「ユニコーンとIPO(2)」
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國學院大学
教授 秦 信行 氏
野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。
1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。
1994年國學院大学に移り、現在同大学教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。
日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。
早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)
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前回のこのコラムで、筆者は当時のユニコーンとしては7兆円を超え世界最大の時価総額の配車サービス会社UBERが2019年にも上場を計画しているようだがその理由は何なのか、と問うた(最近の新聞報道では動画アプリ・ティックトックを開発した中国のバイトダンスが時価総額8兆円強で時価総額最大のユニコーンになったようだ)。
UBERは、世界的な資金余剰の時代を背景に既に2009年の創業から僅か10年足らずで世界のVC、CVC、PEファンド、事業会社などから2兆円以上の資金調達を行っており、敢えて上場によって更に資金調達力を強化する必要性は見当たらない。加えて、その資金力を基に既にその事業はグローバルに展開されており、信用力という面でも上場する必要性も少ない。その意味では、UBERが上場を考える理由としては、既存の株主が何時でも自由に保有株式を現金化できる場を提供すること位しか考えられないのではないか。
UBER同様にユニコーンだった企業でその後上場した企業にフェイスブックがある。フェイスブックは2004年の創業、すぐに事業は急速に拡大し会員数は世界に拡大した。その間資金調達も順調に進み、2007年10月のシリーズCでマイクロソフトなどが500億円程度(1ドル=110円換算、以下すべて同様)の資金を出資した時点で時価総額は2兆円近くに膨らみユニコーンとなった。その後も資金調達は続いたが2012年5月、1兆6500億円の公募増資を行ってIPOを果たした。IPO時の公開価格38ドル、時価総額は11兆4400億円、米国株式市場3番目に大きなIPOとして騒がれ、記憶に新しい方も多いと思う。
とはいえ、上場後の株価(時価総額)は決して順調ではなく、上場後暫くして下落トレンドとなり、3か月後には時価総額は半減する結果となった。その後は回復したものの、IPO直前のファイナンスに応じた投資家に対しては約1年半に亘って迷惑をかける結果となった。そのため、フェイスブックのIPOは失敗だったと評する人もいる。
それはともかく、フェイスブックの場合は、IPOで大規模な資金調達を実現しており、資金調達がIPOの一つの目的だったと言えなくもない。とはいえ上記したように上場後の株価低迷で一部の株主は損失を被る結果となっており、IPOを行ったことを全面的に評価することは難しいように思う。確かにIPOで1兆円を超える資金調達が出来たわけだが、未上場のユニコーンのままであっても資金調達は可能だったのではないか。
時価総額が10億ドル=1100億円以上で、かつ未上場段階で既にかなりな金額の資金調達が可能で、多くが事業展開もグローバルに行われていて信用力も付いているユニコーンの経営サイドから見て、投資家に資金回収する場を提供する以外にIPOする理由はなさそうにみえる。だからこそ中国やインドは別にして米国を中心に世界的に見ても上場企業数が減少しているのだともいえる。
では、この状態は何時まで続くのか、資金余剰の時代が終われば世界での上場企業数は再び増えていくのか。次回は日本の事情も踏まえながらIPOの問題を再度考えてみたい。
※「THE INDEPENDENTS」2018年12月号 掲載