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「(株)タケックス・ラボ、(株)オンリーストーリー、(株)ディジット」

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早稲田大学
商学博士 松田 修一 氏

1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。
1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。
1973年監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所、パートナー。
1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。2012年3月教授を退官。ウエルインベストメント㈱取締役会長
特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ代表理事

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ベンチャーの成長は、起業家+技術+市場がマッチし、時代の流れの風を受けることが重要です。しかし、風はいつ逆風になるかわからず、また市場での競合が出現します。3社は風の流れを受け、成長のスタートに立っています。各社につきコメントします。

No.753 株式会社タケックス・ラボ(代表取締役 岡田 久幸 氏)

岡田社長は、30年以上にわたる竹の活用に関する研究を長期間続け、過去危機的挫折を2回味わいながら、地方創生・地域の雇用をという日本の政策と研究成果が実りました。家業「蜂の巣工房」から分離独立し、会社の設立は2002年2月でしたが、現在熊本県で、竹の集荷・原料加工事業、竹原料のバイオマス事業、竹原料の建材事業の3つ、総額45億円の事業を国・県・NEDO、民間からの資金を集め、稼働直前に来ています。さらに、竹から抽出した食品添加としてハラル事業をマレーシアで展開しています。多くの知財やノウハウをベースにグループホールディング会社の設立も構想しています。岡田さんの想いと多くの方々の協力を得て構築しつつある事業構想を、揺るぎないものとするために、次の3点の課題を解決する必要があります。

①モノづくり施設の高稼働を維持する主要顧客の開拓

竹活用モノづくりバリューチェーンの確立は評価できますが、高稼働を維持する顧客や市場の飽くなき開拓には、品質×価格×安定供給が不可欠です。

②熊本地域から広域拡大のための徹底した生産性の向上

竹という地域密着素材を横展開するにあたり、国や自治体の協力資金が半減しても採算が取れることが重要です。装置工業の徹底した生産性向上は、これからです。

③これらの事業構想を確実にする専門人材の確保

上記2点を含め、竹エキスの特性を生かしたハラル事業(マレーシア)やホールディング社設立など、構想が留まりません。最も不足しているのは、全体構想の下に事業を運営する人材です。社長の手足(4人)くらいの専門人材の確保と彼らを束ねる力が不可欠です。


No.754 株式会社オンリーストーリー(代表取締役 平野 哲也 氏)

中小企業経営者の身近に育った平野氏は、学生時代から店頭実演販売士として2年間活動し、ベンチャーのインターンで事業(学生向けフリーマガジンを創刊し黒字化)の立ち上げを経験しました。中小ベンチャー企業が製品やサービスの開発を得意とするが、どのように売るかについては一人で悩んでいる社長の姿を見て、大学卒業後即社長支援事業として、2014年に当社を設立し、社長専門のプラットフォーム〜ONLY STORYサイトを開設し、顧客を500社に伸ばしています。事業プロセスは、「社長インタビュー→Web記事掲載→顧客サイト→記事修正可能→社長によるインタビュー社長の紹介」を無料で行っています。ユニークなビジネスモデルで、平均20・30人の従業員の社長の心をつかんでおり、会社のチラシ配布の有料化が収益ですが、中小企業の営業力不足の支援という風を受けて、さらなる成長をするには、次の3点の課題解決が重要です。

①事業の原点であるインタビューと記事掲載の質・量の充実

若いのにそこまでやってくれるのかという驚きが信頼につながっていることを考えると、社長との最初の接点となるインタビュアーのクールさと思いが重要になります。極めて独人的な若い人材を多く採用し、育てるかが事業の原点です。

②社長の信頼を勝ち得る交流サイトの充実と営業支援

直接取材に基づく社長のリアルな声を聴き、通常他社が手に入れにくいデータを収益モデルに結びつけるには、チラシ配布以上のネットワーク支援による営業支援が不可欠です。営業支援型交流サイトには巨人がいます。さらに特化して勝ち残る智慧を出しましょう。

③会社の組織的運営体制

会社の成長には若さが不可欠であり、第フェーズまでのサービス向上を目指し、労働集約からの脱皮を目指していますが、専門ベテランの力も借りた一体的な組織運営体制を構築することが必要です。


No.755 株式会社ディジット(代表取締役 三浦 才幸 氏)

ディジットは、ストレスチェックを含む働き方改革を含む風を受けて、3社の社長によって、2014年に設立された会社です。総務・人事・法務等経営全般を多くの組織で経験し、組 織行動診断のメソッドを元に、研修や人事制度企画、組織活性 化等に実績を持つ㈱組織経済研究所の代表取締役三浦氏が社長です。IPOの経験もあるデータ処理や解析を活かして人事・組織運営の可視化事業のアルゴノーツの代表取締役井筒が会長、CTOやCIOの経験を活かしたアドヴァンストソリューションズ㈱の代表取締役田中氏が、技術開発担当と役割り分担をしています。会社は、ストレスチェックや組織診断等の可視化ツールを提供し、これを組織改革に活かすための研修を行うコンサルティング事業を展開しています。ストレスチェックは法定義務なので年に一度のリピート発注が見込まれ、信頼関係が確立されれば確実な事業ですが、さらに成長基盤を固めるには、次の3点の課題解決が不可欠です。

①可視化ツール浸透のための有力な担ぎ手

まずは、法定義務のストレスチェックを精神科病院OEM提供を足固めとするにあたり、多様な収益チャネルを拡大するにあたり、ブランディングとスピードを重視するために、業界トップを顧客とすることを期待します。

②高収益ビジネスモデルの構築には

個社のストレスチャック情報提供から、別商材(組織診断や研修、コンサルティ ング等)導入事業とOEM先への研修をするにあたり、同一商材の多様な活用、リピートせざるを得ない仕掛けなど、生産性向上支援の高収益モデルの構築を早期に期待したい。

③経営体制の確立を

現在3社の合弁事業で、アルゴノーツの子会社で、コンテンツ対応の三浦氏が社長となっている。HR Tech分野はこれから市場が拡大します。総合的組織診断とコンサルで市場競争を勝ち抜く体制の確立が急務です。

2017年2月6日インデペンデンツクラブ月例会 東京21cクラブにて