「どんな環境でも自由に会話できるコミュニケーションデバイス『BONX Grip』」
公開
<話し手>
㈱BONX CTO兼COO 楢崎 雄太 さん(左)
麻布高校出身。東京大学工学部システム創成学科、同大学院学際情報学府卒。(株)ボストン・コンサルティング・グループを経て、2015年に(株)BONXのCTO兼COOに就任。大学では立体音響、AR/MR、音声処理などの研究に従事。ボストン・コンサルティング・グループでは主に日本の大手製造業をクライアントとして、3年間にわたりR&D、SCM、販売戦略構築、中期戦略立案など多様なプロジェクトに参画。
<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋さん(右)
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。
鮫島正洋の知財インタビュー
「どんな環境でも自由に会話できるコミュニケーションデバイス『BONX Grip』」
■革新的なグループ通話システム
鮫島:『BONX Grip』はアウトドアアクティビティ向けのコミュニケーションデバイスですね。
楢崎:CEOの宮坂が、ウェアラブルカメラ「GoPro」に影響をうけ、スノーボードをしているときに思いついたアイディアを実現化したものです。Bluetooth内蔵のウエアラブルデバイスを片耳にセットし、スマートフォンでBONX独自のグループ通話アプリを起動させることで、簡単な操作と低消費電力で、距離・天候・高速移動中など過酷な環境でも仲間がまるで隣にいるかのようなコミュニケーションが可能になります。トランシーバーのようにチャネルを合わせると最大10人まで同時通話が可能で、インターネット通信のため通話距離は無制限です。鮫島:2014年にNEDOのスタートアップイノベーター(SUI)支援事業に採択されたときに初めてお会いしました。当時の『BONX』から機能はバージョンアップしているのでしょうか。
楢崎:その節はいろいろとご相談に乗っていただきありがとうございました。SUI終了と同時期にクラウドファンディングサイトに『BONX』を出品しました。資金調達は成功しましたが、課題も明確になりました。そこで金型から全部作り直して装着性を向上させ、通信安定性などプログラム面をも改善しました。2016年12月に正式販売モデルである『BONX Grip』をリリースし、2017年7月より北米市場での製品販売も開始しました。■BtoCからBtoBへ事業領域を拡大
楢崎:最近、従来のトランシーバーに対する使い勝手の不満から、建築土木現場やレストランなど様々な業界からお問合せをうけています。そこで、法人向けサービスを新たに展開することにしました。鮫島:ビジネス向けチャットSlackなどのテキストベースのコミュニケーションツールと比較すると音声コミュニケーションは即時性がありますのでビジネス向けには使いやすいと思います。
鮫島:ハードウェア販売のコンシューマ向けビジネスモデルに対してBtoB向けはソフトウェアを核とするビジネスモデルに変更すると良いと思います。
楢崎:ビジネス向けではソフトウェアの月額課金モデルに変更します。また、初期費用を安くするために、ハードウェアは当社製品以外でも利用できるようにします。同時通話人数を30人までサポートするなど機能も拡充します。■今後の事業展開
楢崎:現在競合製品は見当たりませんが、将来の類似品に対抗するために、商標、意匠、システム特許を取得しました。鮫島:類似品は市場の認知度を高めてくれるので絶対悪ではありません。むしろ類似品が少しくらい出たほうがいいのです。BtoBで収益を上げていくのであれば、ビジネスモデル特許を1つくらい取っておいてもよいかもしれません。
楢崎:創業以來、コツコツと積み上げてきた職人技の音声信号処理におけるパラメーター調整が当社の技術の核だと思っています。そこはあえてブラックボックスにしておくつもりです。鮫島:慶應義塾大学系のVCなどからシリーズAラウンドで2億円の資金調達を行いましたが、今後の事業計画を教えてください。
楢崎:POC(Proof Of Concept/概念実証)は確認できたので量販店などを通じ本格販売していきます。同時にBtoBや海外展開のためにシリーズBの資金調達を来秋に計画しています。鮫島:将来はスマホ経由でなくBONX本体で通信できると良いですね。軽量化や電池の問題はオープンイノベーションを上手く活用して解決できるでしょう。ただ大企業と開発契約締結には知財法務的な観点も重要ですのでお気軽に相談ください。本日はありがとうございました。
―「THE INDEPENDENTS」2017年12月号 P22-23より