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「「竹」を「食の安全」と「地域の再活性化」に役立たせる」

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株式会社タケックス・ラボ
代表取締役 清岡 久幸さん

1963年高知県香美郡生まれ。81年高知県立城山高等学校を病気のため中途退学。83年家業である「蜂の巣工房」入社。93年(株)バンブーテクニカル取締役就任。98年(株)タケックステクノを分社独立。2002年当社設立 代表取締役 就任。

住所: 大阪府吹田市江坂町1-13-48 インタープラネット江坂ビル3F
TEL: 06-6821-2554 設立: 2002年2月  資本金: 1億7715万4000円
http://www.takex-labo.com/

竹を原料に、抗菌剤・抗ウィルス剤・食品添加物・医薬部外品・除菌洗浄剤・消臭剤と高付加価値製品を展開するタケックス・ラボ。竹資源の有効活用を通じ地域活性化を図り、さらに環境創造企業として独自の地位を築くことを目標にしている清岡社長にお話を伺いました。

―公衆衛生品の新たな市場を創出
清岡:今までターゲットとしてきたのは食品衛生分野、主に集団的に食中毒を発生するリスク対策としてです。この5月の新型インフルエンザ以降、安全性に関する意識はさらに高まり、公衆衛生品の新たな需要が生まれてきたと感じています。

―竹にまつわる言い伝え
清岡:昔から竹職人は水虫にならないと言われていました。実際に北里大学で竹表皮からの抽出成分で分析すると、白癬菌(水虫菌)に対して非常に効果が高いというのが証明されました。竹は生活の知恵として食品の保存道具としても使われていました。研究を進めていくと食中毒菌・病原菌やカビに有効で保湿効果や抗炎症効果もあり、食中毒やアトピーにも有効だと検証されたのです。

―効果の持続力が強み
清岡:モウソウチク抽出物は抗菌効果が長期間持続します。競合であるエタノール(アルコール)製剤と違い、長期間抗菌・抗ウイルス効果が発揮できるので食関連の事業者から重宝されています。竹は乾燥していくに従い、分子が薄層皮膜を形成し、これが効果の持続性にもつながっています。

―天然の食品添加物の安全性
清岡:竹というのは食品衛生法の中の食品添加物というカテゴリーで認可されています。経口によるアレルギーも見つかっていません。使用制限が多い化学品と比べ、天然物でも優れた有効性を保持しており、且つ医薬系、医薬部外品の分野でもその安全性が高く評価されています。

―お客様の顔が見える代理店
清岡:今エンドユーザーは、主に外食・介護・食品工場・学校給食・塾など6,000事業所です。販売は全国に200ほどある代理店を通じて行います。最近、東海地区にある地域密着型の業務用酒販問屋の売上が急拡大しています。現場に決定権がある外食店舗に毎日行くので、良さを認めていただければ即採用されます。18リットルで12,000円と、物流コストも抑えられるので価格競争力もあります。

―コンシューマー向け商品で世界展開
清岡:消費者向け市場には、森下仁丹を通してメディケアシステムズ(ロート製薬90%・森下10%)へのOEM販売として展開しています。海外からのオファーも多く、コンシューマー商品に関するノウハウを蓄積し海外への進出も計画中です。将来は健康食品やヘアケア、スキンケア商品の原料として、世界に向けて販売したいと思います。

―父の職人技から生まれた研磨技術
清岡:竹の内側の繊維質が抽出物に入ると成分が非常に不安定になります。表皮だけを薄く一定に削り取るには高度な技術が必要です。竹というのは先端にいくほど細くなり節もあります。竹細工職人だった父のおかげで竹の表皮だけ寸止めで剥ぐ機械が考案され特許を取得しました。

―門外不出の成分解析データ
清岡:竹表皮の成分は春夏秋冬、1年2年ものでバラバラです。それを季節毎・生育年数毎に成分変動をデータ化し、成分バランスの条件に見合った抽出条件を設定し、常に安定した品質の製剤として確立するには、それからさらに10数年かかりました。しかしこれで弊社事業の成長戦略を構築できました。

―荒廃竹林は地球環境問題
清岡:竹林が密集しすぎると根っこが地上に浮き上がり、雨が降ると表層すべりが起きます。今年夏の日本各地での大きな山崩れがそうです。現状では荒廃した竹林は大半が放置されています。自治体レベルだけでなく国交省や農水省、さらに経産省もバイオマス有効利用観点から巻き込み国全体で取り組む問題です。当社では環境NGO団体「オイスカ」とも連携して竹資源有効活用の提言を行っています。

―構造材として竹を再利用
清岡:竹の表皮だけ再利用してもあまりにも少量で、荒廃竹林撲滅の根本的解決にはなりません。そこで外側を剥いだ竹材を原料に建築資材として再活用し始めました。竹の特徴は剛と柔です。高強度コンクリート並みの強度ながら竹繊維が粘っこく維持してくれます。つまり耐震性能の高さ、強度保持力が優れているのです。現在はフロア材やデッキ材として、ヒールの跡がつかない高級床材として結婚式場や教会で使われています。

