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「超小型センシングデバイスで安全な高速道路インフラを実現」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(写真右)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
株式会社イージステクノロジーズ
代表取締役社長 茅野 修平 氏(写真左)
1972年静岡県生まれ。東海大学第一高校出身。3年制専門学校卒業後、(株)アスキー出版入社、(株)インターネットイニシアティブ(IIJ)を経てIoT技術の世界へ。幅広い技術的素養を高めるも、祖父母の介護のためUターン、地元中堅物流会社からのオファーを受け入社後、社内ベンチャー設立を経て、2015年に(株)イージステクノロジーズを創業。

【株式会社イージステクノロジーズ】
設 立 :2015年1月
資本金 :86,000千円
本 社 :静岡県沼津市岡一色725-1沼津インキュベートセンター 研究エリアB6
事業内容:各種超小型センシングデバイスの設計開発ほか
URL :http://aegistec.tech/

<特別対談>これからのIPOスタイル

超小型センシングデバイスで安全な高速道路インフラを実現


■アスキーの西和彦氏、ビル・ゲイツ氏との出会い

小原:専門学校卒業後に就職した(株)アスキー出版はIT業界の先駆者的存在でした。社長の西和彦氏はビル・ゲイツとも親交があり、マイクロソフト社と代理店契約を結んでいましたね。
茅野:はい。その時流の中、若年層で試験的に組織された社内企画のWindows開発スタートアッププログラムを知り、これからの時代はICTだと感化されました。これがIoTの世界へ飛び込む契機となりました。その後、祖父母の介護もあり一度Uターンすることになりましたが、IT業界への強い思いから再び上京し、(株) インターネットイニシアティブ(IIJ)のグループ会社へ試験採用としてリスタート、新幹線通勤の生活を再開しました。しかし、祖父母の重介護状態を機に再び沼津へ帰郷、その介護を中心の条件にできる職場を探す中、地元の中堅物流会社からオファーを受け、転職を決めました。

小原:ITから全く違う業界への転職だったんですね。
茅野:当時(今現在も)の物流業界は、大型トラックへのデジタルタコグラフ(運行管理記録計)の取り付けが義務化されIT化が進んでいた中、その流れに後発的に入ろうとしていた同社からオファーが掛かったんです。結果、試験的導入から中期的な改善構想を立ち上げましたが、約2年で同社の過去事故率や車両燃費実績等で優良数値以上の成果を出せたことで、そのノウハウを利活用した運行管理の効率化や技術化を同業他社に提案できる社内ベンチャーの立ち上げまでも実現させました。その1年半後、独立して(株)イージステクノロジーズを創業しました。

■JAXAの開発基準を満たした『Logger One』

小原: 超小型で高性能なセンシングデバイス『Logger One』の開発に成功し、現在は交通インフラのリアルタイム監視等を目的とした提供を中心に事業を展開しています。
茅野: 『Logger One』は耐久性に優れており、位置情報や気圧、温度などのデータを、既存のハードウェアでは不可能な過酷な環境下でも正確に取得できるのが特徴です。

小原:JAXAの公開技術を用いているということは、模倣される可能性もありますよね。
茅野:コピーされることは問題視していません。データ活用のノウハウを持っているという部分が私たちの強みなので、一般民製品でのIoTデバイスとは比較にならないレベルのハードウェアで取得したデータを最大限に活用することにも強いアドバンテージを持っています。

小原:センシングデバイスを作っている会社の中でも、貴社のように据え付けからデータの取得、そしてフィードバックの部分まで一気通貫で行える会社は多くありません。
茅野:それができるのは大手メーカーくらいだと思いますが、トータルなパッケージングまでのロールアウト、その開発から製品化までのリードタイムを考えると、大手独特の流れでなく、技術力と事業構想力を兼ね備えたスピード感のあるベンチャーでないと、世界を視野に入れた市場に出せる機会を逸してしまいます。『Logger One』は一個あたり数万円程度から提供可能なため長い距離に大量に設置する必要のある道路等の交通インフラには最適で、この開発速度感とコストパフォーマンスの評価から、現在国内大手道路管理会社との間でテスト発注の話が進んでいます。

■世界市場への進出と出口戦略

茅野:今後は、全国の道路網へ展開していきます。JICAの施策としてODA対象国でのインフラ整備の遅れているインドやタイ、メキシコ等での基礎調査等を契機の一つとして、来年度以降は海外への展開も積極的に行っていきたいです。
小原:大手企業の参入があると思いますので、早急に事業基盤を確立する必要があります。また、海外展開のためにも大型の資金調達が必要だと思います。
茅野:今夏に運転資金数億円程度の調達を予定しつつ、IPOの直前には大型の資金調達の実現を目指しています。

茅野:海外での軍事技術への転用の可能性もあるため、M&Aも視野に入れています。
小原:M&Aを検討するなら、パワードスーツ『HAL』を開発しているCYBERDYNE (サイバーダイン)(株)の資本政策が参考になると思います。資金力のある大手企業に製造・販売を任せ、製品化の後にイグジットするというモデルも考えられます。CVCを利用した共同開発など、大企業とうまくコラボすることで事業拡大を目指してください。本日はありがとうございました。




※「THE INDEPENDENTS」2018年6月号 - p22-23より