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「難治性血管炎の診断・治療薬開発で国際社会に貢献します」

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【鈴木 和男 氏 略歴】
東京都立大学、東京都立大学大学院 理学研究科卒業。国立栄養研究所、国立感染症研究所 室長を経て2007年より千葉大学大学院医学研究院 教授、グローバルCOEコーディネーターを務める。2013年より帝京大学アジア国際感染症制御研究所 所長・教授。

【株式会社A-CLIP研究所】
設 立 :2012年2月22日
資本金 :61,200千円
所在地 :千葉県千葉市中央区亥鼻1-8-15
事業内容:血管炎・感染症に関する診断および治療薬の開発
従業員数:7名



難治性血管炎の診断・治療薬開発で国際社会に貢献します


■炎症・感染症研究を進める千葉大学発ベンチャー

 私は1970年代初頭から炎症性疾患と感染症の基盤研究を進めてきました。なかでも難治性血管炎は、腎臓などの血管が炎症を起こし、臓器不全になる難病です。国内の患者数は1万人、予備軍は100万人と推定されています。主に高齢者に多く発症しますが、現在主流のステロイドパルスやシクロホスファミド治療といった治療法は、高齢者には危険性が高く、感染症を誘発し、最悪の場合死亡するリスクがあります。当社では30年以上にわたる基礎研究と国際共同研究の成果に基づいて、新しい診断薬や治療薬の研究開発を推進しています。

■独自の技術で難治性血管炎の早期発見に貢献

 当社は2012年に難治性血管炎・急速進行性糸球体腎炎の迅速判定キット『ANCA-Fast®』を開発しました。従来の判定法(ELISA法)は専用機器でバイオマーカー*を1種類ずつ検査するため、診断結果が得られるまでに1週間程度を要します。『ANCA-Fast®』は4種類のバイオマーカーを同時に測定し、15分で診断が完了するため、血管炎を早期かつ安価に検出することが可能です。バイオマーカーの1つであるモエシンは、千葉大学大学院医学研究院と大阪大学大学院医学研究科の共同研究で発見された、血管炎の重症化に関わる抗体です。キット1つで手軽に診断が可能なため、大学病院だけでなく、かかりつけのクリニックにも広く普及させることを目指しています。
(*病気の診断をする際に指標となる生体物質や自己のタンパク質に対する抗体などの総称)

■今後の事業展開

 千葉大学との共同研究による技術改良によって、『ANCA-Fast®』の生産コストを大幅に削減するとともに安定した品質で大量生産を行うための環境が整いつつあります。今後は関係学会やBioJapanなどの展示会での開発商品の紹介・普及活動を継続的に行い、製品の知名度向上と市場の拡大を進めます。一方、治療薬開発は、厚労省プロジェクト「人工ガンマグロブリン開発」のシードを、JST-AMEDの助成金にて展開し、現在、抗体フラグメント医薬AC-01(VasSF)として非臨床試験、第Ⅰ相、第II相に向けて開発中です。難治性血管炎や心筋梗塞等など、幅広い血管炎症の治療薬として普及させます。将来的には、当社の開発した簡易診断や治療薬が、感染症の多い東南アジア、アフリカなどに普及することを目指します。

※2019年11月号掲載時点での情報です