―竹産業が盛んだった郷土、高知
清岡:私は病気のため高校を卒業できませんでした。20歳の頃、中卒の自分にできることは何か真剣に悩みました。その頃、実家である高知県野市町では竹細工産業がどんどん衰退していました。竹という植物を違う視点で見て、新しい用途を開発して竹産業を下支えできないかと考えたのがきっかけでした。

―証券外務員時代に学んだ知識
清岡:25歳の時、父の会社が倒産、直後に離婚し子供もいてこれは仕事せなあかん、と山一證券へ入りました。はじめて日経新聞を読み一生懸命に勉強しながら株式や転換社債を販売しました。会社勤めの経験が無い私でしたが、その時ビジネスに対する興味がわいてきたことが後の起業に活かされました。

―O-157事件で抗菌効果が証明
清岡:父は大阪で竹の建材開発の仕事を再開、私は父の仕事を手伝いながらモウソウチク抽出分の抗菌性を研究していました。平成5年、当時の産業基盤整備技研よりの補助金を活用して大阪市立大学と共同研究を始め、O-157の実験結果を発表、食に関係する業界から数多くの引き合いが来ました。

―大企業の担当者が商品開発を支援
清岡:しかし成分はあっても商品化できる段階ではありませんでした。たまたまマクドナルドと山崎製パンの担当者が開発室の方で、日々の商品評価するだけの仕事とは違う、これは自分たちのノウハウが発揮できる機会にめぐり会えたと喜んで当社と商品開発していただきました。それが今の当社商品ウェットワイパーやタケガードに発展しています。

―支援していただいた方々
清岡:大阪でスーパーを25店舗展開されていたサボイという会社がありました。そのオーナーである和所さんという方は孤児院で育った方でとても苦労して起業されました。今日に至ったのはいろいろ人の支援があったからで、それをこれから順繰りにお返しすると仰っていました。私の食の安全性に対する考え方や理念に共鳴いただき、父の事業が再度破綻したときには億単位の資金提供いただき会社を挙げて支援くださいました。流通業として消費者により近い目線を持つ和所社長と、メーカーという視点でかつ医薬品というコンプライアンスの厳しい業界で事業をされている伏見製薬(香川県丸亀市)伏見社長から、役員会では経営アドバイスや叱咤激励をいただきました。今はもう自分の力で行けるよということでお二人は当社役員を退任されましたが、和所さんと伏見さんがいなかったら今の当社はありません。

―林原生物化学研究所からの出資
清岡:林原社長には日経新聞の編集員の方からのご紹介でお会いしました。その方より「どんな図々しいことでも自分がこうしたい!と思うことをぶつけろ」とアドバイスされ、林原社長にいきなり「うちの資本を10倍に評価して出資してください」とお願いしました。かつ「傘下には入りたくない、自分の思うように経営したいし将来はIPOもしたい、だから持株比率は20%まででお願いします」「お金も欲しい、信用力も欲しい、林原さんの持っているいろいろなノウハウも欲しい」「でも絶対に夢を達成するし、とにかくやり遂げるので図々しい事はわかっているがチャンスをくれませんか」と。その場で大笑いされました。すごい根性もっているねと。即決でした。しかも名前が欲しかったので個人ではなく会社名義で出資していただきました。

―トレハロースのビジネス戦略
清岡:特許戦略や事業戦略で大きく視野を広げて攻めたい時に林原社長のアドバイスを請いました。林原のトレハロースは医薬品バージョンと雑貨バージョンでは価格が数倍も違います。モウソウチク抽出物もエキスとしてチンタラ売っていても成長は難しい。それぞれのグレードのエキスを抽出して、それぞれのグレードでエビデンスを得てから世界市場へ展開しなさいと。さらに抽出方法をブラックボックス化して知的所有権を確立すること、シンポジウムを作り世界の研究者がどんどん売れるような形を発表しにくる場を設けること、林原社長のスケールの大きな発想にとても刺激を受けました。

―どん底で決意した株式上場
清岡:平成10年、会社の存続が厳しい時に父の夢を何としても完成させたいと思いました。高いところを見据えないと心のバランスが取れませんでした。原点を辿っていくと中卒という自分のコンプレックスだと思います。あとは死にかけた経験。目の前で亡くなっていく方を病院のベットからたくさん見て、生きた証、人生の一瞬一瞬をフルパワーで悔いのない生き方をしたいという気持ち....最後に東証の鐘を鳴らして世界へ展開できる企業になりたい。そしてこれまで自分を支援してくれた方に有形無形の恩返しがしたい。清岡久幸という人間を、一貫して信じてくださってきた方々に、その目が節穴ではなかったと言ってもらいたい。もう、それだけです。

―国盗物語の斉藤道三に恋したこともありましたけど・・・
清岡:最近印象に残った本はドラッカーの「実践する経営者」です。「成長戦略は、機会のあるところに的を絞らなければならない。機会とは外に横たわっているものではなく、経営者が創り出すものである」というフレーズではっとするものがありました。

【コラム】企業の「社会貢献」を考える(法貴 礼子)

※全文は「THE INDEPENDENTS」2010年1月号 - p4-7にてご覧いただけます