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「「エアコンのリユースという新しい市場を創出する」」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(写真右)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
元気でんき株式会社
代表取締役 河口 エレキテル 氏(写真左)
1973年5月生まれ。1991年愛知県立東山工業高等学校電気科卒業。2001年7月河口電機創業。2002年10月当社設立、代表取締役就任。2010年11月人生理念「等身大で生きる」を決め社名と代表者名を変更。

【元気でんき株式会社】
設 立 :2002年10月1日
資本金 :10,000千円
本 社 :愛知県名古屋市中川区太平通2-9
事業内容:中古エアコン買取販売、電気設備保守点検、省エネコンサル
URL :http://www.genki-denki.co.jp///

<特別対談>これからのIPOスタイル

「エアコンのリユースという新しい市場を創出する」


■中古エアコン買取・販売実績業界No.1

小原:中古エアコン専門サービス『エアコン買取王』『エアコン販売王』はありそうでなかったサービスですね。
河口:2014年より中古エアコン買取・販売事業をスタートしました。買取専門サイト「エアコン買取王」で全国から不要となった家庭用・業務用エアコンを買取り、自社リユース工場で分解洗浄・30項目に及ぶ点検・整備を行い、販売専門サイト「エアコン販売王」で全国に販売するビジネスモデルです。常時3,000台以上の在庫を保有しており、リユースエアコンでは業界初の3年保証を実現しています。

小原:電気の専門家として東海エリアを中心に空調、電気設備工事業からスタートしました。
河口:2009年より電気トラブル駆け付けサービス『元気でんき119』を開始したのですが、壊れたエアコンの修理に伺うなかで、お客様より「中古のエアコンないの?」とたびたび言われるようになりました。そこで、業務用エアコン修理を数多く手がけて蓄積した知識と技術力を以て、中古エアコンの買取・販売をはじめました。当初は、名古屋に限定して店頭販売をしていましたがクレームの嵐でした。2年たってようやく全国で販売する自信がつきネット販売を開始しました。

小原:様々な家電が中古でも多く流通される中、エアコンの修理・整備は難易度が高いですね。
河口:エアコン市場は約1兆円と言われていますが、リユースエアコンの利用者はまだ少ないので開拓余地は大きいと考えています。エアコンは、取付時と取り外し時の2回しか触りませんので外装はきれいなままで、洗浄すると新品に負けない品質になりお客様にも喜んでご購入いただいています。今後は、WEBを活用した効果的な宣伝や、5年以内から12年以内の年式の古いエアコンまで買取対象を広げていくこと、安定した買取が見込める大口法人顧客を開拓することで売上拡大を目指します。

■中学から高校までの6年間電気屋でアルバイト

小原:代表者名を「エレキテル」に改名するほど電気がお好きなのですね。
河口:物心ついたときからラジコンカーが大好きな少年でした。中学に入学すると、電気好きが高じて近所の家電屋さんで家電品の販売やエアコンやTVアンテナの取り付け工事のアルバイトをはじめました。社長には実の息子のように可愛がっていただき、自分も社長のような格好いい大人になりたいと思うようになりました。

小原:創業のきっかけは勤務先の倒産でした。
河口:3社の電気工事会社で働きましたが、最後に勤めた会社の社長が夜逃げしてしまいました。取引先に頭を下げにまわっていた時に「事業を続けたいのなら口座を開いてあげる」と言ってくれる先が何社か出てきました。「自分の頑張りを見てくれている人がいた」ことが後押しになって28歳で個人事業主として創業しました。

■世界一のリユースエアコンメーカーを目指す

河口:実はコールセンターにかかってくる案件の約7割は年式が古いため買取をお断りしていました。一方で、当社は業務用エアコンの修理・買取サイトも運営しているので、古いエアコンの修理をする人からの問合せが多くあります。そこで、古いエアコンから取り出した部品を安価なリユース部品として販売することを開始しました。
小原:中古エアコンを日本一買い取っている貴社だからこその発想ですね。新品部品でのメーカー修理は高額ですので、メーカー修理価格の半分以下で提供できるリユース部品は競争力があると思います。

小原:事業拡大に伴い、工場増設や人材採用、買取費用のための資金調達が必要になってきます。
河口:5年後に売上40億円、経常利益4億円でIPOを目指しています。いままでは金融機関からの借り入れのみでしたが、上場を見据えた資金調達を検討していこうと思います。
小原:330坪の自社リユース工場では月間1000台しか対応できないので、現在の事業計画ではすぐに限界がきます。1000坪の工場があれば信用力もかなりでてきます。早急に計画を見直してみてください。

河口:今年の11月より住まいを東京に移し、事業スピードを加速させます。会社を安定成長させるにはストックビジネスも必要と考えており、今後は中古エアコンのレンタル・リースもおこなっていきます。また、海外顧客の開拓も積極的に進めていきます。「エアコンを買うにあたって元気でんきに依頼しない理由はない」という存在になりたいと考えています。
小原:抱負な在庫と高い技術力を武器に、中古エアコンのリユース市場・リユース部品市場をどんどん切り拓いていってください。本日はありがとうございました。


<対談を終えて>

小原:近年、IOTやAIなどのベンチャー企業は数々生まれて上場もしますが「実業」「現場」が収益に源泉となるビジネスは、急激な成長を遂げるのは難しいものです。特に人材・人員を集めることが困難であったり、事業規模に比し工場用地や設備投資に多額の資金を必要とするからです。今後、徹底的に事業計画を練り経営のリソースを整えて下さい。既にその準備を始めているとこと、社長の熱い想いがあれば、上場も十分に可能だと思います。

河口:小原専務との対談を通じて、この事業に対する情熱となぜこの事業を選択したかの経緯をしっかりお伝えする事の重要性を教えて頂けました。そして、資金調達先が自己資金と金融機関のみの事業計画と、仮に10億円の投資資金が調達出来た場合の2つの事業計画を描く事の重要性を教えて頂き確実に事業を大きくする事はもちろん、よりスピード感を出す財務戦略を教えて頂き大変勉強になりました。今後の事業戦略に活かしていきたいと思います。

※「THE INDEPENDENTS」2017年12月号 - p20-21より