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「『細胞』が世界を大きく変える時代が来る」

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【牧田 直大 略歴】
1993年8月11日生まれ。京都大学工学研究科所属。在学中に、マイオリッジの技術顧問である京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)の南一成氏の研究室にてiPS細胞の研究支援を行う。2016年3月に京都大学を卒業後、取締役CTOである末田伸一氏(京都大学iPS細胞研究所所属)と共に、南氏の研究成果を創薬支援や新薬開発に役立てるべく、同年8月に株式会社マイオリッジを設立。

【㈱マイオリッジ 概要】
設 立:2016年8月10日
資本金:65,300千円
主要株主:経営陣、BeyondNextVentures 他
所在地:京都府京都市左京区下鴨森本町15番地
事業内容:iPS細胞由来心筋細胞を利用した創薬支援ツールの開発


<起業家インタビュー>

(株)マイオリッジ 牧田 直大 氏

「『細胞』が世界を大きく変える時代が来る」


iPS細胞由来心筋細胞の製品化を目指す京都大学発ベンチャー
創薬研究の加速に貢献することを目指す起業家

■ 元京都大学物質ー細胞統合システム拠点の南一成博士(現 大阪大学医学部)の研究成果を事業化しました。

iPS細胞の実用化にあたっては、世界の死因の第一位を心疾患が占めること、新薬の開発過程で心毒性により頓挫する候補物質が多いことから、心筋が最も有望視されていますが、生産コストの高さとロット安定性の低さから、実用化へは至っていません。南先生は、この問題を解決するために、低コストでの心筋細胞の作製に成功しました。

■ 貴社のiPS細胞由来心筋細胞の特徴を教えてください。

高額なタンパク質を使わず、低分子化合物を組み合わせた培養液を使用するため、製造コストが低くロット間均一性に優れ、かつヒトの成熟心筋細胞に近い性質を持っています。また、独自の細胞凍結技術により長期保存性に優れているという特徴もあります。

■ 創薬分野での応用が期待されていますね。

医薬品開発においては膨大な時間とコストを要することが、従来からの課題とされてきました。当社のiPS細胞由来心筋細胞を医薬品開発のプロセスに組み込むと、心毒性(心臓への副作用)を含む副作用評価、早期での人間の細胞を使った試験が可能となり、創薬期間の短縮になるだけでなく、膨大なコスト削減にも貢献できます。

■ 特許は京都大学が保有しています。

京都大学で発明した低コストでの心筋細胞の作製方法に関しては、京都大学が特許知財を保有していますが、今後自社で発明した技術に関しては自社で特許を取得していきます。

■ 基本的な製造技術はできあがっているので、量産化が進めば黒字化も見えてきますね。

本格的な生産を開始するため人材採用を行っていきます。また、拡販を図るためのディーラーの開拓も計画しています。

■ 今後の資本政策について教えてください。

2017年4月にBeyond Next Ventures(株)が運営するファンド等から総額1億2500万円を調達し、この資金で心筋細胞の商用生産設備を整えました。2年後には大型の追加投資を予定しています。

■ NEDOの起業家候補((SUI:スタートアップイノベーター)支援事業に採択されました。

SUIは新事業に挑戦する研究開発型ベンチャーを対象にしています。SUIに採択されたことで、事業の立ち上げスピードが早まりましたし、VCからの出資にも繋がったと思います。

■ 大学の専攻は土木でした。異色の経歴ですね。

南先生から培養液を替えるアルバイトに誘われたのがきっかけです。もともとは起業するつもりはありませんでしたが、アルバイトを通じて南先生の研究に対する熱意にふれ、この研究が世に出ればiPS細胞が大いに世の中の人の役に立つと思うようになりました。画像解析ソフトを作っていたので、その知識も活かせると思い、南先生から社長にならないかと打診された際には即決しました。実は、その1週間後に国土交通省の試験を受ける予定でした。

■ 本日はどうもありがとうございました。最後にこれからの事業展開について教えてください。

独自に開発したその心筋細胞を新たな創薬ツールに加工し、大学研究室や製薬企業に代表されるユーザーの皆様へ、細胞生存率の高い新規の凍結保存法を用いて安定供給することを事業目標としています。

※「THE INDEPENDENTS」2017年7月号 - p4-5より