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「世界のアドフラウドを撲滅し、広告効果の最大化に貢献する」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(写真左)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
株式会社Phybbit
代表取締役CEO 大月聡子氏
生年月日:1984年6月23日 出身高校:松本深志高校
奈良女子大学卒業。首都大学東京大学院理工学研究科修了後、2011年当社設立、代表取締役社長就任。

【株式会社Phybbit】
設 立 :2011年4月27日
資本金 :36,393千円
本 社 :東京都港区西麻布4-22-12 BIS西麻布4F
事業内容:アドフラウド対策ツール『SpiderAF』の開発と提供
URL :https://spideraf.com/about-phybbit

<特別対談>これからのIPOスタイル

世界のアドフラウドを撲滅し、広告効果の最大化に貢献する


■ネット広告の不正を検知する『SpiderAF』

大月:当社はアドフラウド(広告詐欺)対策ツール『SpiderAF』の開発と提供を行っています。ルールベースやAI、ディストリビューション分析等を用いて広告の配信先をチェックし、不正と思われる配信先を検出するツールです。広告ネットワーク事業者と広告主の双方に提供しており、国内のネットワーク事業者内ではシェアトップを誇ります。
小原:2018年の世界のインターネット広告媒体費は約20兆円ですが、アドフラウドの被害額はどの程度でしょうか。
大月:約1.9兆円に上ると推測されており、なかでもマフィアや反社会的勢力の温床になっていることが問題視されています。私たちは日々巧妙化するアドフラウドを検知し、世界の広告業界全体を健全化することを目指しています。

■大学院での研究生活を経て起業

小原:大月さんは、大学院では原子物理学を専攻されていたのですね。
大月:2011年に蓮舫議員の事業仕分けで科学技術の研究費が削減されたニュースを受け、日本の優れた先端技術をビジネスでも応用できることを証明したいという想いで大学院の仲間と卒業後すぐに当社を設立しました。当初は受託開発を行う傍ら自社サービスの開発を試みていたものの、なかなか芽が出ませんでした。
小原:どのようなきっかけで『SpiderAF』の開発にたどり着いたのですか。
大月:当時開発したデータフローとAIエンジンのフレームワークの売り先に悩んでいた頃に「アドフラウド対策に利用してみてはどうか」とアドバイスを頂き、試験運用を行う中で複数の本契約が決まりました。そこで2017年6月からアドフラウド対策ツール『SpiderAF』として正式にリリースし、当社の主力サービスとして展開する運びになりました。
小原:まさにネット広告の市場が拡大する中でアドフラウドを問題視する事業者が増えてきていたタイミングで、プロダクトマーケットフィットしたのですね。

■市場の啓蒙とデータ活用で事業拡大を目指す

小原:とはいえ、未だ「アドフラウド」という言葉すら知らない人・会社も多いのは事実なので、いかにして周知を行っていくかが課題です。
大月:広告主となる企業の中でも、ゲーム業界など社内にWEBマーケターを抱えるアーリーアダプターの間では周知が進んでいる一方、マジョリティーの会社では未だ問題意識が低い現状があります。当社自らがアドフラウドに関する勉強会やオウンドメディアを通して啓蒙活動を続けていきたいと思います。
小原:将来的にアドフラウド以外の領域に進出する検討はされていますか。
大月:アドフラウドの検出データをセキュリティ分野で活用することは可能だと思います。例えば犯罪者の入国を阻止、検挙する目的で、入国審査時に所有している端末を確認する新たなセキュリティ対策を生み出すこともできます。アドフラウドは反社会的勢力が元締めになっているケースも多く、現在は麻薬探知犬を出動させ取り締まりを強化していますが、この手法の方がより精度の高い対策になるのではないかと考えています。

■株式上場に向けて

大月:今後実施する資金調達を通して、『SpiderAF』の精度を高める開発を続けながら、営業体制を強化していきます。日本の広告主からはサービスの提供だけでなくサービスの運用まで任されるケースが多いため、人的リソースを拡充しつつ、API等を活用してより効率的に『SpiderAF』を導入できる仕組みも開発していきたいと考えています。
小原:売上10億円程度で先に上場し、知名度や社会的信用度を人材採用や販路拡大に活かすことも出来るのではないでしょうか。
大月:確かに、5年後をめどにポストユニコ-ンの規模での上場を目指していましたが、早期に上場することも考えてみたいと思います。
小原:IPOした後も、成長戦略や管理体制の整備など会社の維持・継続について中長期的に考えていく必要があります。資金調達や上場時期について様々なパターンを検討しながら最適解を考えてみてください。本日はありがとうございました。


※「THE INDEPENDENTS」2019年9月号 - p22-23より
※掲載時点での情報です