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「高齢化日本」

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國學院大学
教授 秦 信行 氏

野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。
1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。
1994年國學院大学に移り、現在同大学教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。
日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。
早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)

2017年8月25日 静岡インデペンデンツクラブ登壇

ベンチャーコミュニティを巡って


 日本の人口は、昨年2016年10月1日現在1億2693万人、6年連続して減少した。ピークの2008年が1億2808万人だったので、そこから見ると115万人減少したことになる。
 その最大の要因は少子化にある。2016年の年間出生数は97万6979人と100万人を下回った。対して団塊の世代の筆者が生まれた1949年(昭和24年)の年間出生数は269万6638人、これでは人口が減るわけである。
 同時に、団塊の世代の多くはまだ元気であり、その結果日本の人口の高齢化も急速に進んでいる。ちなみに、国連の2015年時点の調査で各国の平均年齢を見ると、日本が世界で最も高齢で46.5歳となっている。高齢化はその国の経済活力を蝕むことになる。
 こうした人口における高齢化も深刻だが、日本の企業の高齢化も問題といえよう。
 ある国の上場会社の時価総額ランキング上位の企業はその国を代表する企業と言えると思うが、日本の時価総額トップ10企業(7月14日現在)を見ると、トヨタを筆頭にNTT、三菱UFJが次に来る。その中で起業家によって創業された比較的若い企業となると、5位のソフトバンク(1981年創業)と10位のキーエンス(1974年創業)の2社のみ。
一方米国を見ると、トップ10(7月15日現在)では1位アップル(1976年創業)、2位マイクロソフト(1975年創業)、3位アマゾン(1994年創業)と続き、5位にフェイスブック(2004年創業)、8位にグーグル(1998年創業)が入る。しかも8位のグーグルでも時価総額は約30兆円(1ドル=100円換算)であり、ソフトバンクの時価総額約10兆円、キーエンスの約6兆円を大きく上回っている。
 単純に若ければいいというものでもないが、常識的に考えれば、若い企業ほど成長ポテンシャルは高いと思われる。そうであるなら日本の現状は問題だと言わざるを得ない。
 人口のみならず日本の企業年齢も高そうな原因については、開業率の低さに現れているように新しい企業が生まれにくい国であることが大きな原因といえる。また、新しい企業が時価総額ランキングの上位に出てこないことについては、米国企業と違ってグローバル市場を創業当初から目指している企業がほとんどないことも一因と考えられる。
 また新規上場会社を見ると日本の場合かなり小粒であることが分かる。ちなみに、EY Japanの調査によると2016年の新規上場企業83社の内、初値による時価総額が50億円未満である新規上場企業は20社で23%、50~100億円が35社で41%と新規上場会社の60%以上は時価総額100億円に満たない小さな企業となっている。
 こうした状況をどう考えるか。一つの見方は、日本の起業家もVCも上場を急ぎすぎているのではないかというもの。早い段階の上場で多くの株主に監視される結果、自由な経営が制約され事業の成長ポテンシャルを十分に開花させることが出来ないのではないか。この見方は世界でユニコーンが数多く出てきている現状を見ると頷けないわけではない。日本の企業の高齢化を是正するためには、様々な要因を深く掘り下げてみる必要があるようだ。


※「THE INDEPENDENTS」2017年8月号 掲載