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「2017年IPO賞 講演」

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【稲葉 雄一 略歴】
1968年東京都台東区出身。SP会社、ITベンチャーを経て、電通グループでインタラクティブ コミュニケーション領域、クロスプロモーション領域で多くのクライアント業務を担当。電通社内の統合プロモーション領域におけるプランニングMVPを多数受賞。2006年当社創立、現在に至る。

【ナレッジスイート㈱ 概要】
設 立:2006年10月23日
所在地:東京都港区海岸3-9-15
事業内容:SFAやCRM等の営業支援システム開発・販売


<講演レポート>

ナレッジスイート(株) 稲葉 雄一 氏


■ 事業概要

 インデペンデンツクラブとは7~8年くらい前からの付き合いになります。業績の赤字が続きましたが、昨年無事に上場できました。起業してから上場するまでの間、どういったことに注意してきたかをお話します。

 当社が行っているクラウドサービスは、企業内に眠るビックデータを可視化させ、生涯その企業において、知識の変化に対応した脳の記憶補助を実現できるSaaSへと進化させることを使命に、クラウド型ビジネスアプリケーションの開発を行っています。簡単に言えば「人間の持つ知識や経験を集約させ、その知識を可視化・共有させる」ということです。これは社名の由来でもあります。

 サービスとしては、ユーザー数無制限で利用できるSFAやCRM、グループウェアが全て機能連動したサービス「Knowledge Suite」。地図上に顧客情報を可視化させるエンゲージメントマップ「GEOCRM」などがあります。ナレッジスイートは、中小企業を中心とした働き方改革を推進するクラウドサービスを提供しております。

■資金調達の苦労

 ストックビジネスは、どうしても細かいお金を積み上げていくため時間がかかります。経営で一番気を使ったことは、バリエーションを下げることなく、損益分岐点を越える為の資金調達に集中していました。そして営業活動における最大の施策は問い合わせを増やす為のSEOに力を注ぎました。常に自分が資本提携、業務提携したいと思う会社の決算情報を全部見ました。そしてその中に書いてある会社の戦略を全部コピーし、会社のSEOの対策の中に埋めていきました。これは会社の成長に非常にプラスになったと思います。

 また、事業計画の遅れにより資金が枯渇して厳しいときにダウンラウンドのファイナンスを行ったともありました。一年くらいのキャッシュポジションを維持するよう、常に意識していました。最終的には自己資本率73%、経常利益率19%で上場することが出来ました。「決算書は経営者しか描くことができないクリエーティブデザイン」と考えております。今後も中小企業の働き方改革の一端を担うクラウドサービス開発と営業活動の効果化に追求していきたいと考えています。

■上場のメリット

 最後に、上場時にどんなメリットがあったのかを話します。上場したのは12月18日なので、まだ2~3週間しか経っていませんが、それでも変化はありました。一番は銀行との付き合いが一気に変わったことです。銀行から数千万円、あるいは数億円を借りる場合、通常であれば過去の決算書を見せてほしいなどと言われ、時間を要しますが、それがなくなり、資金調達するまでの時間や金利優遇などメリットある話や判断が増えました。今まででは考えられないスケールの話をたくさん提案いただき、これが上場によるメリットなのだと思いました。

■今後の展開

 日本の中小企業のうち、当社の取引実績はまだ4700社強のため、日本の企業数の0.1%にも満たない社数であり、成長余力はまだまだ大きいです。毎月平均で500社の企業様からの問い合わせをいただいています。成長を止めることなくチャレンジを続けていきたいと思っております。

※「THE INDEPENDENTS」2018年2月号 - p15より