アイキャッチ

「(株)データミックス、(株)名城ナノカーボン、ストーリーエム(株)」

公開


早稲田大学
商学博士 松田 修一 氏

1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。
1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。
1973年監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所、パートナー。
1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。2012年3月教授を退官。ウエルインベストメント㈱取締役会長
特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ代表理事



No.882 株式会社データミックス(代表取締役 堅田 洋資 氏)

堅田氏は、米国でデータサイエンスの修士号を取得し、デロイトアナリティクス、白ヤギコーポレーションにてデータサイエンスプロジェクト等を経験しました。先端IT人材の不足は2020年には約4.8万人との推計(経済産業省調査)されている日本の現状課題を解決するために、ビッグデータ、人工知能、機械学習をはじめとするデータサイエンスに関わる教育・研修を事業内容として、2017年に当社を設立しました。2020年にプロマーケット上場で、早期の社会的認知をめざしていますが、次の3点の課題を検討する必要があります。

①大学の人材育成では間に合わない空白のビジネスチャンス

 データサイエンティスト人材を育成することを目的として大学の新設学部が開設されていますが、最先端人材の育成を目指すはずの大学の行動は遅いのが確かです。当社のような活動によって日本の絶対的母集団不足の空白を埋めていただきたい。

②データサイエンティスト育成内容の質・量面における競争優位性の確保

 1コース70万円でも受講者が増加するだけの社会的ニーズが現在あります。今後競争優位を維持するためには、機能別業務知識を持ち、業界固有な慣習というビジネス感覚のあるデータサイエンティスト・オフィサーが不可欠です。BtoBによって経営基盤と信用力を確保し、BtoCによって絶対的母集団の不足を解消してください。

③民間運営の教育事業の優位を活用したスピード経営を

 大学・MBA・専門学校との競合が激しくなりますが、民間運営の強さは、受講生の中の最高の人材を即戦力として社内に取り込み、さらに人材紹介・派遣業など事業の複合化、アルムナイの自由設計が可能ということです。データサイエンスツールが次々と開発され、安価に利用できる時代がすぐきますので、現状の優位性を活かすスピード経営を期待します。


No.883 株式会社名城ナノカーボン(代表取締役 橋本 剛 氏)

 橋本氏は、三菱UFJ信託銀行、スリーサンズを経て、名古屋大学招へい教員兼務時に大学の研究成果である高導電性単層カーボンナノチューブ(SWNT)と出会い、名城大学発ベンチャーとして、2005年に当社を設立しました。2018年にトヨタ自動車のCVCスパークスアセットマネジメント等から約6億円の資金調達を完了し、次なる飛躍を目指し、CFO候補を募集していますが、次の3点を明確にする必要があります。

①素材を市場に出すには長期かつ多額の投下資金が必要

 新素材は、常に既存素材の代替品です。圧倒的な高品質の認知と既存素材(銅線等ワイヤケーブル)に代替できるリーズナブルな価格の低下がない限り、市場に多く出回ることはありません。長期かつ多額の投下資金が必要で、今回の資金調達では、自社製造によって市場認知を可能にする価格までコストダウンは困難です。

②製品の高導電性単層カーボンナノチューブの強い採用ニーズに対応

 SWNTは高導電・超軽量ですが高価です。現状では宇宙・航空用のケーブルに採用が検討されるまで来ました。今後増加する小型ジェット機や超小型衛星などの用途に強いニーズはあります。ここを突破口に、研究用途以外の市場を切り拓いていただきたい。

③製品及び製法特許を固めて業界トップとの事業連携・資本連携が可能か

 高導電・超軽量ケーブル用途で自動車関連に進出するには、業界内での圧倒的なコストダウンしかありません。自社製造での挑戦ではなく、製法特許を活用した業界トップの最適な外注先と事業連携・資本連携を進め、画期的な高結晶・高純度な製品を世に出す挑戦をしていただきたい。



No.884 ストーリーエム株式会社(代表取締役 李 晠範 氏)

 李氏は、StoryM(ストーリーエム)をプラットフォームとして、「家族のエンターテイメント×健康管理」を事業展開し、日本の産婦人科を基点とするBtoB(産婦人科医院)toC(家族)を成功させ、2023年にIPOを予定し、日本での成功モデルを背景に、人口急増の東南アジアにBtoCで進出しようと考えています。このモデルで飛躍的成長をするためには、次の3点を配慮する必要があります。 

①産婦人科の寡占化とサービスの充実に対応

 少子高齢化にともない産婦人科の廃院や統合で、寡占化が進んでいます。家族のエンターテイメントを、月分娩数20名以上の産婦人科を基点に、通院する妊婦のエコー診断をスタートにしました。診断映像をクラウドで共有する専用端末を無償貸与し、妊婦へセキュリティー専用カード(2000円/1枚)を活用して携帯端末で家族等クローズSNSシステムサービス提供がビジネスモデルの第一歩です。産婦人科と妊婦にとって有益なサービスです。

②出産後のユーザー数の拡大のためのコンテンツの重要性

 産婦人科と妊婦家族関係者にとって、エコー診断から入るのは、新たな生命を得た喜びを共有できるので可能ですが、出産以降のSNSユーザーの拡大は、クローズSNSサービスのコンテンツの充実に依存します。幼児や小児向けのサービスには、公的情報・健康状態チェック、子育ての相談等多くありますが競合会社が急激に多くなります。

③家族関係者の健康管理ビジネスでの事業展開の拡大と地域医療

 StoryMが、プラットフォーム事業に育つには、中核産婦人科医院を起点にした地域医療機関とのネットワークを同時に拡大し、妊婦家族関係者の健康管理と連携をし、かつ地域医療機関との情報共有まで行うことまでの展開が必要です。このためには地域コミュニティーのオピニオンリーダー的産婦人科を外さないようにしてください。

2018年7月2日インデペンデンツクラブ月例会 東京21cクラブにて