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「AIが全ての人にとって優しいパートナーになる社会を目指す」

公開

<話し手>
㈱デジタルアテンダント 代表取締役 金子 和夫さん(左)
1956年生まれ。慶應義塾高等学校出身。1980年3月慶應義塾大学商学部卒業。東芝のIT部門でセールスマーケティング及びシステム化推進を担当。欧米・アジア担当部長、オーストラリア駐在、韓国現地法人社長、グループ全社中国室長、東芝エージェンシー(株)代表取締役社長を歴任。2014年7月、(株)デジタルアテンダントを設立、代表取締役に就任。

<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋さん(中央)
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。

鮫島正洋の知財インタビュー

「AIが全ての人にとって優しいパートナーになる社会を目指す」


<2018.7.4. (株)デジタルアテンダントが株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO(ファンディーノ)」で49,980千円の資金調達に成功しました>

■誰でも自由に使えるAIサービス

金子:東芝ではノートパソコン(ダイナブック)立ち上げ期から営業側コアメンバーの一人として手軽に利用できるIT機器の拡販に頑張ってきました。IT業界に身を置くなかで、高齢化とITの進行によって拡大していくデジタル・デバイドを解消したいという思いが強くなり、IT的弱者を含む誰もが自由に使いこなせるAI システムを提供するため起業しました。当社の「デジタルアテンダント」は、スマートフォンなどの既存の携帯端末上に起動されたアバターを会話ロボット化するシステムです。

鮫島:現在開発しているコアエンジンは、音声認識、対話制御、音声合成を融合させる機能持っているのですね。

金子:はい、従来のAIロジックは事前設定された対話が元になっており、あくまでも音声はキーボード入力の代わりとして使う段階にとどまっています。当社のエンジンは、ユーザーとの自然対話と情景認識を組み合わせた自己学習型エンジンです。

鮫島:京都大学の学会屈指の若手教授や、東京大学、奈良先端科学技術大学等の第一線のAI研究者と産学連携体制を固めていますね。

金子:我々は大学との共同特許を実用化していく方針をとっています。現在、商品レコメンデーションのシステム開発を花卉会社と共同で進めており、年内に実店舗での運用を開始する予定です。


■ ソフトウェアベンチャーの知財戦略

鮫島:特にソフトウェア分野において、特許の侵害検出性は重要です。第三者の侵害事実を検出できなければ、いくら特許をとっても意味がありません。侵害検出性がある形に特許明細書を書き換えるなど、出願前のブラッシュアップも必要です。ソフトウェアのアルゴリズムなどは、一般には侵害検出性がなく、原則として特許を取らないことによってノウハウの流失を防ぐことになります。ただ、プラットフォーム化してライセンスビジネスを展開するなどのビジネスモデルの場合、著作権だけでは足りないので、あえて特許出願に踏み切るという戦術もあり得ると思います。


金子:資金調達の検討の際、VCから特許取得についてよく聞かれます。

鮫島:大企業のように予算があればいくらでも特許は出せますが、ベンチャーはそうはいきません。大企業の特許50件分を1件の特許明細書で表現することが理想です。これを実現するためには、発明発掘のセンスも必要です。我々は、発明発掘や特許明細書のブラッシュアップを通じて、特許が顧客の事業競争力に貢献していけるようにアドバイスをしています。


金子:現在、音声対話に画像処理・認識を融合させたシステムを大学と共同研究しています。これにより、さまざまな「作業」へのマルチモーダルシステム適用を目指します。

鮫島:今後は、個々の用途にかかるエンジン毎に特許戦略を考えていく必要があると思います。銀座マロニエゲートのモンソーフルール(パリ発祥の花店)で展開する商品レコメンデーションシステムのエンジンに磨きがかかったタイミングが、次の発明の発掘のタイミングです。


金子:2025年には団塊の世代が後期高齢者になり、人口減少と相まって高齢化社会がピークを迎えるとされています。介護労働力不足を補うため、AIは重要な役割を果たすと思われることから、介護業界において「日々の生活の見守り機能」や「話し相手の提供」などのサービス展開を計画しています。

鮫島:介護は特許ネタがいろいろと出てきそうですが、全部取る必要はありません。重要な技術について特許を2つくらい取っておけば、コンペティターはその重要技術を使えなくなります。ベンチャーには選択と集中が必要です。今後、新しいコアエンジンを開発した際はお手伝いさせていただきます。本日はありがとうございました。


―「THE INDEPENDENTS」2017年8月号 P24-25より

株式会社デジタルアテンダント

住所
東京都港区南青山1-15-18 リーラ乃木坂1001
代表者
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従業員数
事業内容
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