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「世界の食糧問題を昆虫科学で解決する」

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【岡部 慎司 氏 略歴】
生年月日:1976年1月15日 出身高校:徳島県立富岡西高校
1999年甲南大学大学院修士課程修了。2000年株式会社アプロサイエンス入社。副社長を経て、2015年より取締役社長就任。2017年より徳島大学発ベンチャー「(株)大学シーズ研究所」代表取締役社長、2019年5月当社設立、代表取締役社長就任。

【株式会社グリラス】
設 立 :2019年5月9日
資本金 :8,000千円
所在地 :徳島県徳島市八万町新貝56-70
事業内容:食用昆虫の養殖、育種及び販売事業
従業員数:6名




■コオロギを活用した昆虫食の研究を行う徳島大発ベンチャー

 私はライフライセンス分野でタンパク質を分析・解析する(株)アプロサイエンスで、新規事業の責任者として化粧品の開発やECを牽引してきました。バイオテクノロジーとは異なる視点からタンパク質の価値を創造し、世界の課題を解決したいと考える中で、徳島大学でコオロギ食用化研究を行う三戸准教授と渡邉助教と出会い、3名で当社を設立しました。私たちは国連が推奨するSDGsを達成する事業を全世界で展開し、コオロギを活用した昆虫食を徳島から世界へ提供するプラットフォーマーを目指しています。

■スーパーフードとして注目される食用コオロギ

 2050年には世界人口が90億人を超え、深刻な食糧危機に陥ることが示唆され始めている中、近年、欧米を中心に未来のスーパーフードとして昆虫が注目され始めています。なかでもコオロギは一般的に高タンパク質であることに加えビタミンやミネラル、不飽和脂肪酸の含有量の点でも優れており、かつ糖質の割合が低いため機能性食材としても有望です。また、牛などの家畜に比べて少ない飼料、水で養殖できるという利点もあります。食品残渣を利用したコオロギのエサとなる飼料の開発も同時に進めており、飼料のコストを削減しつつ、コオロギの生育や栄養価を高める研究開発を進めています。

■今後の事業展開

 既に東南アジアでは広大な土地を用いたコオロギの大量生産が行われています。当社は飼育の自動化と飼料の低コスト化によって省スペースで高密度環境下での飼育が可能となる独自システムを開発し、海外に向けたパッケージ販売を進めるとともに、自社では三戸准教授のグループが持つ世界有数の昆虫のゲノム編集技術を活用し、付加価値の高いコオロギを作り出すインフラを整備することで差別化を図ります。
 昆虫食の最大の課題はマイナスイメージを払拭することです。そのためには栄養価としての魅力はもちろん、エサや水の量が少なく、温室効果ガスがほとんど出ないといったエコな食材としての価値を伝えることも必要です。大手食品会社とも提携しながら消費者への啓蒙活動を続けていきます。昆虫食の可能性を発信し、養牛、養豚、養鶏に続く第4の産業として徳島から世界を見据える「養蛬(ようきょう):コオロギを養殖する産業」の普及を目指します。

※2019年11月号掲載時点での情報です