「呼気の測定技術を活かして医療に貢献し、グローバルニッチトップ企業を目指す」
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<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(写真右)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)
<話し手>
東海電子株式会社
代表取締役社長 杉本 一成 氏(写真左)
1945年東京都生まれ。東京都東大和第一中学卒業。1960年(株)東芝技能養成所入所。1963年(株)東芝入社 (配電盤機器配属)。1969年(有)杉本製作所設立、代表取締役就任。1979年当社設立、代表取締役就任。
【東海電子株式会社】
設 立 :1978年11月16日
資本金 :87,987千円
本 社 :静岡県富士市厚原247-15
事業内容:業務用アルコール測定器の製造販売サポートほか
URL :https://www.tokai-denshi.co.jp/
<特別対談>これからのIPOスタイル
呼気の測定技術を活かして医療に貢献し、グローバルニッチトップ企業を目指す
■病臭測定器の開発でヘルスケア領域に参入
小原:アルコール検知器の事業からヘルスケア領域へ進出した経緯を教えてください。杉本:がん医療においては乳がんや子宮がんなどの患者から発する特有の病臭が患者の精神的な負担になっています。病臭の成分に合わせた適切な対処法が必要ですが、病臭検知は医師や看護師の感覚に頼るしかないという課題がありました。そこで長年のアルコール検知器開発で培ってきた呼気の検知技術を応用できないかと考えました。2012年から静岡県立静岡がんセンター研究所と共同で病臭測定用の小型軽量診断装置の開発に着手し、2018年3月に「Aino-Pro(アイノー・プロ)」が完成しました。
杉本:「Aino-Pro」は100種以上のガスを分離・識別できる可搬式の簡易ガスクロマトグラフと、ニオイ成分を学習し、ニオイを識別するAIによって構成されています。
小原:持ち運びが可能であるため誰でも場所を問わずに利用でき、幅広い活用が期待されますね。
杉本:口臭の測定や薬物等のドーピング検査などへも活用できる見込みです。将来的には医療機器として承認され、がんの診断に用いられることを目指しています。AIの精度を高めるためには相当な臨床例のデータが必要になりますが、現在の提携先からは個人情報保護の観点から患者のデータや呼気を入手することができていません。
小原:「Aino-Pro」が正確に病臭判定をできるということを速やかに実証するべきだと思います。最初から事業化のハードルが高いがんを目指すのではなく、早い実証のために風邪や糖尿病などからスタートするのも一手ではないでしょうか。
杉本:新たな提携先を開拓し、実用化に向けた実証を進めていきます。
■呼気の検知による社会貢献
小原:創業から20数年間はカシオ計算機(株)の下請けでデジタル時計の生産を行っていました。自社の事業を始めようと決意したきっかけはありますか。杉本:当時社会問題化していた飲酒運転による事故の多発を解決するために何か貢献できないかと考えたのがきっかけです。既にアルコール検知器は流通していましたが、よりコンパクトな製品に需要を見出し2003年に呼気によるアルコール検知、管理そして記録までを一貫して行うシステム「ALC-PRO」をリリースしました。
小原:貴社のアルコール検知器は全国21,000社、60,000事業所以上で使用されるほどシェアを拡大しています。売り切り型でなく保守サービスを含めた契約を結んでいる点が貴社の強みだと思います。
杉本:継続的に正確な計測ができるように保守サービスを含めた契約を結ぶと決めていました。当社のアルコール検知のシステムを用いた安全管理の徹底によって顧客企業の安全経営に貢献することが私たちの使命だからです。
小原:保守による安定した売上が確保できるからこそ、新規事業の開発にも力を入れているんですね。
小原:次世代への継承についてはどのようにお考えですか。
杉本:専務の杉本哲也氏への事業承継のために株式譲渡を進めています。事業拡大のために名古屋証券取引所での上場を準備していましたが開発に注力するために先延ばしにしていました。次の世代で実現させてほしいと思います。
小原:創業から40年以上経ってもなお挑戦し続ける社風を持つ貴社ならIPOも実現できると思います。呼気による社会の安心安全と健康を実現するグローバルニッチトップ企業を目指して頑張ってください。本日はありがとうございました。
※「THE INDEPENDENTS」2018年8月号 - p20-21より