者の方が、私の性に合っていると思っていたからです。もう1回勝負するしかないと思いました(笑)

■経営者は現場感とスピード感が重要

上場準備の過程で、代表取締役は直接部署を管掌せず全体統括に専念しなさい、と証券会社より指摘されました。極めてナンセンスだと思います。経営トップこそ、現場を見なければならないというのが私の信条です。未だに電車通勤を貫いているのは、交通広告を見たり、世間ではどんなスマホアプリが流行っているのかを観察したり、浮世離れを防ぐためです。結局、代表権は返上し、まさに最前線で広報宣伝とコンテンツづくりに専念しています。また、現場に合わせたスピード感も同様に重要で、上長の承認を得ながら進めていては勝てません。ブシロードは非常にフラットな組織で、現場の議論がスピーディーに戦略実行に反映されるようになっています。

■故郷金沢に思うこと

年に10回程度、仕事やプライベートで金沢を訪ねますが、非常に可能性のある街だと思います。人口における高等教育機関の数が京都に次いで国内2位で、美術や工芸、工業、化学技術など特色のある大学もあり、優秀な若者が多く暮らしているからです。ホテルの客室数も来年には名古屋と同程度になると聞いています。このポテンシャルを花開かせるには2つ。一つは中~大規模のイベント開催ができるアリーナを駅前に造ることです。もう一つは、学生が働きたい会社を創ること。4年間暮らし、金沢を好きになった若者も少なくないはずで、彼ら彼女らに支持される企業をつくる、あるいは誘致することが必要ではないでしょうか。

■起業ロード~これからのブシロード

今の20代と40代を比べると、40代の方が人口1.7倍、エンタメ消費額2倍大きいと予想され、市場規模では4倍相当になります。最近ヒットしているものは、40代の方が若い頃に夢中になったIPを再利用したものばかりです。10代が注目されがちですが、若者から大ヒットが生まれる時代ではないということです。一方で、この団塊ジュニア世代に支えられている現在のエンタメ市場は、彼らが本格的に引退する2030年以降、国内需要に期待が持てなくなります。これからのエンターテインメント企業はグローバル化ができなければ生き残ることはできないでしょう。2025年までにそのような体制が完成できるかどうかです。上場したのも、グローバル化に向けて大きな勝負をするためでした。ブシロードでは、ホームラン狙いで魅力的な世界に通用するIPづくりに全力投球していきます。

※「THE INDEPENDENTS」2020年3月号 - P16より
※冊子掲載時点での情報です