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「企業再生の経験について」

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ITbook株式会社
代表取締役会長兼CEO 恩田 饒さん

1962年東京大学卒業後、大和証券入社、ロンドン支店ManagingDirector、取締役、常務取締役を歴任。1996年KOBE証券(現インヴァスト証券)代表取締役社長。2006年シーマ代表取締役社長。2009年ITbook(旧・デュオシステムズ)代表取締役社長。

設 立:1990年6月6日 資本金:8億8,009万円
所在地:東京都文京区大塚2-15-6 ニッセイ音羽ビル2階
事業内容:ITコンサルティング
http://www.itbook.co.jp/

1991年に大和証券から証券団体協議会の常任委員長に就任、一方で日経の大機小機などを執筆していました。1995年に大和総研の顧問になりましたが、証券会社を経営したいと丸起証券の社長になりました。後にKOBE証券(現インヴァスト証券)に社名変更し、ヘラクレス市場(現JASDAQ)へ上場しました。私は3つの新興市場に上場する社長を経験した珍しい経歴があります。

2006年にJASDAQの監理ポストに入っていたシーマの立て直しを依頼され、最初は社外監査役という話でしたが、結局はオーナーの三男が社長から会長に退く事になり、任期2年を条件に社長を引き受けました。シーマはブライダルジュエリーの販売会社で、社員500人のうち400人が女性です。私は毎月の店長会議で達成率100%以上の店長全員の順位、名前、そして達成率を全部暗記して表彰しました。社員の仕事環境をよくするために、オーナーに遠慮せずに経営しました。2年後には売上80億円が120億円へと5割アップし、利益は3億円から6億円へと倍増、監理ポストも解除されました。

2009年にデュオシステム(現ITbook)の社長を引き受けました。マザーズに上場していましたが、売上280百万円、赤字が230百万円と倒産直前で、オーナーが150百万円を増資に応じてくれました。私はまず、社長としての給料を前社長の1/3にし、1年目に売上倍増、2年目に黒字達成を目標にしました。社員の頑張りで、今年は売上12億円、利益は25百万円と開示に近い数字になる予定です。社長就任当時には、上場廃止基準に抵触していた株価も現在はその10倍になりました。昨年社長職を譲りましたが、オーナーからの依頼もあり会長兼CEOでいます。ITbookは官庁・自治体向けのIT上流コンサルを行っています。大手総研相手の競争は熾烈ですが、ある程度の成績を残しています。今後はITコンサル、システム開発、IT技術者派遣の3本柱にする経営方針です。昨年はシステム会社を買収し、現在は人材会社を探しています。

経営者として大切にしている事は、「戦略」、「社員のモチベーション」、「倫理観」です。社長という職を演じきる事、必ず出来るという強い信念も大切だと思っています。35年前の話ですが、京セラは本物そっくりのエメラルド人工宝石を開発しましたが、当時の稲盛社長は悪用されるのを恐れ裸石では売りませんでした。企業経営には倫理観が大切です。

私の大好きな言葉は「人間万事塞翁が馬」です。何が幸いするか分からないので、今を大切にしています。

※全文は「THE INDEPENDENTS」2013年5月号 - p12にてご覧いただけます