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「独自の集積化技術で安価で高性能な三次元LSIを開発」

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【元吉 真氏 略歴】
1955年生まれ。鳥取県立米子東高校出身。1982年(株)日立製作所武蔵工場入社、SRAMデバイスの開発に従事。1989年川崎製鉄(株)LSI研究センター入社、SRAM,ASICデバイス開発に従事。1992年ソニー(株)入社、SRAM,キャッシュメモリ、不揮発性メモリの開発に従事。2005年(株)ザイキューブ入社、開発設計部長、仙台開発センター長、代表取締役社長歴任。2010年東北マイクロテック(株)設立。

【東北マイクロテック株式会社】
設 立 :2010年4月2日
資本金 :9,300千円
所在地 :宮城県仙台市青葉区荒巻6-6-40 T-Biz203
事業内容:三次元積層型LSIデバイスの研究・開発・設計・製造・販売



独自の集積化技術で安価で高性能な三次元LSIを開発


10月12日イベントの様子


■東北大学発の三次元LSIデバイス開発ベンチャー

LSI(大規模集積回路)は、メモリ、演算回路などの回路ブロックで構成され、多機能化、高速化が求められていますが、従来のLSIで回路規模が大きくなるとチップ面積が増加し、データの遅延や電力消費が問題になっていました。当社はこの問題を解決すべく、東北大学未来科学技術共同センターの小柳光正教授が取り組んできた三次元集積化技術の研究成果を元に、三次元積層技術を使ったLSIによる半導体デバイス等の開発・製造を行っています。

■集積化技術でLSIの性能が飛躍的に向上

三次元LSIは、回路ブロックを別々に切り離し重ねて、チップを縦に貫通させた配線で回路ブロック間を接続しています。当社は、製造コストを削減するために、数秒程度の短時間でウェハ全面にチップを並べ、これらを同時に加熱圧着する自己集積技術の開発に成功しました。また、当社独自の世界最小レベルのマイクロバンプ接合技術により、配線の長さを10~200マイクロメートルに抑えることで、従来LSIに比べ①数倍以上の高速化、②半分以下の消費電力、③小型化、④異種デバイスの積層による多機能化を実現しました。マイクロバンプ接続構造、積層型撮像デバイス用バンプ、円錐バンプを使った高精度チップ位置合せ技術は当社で特許を保有しています。小柳教授が保有している自己集積化特許は現在買取手続中です。

■医療用X線パネルに用途開発

マイクロバンプ接合技術を活かして、医療用X線パネルを開発しました。従来のX線パネルでは、X線センサーLSIチップと信号処理回路LSI間の長い配線のためデータ遅延やノイズが生じていました。センサーと回路の積層によりパネル全面にセンサー機能を持たせ、かつセンサーと回路を多数の短い配線で接続できるため、①従来の10~100倍の解像度、②ノイズ減少によるクリアな画像、③従来の5倍以上の高速処理、④大画面パネルの製作コスト削減が可能となりました。

■今後の事業展開

当社の医療用X線パネルにより、治療の正確性・効率性の向上および患者や医療従事者への被ばく線量の減少が実現し、医療現場の環境改善への貢献が大いに期待できます。現在は米国向けにX線パネルを試作中ですが、他にも三次元積層型LSIを使ったIoT向けセンサーの開発、化合物半導体とSi-LSIを積層した高性能X線センサー/赤外線センサー、自己集積化技術のμ-LEDディスプレイ製造への応用、ラージパネルアセンブリへの応用など、当社技術の幅広い活用を目指しています。