「「地方のベンチャーファイナンス最前線」」
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<レポート>
2019年12月6日 広島県チャレンジ企業セミナー
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福田 幸雄 氏(株式会社アスカネット 代表取締役会長兼CEO)
金沢 崇 氏(ハックベンチャーズ株式会社 代表取締役)
雨宮 秀仁 氏(イノベーション・エンジン株式会社 インベストメント・パートナー)
<モデレータ>國本 行彦(株式会社Kips 代表取締役)
國本:私がジャフコ広島支店に在籍していた1980年代や90年代、ベンチャーキャピタル(VC)の仕事は中堅企業への投資や事業承継対策としての資本政策が大半でした。1999年に東京証券取引所マザーズ市場が創設されて以降、上場基準が資金力や収益力から成長力にシフトし、ベンチャーファイナンスも大きく様変わりをしました。最近ではシード投資も盛んになり、また赤字でも上場できる時代になってきています。まずはハックベンチャーズ金沢さんより、最近のトレンドをお聞かせください。
金沢:昔と比べて投資家の裾野が広がってきたと感じています。従来のVCだけでなく、エンジェル投資家や大企業による投資(CVC)など、成長段階や業種毎に強みのあるプレイヤーが登場したことによって、起業家にとって成長しやすい時代になったのではないでしょうか。
國本:VECの統計では、2018年度のVC投資額は2,778億円です。2017年度と比較して金額は約40%増加していますが、1社あたりの投資額も115百万円と大型化の傾向にあります。現在、主に東京でベンチャー投資活動を行うイノベーション・エンジンの雨宮さんは、この状況についてどうお考えですか?
雨宮:ここ2~3年はまるでバブル期のようなバリエーションの企業が多く、この傾向が続くとは思えません。過大評価されてしまった企業は、少しでも事業が行き詰まった途端に、次の資金調達ができずに厳しい状況に置かれることになります。いわゆる、選別の時代になっていくでしょう。ただ、売上がない企業に出資するというケースはなくならないと思います。市場にマッチし普遍的であるサービスを提供する企業、ひとつのソフトウェアビジネスで終始せず基盤を取れる企業、私達の生活やビジネスの中で背骨になれる企業、こういった企業は今後もお金を集めることができると考えます。
國本:広島ではベンチャー起業家であった湯崎知事を筆頭にベンチャーを支援する方々が充実していますが、アスカネット福田さんは現在の広島のベンチャー環境をどうお考えですか?
福田:よく大学に呼ばれて話をするのですが、先日、東京大学に行った際に、同級生や卒業生など身近な人が起業し上場する姿をみてとても刺激を受けていると、活き活きと話してくれた学生さんがいました。一方で、広島の大学ではそういった活力のある学生さんは少ないように感じます。やはり地方ゆえの不利な面があるのでしょうが、もっと地方の若い方たちに刺激を与えられる何かがあるといいですね。また、特に備後地区では、広島をはじめとする中国地域は商圏が小さいので、最初からグローバルを視野に入れた製品開発を行う企業が多く、若い経営者の方には是非参考にしてもらいたいとも思います。
金沢:関西では、大阪府が「Booming!」というプログラムで、上場した先輩経営者が後進のベンチャー企業を育成しています。他にも様々なプログラムが立ち上がっていますが、これらに横串を刺してもっと大企業やベンチャー企業の垣根をなくそうと、関西経済同友会が「ベンチャーフレンドリー宣言」を掲げました。その取組みの一環で行われた交流イベントにマネジメント層300名が集まるなど、一体感が出てきています。印象的だったのは、「この日本において大阪ができることはなんだろう」という問題提起で、必ずしも東京と同じことをするのではなく、大阪や広島が社会に貢献できることをイシューにすることが重要なのだろうと思います。
國本:東京と地方にギャップのようなものは感じますか?
雨宮:東京のベンチャー企業は、Facebookで「こんなビジネス考えているので会ってください」と直接コンタクトしてきます。自ら現状を打開しようという情熱を強く感じるので、応えたいという気持ちも芽生えます。しかし、残念ながら地方のベンチャー企業からはそのようなことはほとんどありません。もっとアピールすべきだと思います。
金沢:東京では活発になってきたシード投資は、まだ関西では積極的な投資家がいないというのが実態です。ただ、地銀や信金と連携して若いベンチャー企業に投資する動き等も出始めています。何より、ガッツのあるキャピタリストも増えてきているので、担当者を選ぶという考えも重要かなと思います。
雨宮:当社は加賀電子のCVCも手掛けていますが、最近は他の事業法人からの相談も増えています。彼らは当然ですが、VC業界の若手ですら、キャピタリスト経験が不足しているのかもしれません。業界全体の底上げが急務です。キャピタリストの仕事は評価ではなく、「Onithe sameiboat」であると、ジャフコ時代に学んだことが私の財産です。
國本:雨宮さんが福田さんのアスカネットに投資したポイントはどのようなところにあったのですか。
雨宮:投資したのは1997年くらいですが、私が見た中でアスカネットのビジネスモデルは抜群に素晴らしかったです。普遍的なビジネスモデルで、自分の強みをしっかり理解しており、ニッチな市場であってもしっかりシェアを取れる。私はそのようなビジネスが好きです。
福田:雨宮さんからは「お金は出しますけど、口も相当出しますよ」と言われました。実際に、投資前から米国IT企業のビジネスモデルについて議論をふっかけてきてくれて(笑)、当社にとって吸収できるものはないかと一緒に考えてくれました。一方、他のVCは、「お金は出しますけど、口は一切出しません」と言われたのです。私は資金だけでなくアドバイスを求めていたので、雨宮さんを選びました。
國本:最近の学生は、卒業後に就職せず起業するという人が増えているように思います。金沢さんのところに相談にくる起業家のタイプなども変わってきていますか。
金沢:最近では高校生の起業家や、さらには中学生の起業家など低年齢層化が進んでいます。また、大企業に勤めている方が独立しようという動きも以前より増えてきているように感じます。
福田:ふと思いついたアイデアなどを聞いてくれる人や場所、あるいは仕組みが広島にもあればいいなと思っています。私が若いときに自分で考えたアイデアを企業にもっていこうとした際、会っていただくのに半年ほどかかったという経験があるからです。ビジネスの先輩たちが、若い方のアイデアにさらに経験と知識を付け加えていくと、非常に面白いビジネスモデルが生まれるのではないかなと思います。
※「THE INDEPENDENTS」2019年12月号 - P18-19より
※冊子掲載時点での情報です