「エコでヘルシーな野菜シートで世界に挑戦」
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<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(写真右)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)
<話し手>
株式会社アイル
代表取締役 早田 圭介 氏(写真左)
1965年生まれ。佐世保北高校出身。1989年山口大学卒業。1989年野村證券入社。1994年早田商店入社。2006年(有)アイル取締役就任。2014年(株)アイル代表取締役就任。
【株式会社アイル】
設 立 :2006年3月27日
資本金 :215,200千円
本 社 :長崎県平戸市田平町小手田免419-1
事業内容:野菜シートの製造・販売
URL :http://vegheet.com/
<特別対談>これからのIPOスタイル
エコでヘルシーな野菜シートで世界に挑戦
■野菜嫌いの子供も美味しく食べられる『VEGHEET(ベジート)』
小原:『VEGHEET』は規格外の野菜をペーストにして乾燥させたシート状の食品です。廃棄される規格外の野菜を用いた環境にやさしい食材として注目を集めています。6月からは首都圏のイトーヨーカドー100店舗超でニンジンとダイコンの『VEGHEET』の販売が始まりました。早田:野菜が苦手な子供でも美味しく食べられるので、主婦の方から好評をいただいています。
小原:今後はBtoB向けの惣菜の加工材料として需要が高まっていきそうですね。九州の他に、三大都市圏全てをカバーできる中部地方に拠点を置くのはどうでしょうか。愛知県や静岡県では原料野菜の調達もしやすいと思います。
早田:7月に投資型クラウドファンディング「Sony Bank GATE」で9800万円の資金調達を行い、その勢いに乗って平戸工場で1日に10万枚を生産できるよう設備を拡大します。さらに平戸には、20万枚を生産できる第2工場を建設します。本州拠点の立ち上げもできるだけ早く行い、1日に100万枚を出荷できる環境を整えます。
■海苔の製造技術を応用して開発に成功
小原:貴社だけが野菜本来の色や味を損なわずにシート化することに成功しているのは、20年にわたる研究開発の賜物ですね。早田:1998年に有明海沿岸の海苔業者が開発した野菜海苔に出会い、商品化に向けた取り組みをスタートしました。それから2011年に製造機械が完成し、試行錯誤を重ねて2014年にようやく誰もが美味しいと思える製品の量産に成功しました。
小原:現在はニンジンやダイコンなどのシートが販売されていますが、野菜以外の食材のシート化も可能なのでしょうか。
早田:既に梅干し味が完成していますが、海外からワサビや柚子、醤油、だしなどの日本らしい食材のシート化の要望が寄せられています。果物や肉、魚にも挑戦していこうと考えています。
■ヨーロッパからの逆輸入を狙ったブランディング戦略
早田:海外進出はヨーロッパから始めていきます。既にイタリアやフランス、スペインに数万枚を出荷しており、フランスの高級レストランでも採用されています。今秋から本格的な展開を進める予定です。小原:味や見た目はもちろんですが、規格外の野菜を使っているというエコな部分も欧州の人には評価されるポイントだと思います。
早田:ヨーロッパでは数の多さよりも権威付けを重視した展開を行っていきます。秋に開催されるパティシエの世界大会の日本代表の方にも『VEGHEET』を使っていただく予定です。ヨーロッパでの認知と確かな評価をもってアメリカへの展開を進め、将来はアメリカに工場を立ち上げたいと考えています。
■株式上場に向けて
小原:最短でIPOを目指す方法もありますが、じっくり事業を成長させてからでも遅くないと思います。ユニコーン企業に近い評価をされてから東証一部上場を目指すことも選択肢の一つではないでしょうか。そのくらいの体力がなければ世界展開は難しいと思います。早田:これまでにVCや地元の金融機関からの投資を受けてきました。10年以上という長い期間を経てようやく先が見えてきたと感じています。良いパートナーを見つけて成長スピードを上げ、一気に規模を拡大して2020年頃のIPOを検討しています。
小原:いずれにしても国内の生産設備拡大が重要ですね。世界中で『VEGHEET』が販売されることに期待しています。本日はありがとうございました。
※「THE INDEPENDENTS」2018年9月号 - p21-22より