「採血不要の血液検査で健康管理を大きく変える」
=$DATE?> 公開
【飯永 一也 略歴】
1973年7月21日生まれ。兵庫県立飾磨工業高校出身。大阪工業大学卒業後、製薬企業に入社。技術サービス、学術、MRに従事。北海道大学研究員を経て、2015年2月メディカルフォトニクス株式会社設立、代表取締役就任。
【メディカルフォトニクス㈱ 概要】
設 立:2015年2月18日
資本金:34,500千円
主要株主:経営陣、VC他
所在地:北海道札幌市北区北21条西12丁目2-310
事業内容:非侵襲脂質計測器の開発
<起業家インタビュー>
メディカルフォトニクス(株) 飯永 一也 氏
「採血不要の血液検査で健康管理を大きく変える」
非侵襲脂質計測器を開発した北海道大学発ベンチャー
採血しない血液検査で新たな健康管理指標の提供を目指す起業家
■ もともとは血液等を検査する診断薬メーカーに勤めていました。
前職での業務を通じて、北海道大学大学院情報科学研究科の清水孝一教授と出会い、清水教授の研究テーマの一つである「光を用いた静脈認証」に強い興味を持ちました。この技術を使えば、注射針を身体に刺すことなく簡単に血液検査ができるようになり健康促進に繋がるのではと思い、清水教授の研究成果を事業化すべく起業しました。■ 採血せずにどうやって血中の脂質を計測するのですか。
人体に無害な近赤外光を照射し、体内を透過して出てきた光を分析します。光源はLEDを使用しています。血清中の特定物質の散乱シグナルを分離計測することで、採血することなく血中脂質を計測できます。腕・胸部・腹部など計測部位にこだわりません。注射のように痛みを伴わないので、リラックスして検査を受けられることがメリットです。収集したデータはパソコンやスマートフォンに転送ができます。■ 食後高脂血症を計測ターゲットにしています。
食後高脂血症とは、食後一時的に血液中の中性脂肪が上昇する症状です。これを放置すると健康な人に比べ心筋梗塞などの心臓病になる危険性が非常に高まるのですが、空腹時の採血では異常が見つからず見逃しが多いのが現状です。心筋梗塞は日本人の死因の2位を占め、年間約19万人が亡くなっています。手軽な測定手段を提供することで、病気の早期発見や予防につながればと思っています。■ 同様の原理で医療用に使われているものはありますか。
弊社の装置の原理と類似しているものは、光をあてて動静脈の酸素飽和度を計測するパルスオキシメーターがありますが、非侵襲で脂質をモニタリングできる技術は当社にしかありません。■ まずは研究者向けに試験研究用として提供していきます。
医療機器として大学や企業の研究者向けにレンタルしていきます。2020年を目処に医療機関向けのレンタルも開始します。一般コンシューマー向けは、大手企業とのアライアンスを組んでライセンス販売を計画しています。■ アライアンスはどのように進めていくのですか。
健康管理サービスを検討しているウェアラブルデバイスの開発企業やスマホアプリ開発企業へのライセンス供与を進めていきます。将来的には、そこで蓄積したデータを活かしたクラウドサービスを展開していきます。また、血圧計やCGM(持続血糖測定器)などの既存製品にバンドルしていくことも検討しています。■ 今年の5月にVCから出資を受けました。
年度内にJSTからの出資を予定していますが、できれば追加で1.5億円~2億円ほどの資金調達を検討しています。 調達資金は、計測器の製造費用や社員増員のための人件費等に充当予定です。■ 本日はどうもありがとうございました。最後に今後の事業展開について教えてください。
来年の冬を目処に医療機器の承認を取得します。2021年には保険収載を目指し、将来的には家庭でのメタボ検診など日常的な健康管理での利用を目標にしています。血中脂質モニタリングシステムを通じて、人々の健康促進に貢献していきたいです。※「THE INDEPENDENTS」2017年8月号 - p4-5より