「日本のベンチャー輩出 20年」
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早稲田大学
商学博士 松田 修一 氏
1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。1973年監査法人サンワ事務所(現・トーマツ)入社、パートナー。1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ代表理事。
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■平成のバブル崩壊後のベンチャー支援動向
1993年に早稲田大学アントレプレヌール研究会(WERU)が日本初の産学官研究会として発足しました。1995年には中小企業創造法によって都道府県各地にベンチャー支援財団が設立されました。1997年には日本ベンチャー学会が創設され、大学でのベンチャー研究が本格化しました。今回300回を迎えるインデペンデンツクラブ「事業計画発表会」もこの時から始まり、ベンチャー支援の先駆けとなりました。1998年には大学等技術移転促進法によって大学の研究成果を特許化し企業へ技術転用する仕組みが誕生しました。同年には投資事業有限責任組合契約に関する法律により投資手法の自由化や投資家保護のルールが制定されました。
1999年にはマザーズ市場、2000年にはNSDAQJが開設し、起業して間もない企業や赤字企業でも上場できるようになり、2009年には東京AIM(現東京プロマーケット)が開設され、プロ投資家の育成に注力し始めました。同年には産業革新機構がオープンイノベーションにより次世代の国富を担う産業を育成・創出することを目的に官民ファンドとして設立されました。
2012年度には国から4大学へ研究成果ベンチャー投資資金が出資され大学VCの予算配分が確定し、同年には大学研究成果事業化事業(START)により事業プロモーターと大学等の研究者をつなぎ、研究開発と事業育成を支援する大学発新産業創出プログラム(START)の枠組みがスタートしました。また2014年にはNEDOで研究開発型新事業創出支援プラットフォームにより事業カタライザーの活用等の支援が本格化しました。
こうした支援をしながらも、日本からグローバルで存在感のあるベンチャー企業が中々でてこないのはなぜか。日本では世界的大企業に有能な人材が吸収され、会社を飛び出してでも起業する人が多く生まれない風土がありました。国内の人口減と高齢化社会の加速でグローバル化というのは避けて通れないものです。グローバルに通用する技術やビジネスモデルをどう日本のベンチャーのスタートアップや成長加速につなげるか、その牽引者を早期に育成するにはどうすべきかが一つの課題です。
■第4次技術ベンチャー総合支援
2012年の大学発新事業創出プログラム(START)、2014年から2016年までのグローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)が文部科学省や科学技術振興機構(JST)主導で進められました。2017年に引き継がれた次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)は、大学発ベンチャーの成功に必要な技術を理解し、高収益モデルを構想・運営できる社長を多く生み出すための大学を中心とした長期的な試みです。2014年に文科省・経産省による大学等発ベンチャー表彰制度が始まりました。2015年からは日本ベンチャー大賞(内閣総理大臣・経産省・農林省)が発足し、内閣府での授与式と「新事業創造カンファレンス&Connect!」(事務局JNB)での交流会が行われています。これは、ベンチャー起業家のロールモデルになるような、高い志を持った世界に通用するベンチャー企業を表彰することによって、挑戦する社会的風土の共有化を考えています。
経済産業省が大学発ベンチャーの調査を行ったところ、大企業とのWin-Win連携が成長のポイントだということが明確になり、2015年には、オープンイノベーション協議会(JOIC:事務局NEDO)が発足しました。大学発ベンチャーの多くがBtoBビジネスのため、成功にはオープンイノベーションの円滑な運営が肝になります。一方で大企業と対等な契約を結ぶためには知財法務を強くする必要があります。2017年には大企業とベンチャー企業が対等な契約を結ぶために研究開発型ベンチャーとのWin-Win連携ガイドラインが経済産業省で策定されました。
■大学起点の研究成果の事業化とグローバル人材育成
私はずっと大学自身による大学発ベンチャーへのエクイティ投資の必要性を提言しています。大学の自律のためには、研究開発成果を財務基盤の強化に結びつけることが必要です。大学がエクイティ投資を行っても大学発ベンチャーのIPOやM&Aによってキャピタルゲインを得ることが可能な成功モデルが出始めました。とっくにアメリカや中国は取り組んでいます。大学の改革を含めたベンチャー支援全体が上手く機能しないと、特にテクノロジー系ベンチャーは育ちません。ICT系のアイディア系企業には資金が集まる一方、懐妊期間の長いテクノロジー系企業にはまだ資金が足りないと感じます。ビジネスデベロップメント能力があり技術に詳しい人、研究開発者をマネジメントしながら事業を立ち上げた人、こういう人が必要になってきます。そしてこの担い手が今の日本に欠けています。大学発ベンチャーは数多く生まれ、現在日本では累積2000社を超えました。目に見えて突出したベンチャーは次々とは生まれません。1年に1~2社くらいですが、これが10社単位で出てくるようになるとやっと世界で日本も戦えると思います。大学発ベンチャーの創業が簇業(原野に草木が生い茂るような創業)情況になるように、大学技術・人材・市場・資金をシームレスに統合したエコシステムが求められています。変革できない大企業も力が衰え始め統合される産業構造の変革が今始まっています。経済イノベーションのエンジンに研究開発型ベンチャーがなることへの期待が高まっています。本日はありがとうございました。300回のご支援に今後ともお応えできるよう努力します。
2018年2月16日京都インデペンデンツクラブ 京都リサーチパークにて