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「2019年IPO総括と2020年に向けて」

公開

<話し手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(写真右)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<聞き手>
株式会社Kips
代表取締役 國本行彦(写真左)

<特別対談>これからのIPOスタイル

2019年IPO総括と2020年に向けて


■2019年総括

國本:2019年新規上場会社数は94社(東京プロマーケットを含む)と昨年比4社減でした。
小原:AGSコンサルティングでは、濃淡はありますが18社のIPOに関与しました。来年以降のパイプラインは200社あり、上場気運は引き続き高い水準を維持しています。
國本:IPO準備企業はすごく増えていますが、IPOハードルが上がったと言われています。
小原:監査法人がIPO準備会社にリソースを割けておらず、証券会社もIPO支援体制はここ数年拡充されていません。中小証券会社に期待していますが、少し時間はかかると思います。こういった点から、結果的にIPO社数は絞られているのが現状です。
國本:一方で赤字会社のIPOでも企業価値が高く評価されます。
小原:トップラインの成長率が注目されていますが、赤字のまま上場した企業の期待値がどう実現されるかが、今後のIPO市場を左右するのではないでしょうか。
國本:Sansan(4443)、freee(4478)など、ベンチャーの大型上場もありました。
小原:単一事業からGAFAのようなプラットフォーマーに育つかどうかがポイントです。
國本:売出の比率が大きく、既存株主の資金回収面が目立った感があります。
小原:本来は成長資金の供給がIPOの役割であるはずなのですが、それを認めざるを得ない状況があるのではないでしょうか。

■IPO準備のポイント

國本:IPOの実質基準は厳しくなっていますか?
小原:全くそうは思いません。
國本:それでもIPO時期が遅れる会社が多い印象がありますが。
小原:IPOを20年見てきて、いつの時代も本質は業績であり予実管理です。きちんとした管理体制の下、精度の高い予算を策定できるか、計画通り事業を推進できるか、これらが重要です。
國本:予実管理が厳しくなると固い数値計画をつくるようになり、株価にも影響が出ます。
小原:IPOとは一般投資家も株主に迎えることであり、その事について考えるべきです。
國本:ビジネスモデルが確立していないから、株価の変動要因が増える面もあります。
小原:新規事業など収益変動が大きい事業は固く見積ります。問題なのは、過去の実績で数字の積み上げが出来る事業について先行きを見誤るケースが多い事です。証券会社や監査法人のチェックが厳しくなっている訳ではなく、従前通り当たり前のことを、当たり前にやるだけです。過去になかった指摘がなされる事はありません。
國本:IPOの準備コストは高くなっていませんか?
小原:管理部門の人材が日本には不足しており、それが担える人のバリューが高騰しています。CFOの報酬が1,200~1,500万円が相場となると、利益が1億円前後の会社にとってはインパクトがあります。故にIPOの準備コストが高く感じる、というのは理解できます。
國本:監査本契約の前段階で監査法人とアドバイザー契約する事も重要だと思います。月次決算や労務体制も規模が大きくなってからだと大変です。
小原:IPOを決断する前、ここが最も重要です。IPOの3~4期前決算からきちんとできていると監査法人の信頼も高くなります。
國本:未上場段階で十分な資金調達ができる環境下で、IPOに影響はありますか?
小原:数十億円の資金調達をした企業が、ユニコーンになるまでIPOを待つ投資家もいます。しかし事業が軌道に乗るかは誰もわかりません。

■2020年に向けて

小原:IPO社数は年間90社前後と、当面変わらないと見ています。
國本:地方企業のIPO状況はいかがでしょうか?
小原:愛知9社を中心に中部北陸地域で12社と倍増した事に注目しています。東証も地域金融機関との連携を強化しており、今後に期待します。
國本:地方企業がIPOする上での課題はどこでしょうか?
小原:何と言っても情報格差です。証券会社は東京に集中してしまい、地域に引受部隊が常駐していないことは大きな課題です。
國本:2019年のTPM(東京プロマーケット)上場は9社と過去最高になりました。
小原:本則市場へのステップアップ上場会社は2社となりましたが、今後はもっと増える事を期待しています。
國本:地方のベンチャーエコシステムでベンチャーへの資金供給体制も重要です。
小原:地方の金融機関系VCも増えていますが、問題はリードインベスターとなる投資家がいない点です。
國本:ベンチャーを支援するネットワークが全国各地に構築されつつあります。
小原:インデペンデンツクラブも、ベンチャーの発掘だけではなく成長支援や資金供給するエコシステムづくりを期待しています。

■ 株式会社AGSコンサルティング 会社概要

代表者  :代表取締役会長 虷澤 力/代表取締役社長 廣渡 嘉秀
スタッフ :400名(公認会計士61名・税理士76名)2019年10月現在
東京本社 :東京都千代田区大手町1-9-5 大手町フィナンシャルシティノースタワー24F
      TEL 03-6803-6710 FAX 03-3510-2800
大阪支社 :大阪府大阪市中央区今橋3-3-13 ニッセイ淀屋橋イースト 5F
      TEL 06-6232-0600 FAX 06-6232-0616
名古屋支社:愛知県名古屋市中村区名駅 4-2-28 名古屋第二埼玉ビル 9F
      TEL 052-533-6695 FAX:052-533-6698
福岡支社 :福岡県福岡市中央区天神1-9-17 福岡天神フコク生命ビル 14F
      TEL 092-737-8211 FAX 092-724-0320
海外拠点 :シンガポール、香港、マレーシア
事業内容 :マネジメントサービス、事業承継支援、企業再生支援
      IPO支援、M&A支援、国際業務支援
URL  :http://www.agsc.co.jp/

※「THE INDEPENDENTS」2019年12月号 - p10-11より
※掲載時点での情報です