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「メリービズ(株)、(株)アムノス」

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早稲田大学
商学博士 松田 修一 氏

1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。
1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。
1973年監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所、パートナー。
1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。2012年3月教授を退官。ウエルインベストメント㈱取締役会長
特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ代表理事

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基調講演は、10月にジャスダックにIPOをした資産管理プラットフォーム事業を展開している(株)キャピタル・アセット・プランニング 代表取締役社長北山雅一氏による「Fintechは1日にしてならず!」でした。大監査法人から独立して30年、個人の資産管理(FP)事業をベースに、制度変革期をチャンスに、大手ベンダーやコンサルティング会社に先駆けて、末端の業務プロセスの開発を手掛けてきました。新興の挑戦している大手生命保険等と連携し、顧客の信頼を高めるために貢献するというベンチャーのWin-Win連携の成功モデルを構築してきました。現在ブームとなっているFintechの先駆け会社としての事業の厚みを感じました。
事業計画発表会では、2社のプレゼンがあり、将来のIPOを考えていますが、次のような課題を克服する必要があります。

No.736 メリービズ株式会社(代表取締役 工藤 博樹 氏)

工藤社長は、IBMや金融機関などの業務経験を経て、中小企業向け経理代行サービとしての当社を2011年に設立しました。経理事務代行は、個人を含む事業者から領収書などの原始証票の郵送を受け、スキャナーを活用したデータから自動仕訳をして、経理データとしてお返しするというビジネスモデルです。経理代行から労務代行など事務管理領域に事業を拡大してIPOを目指しており、AIを利用した高い精度・速いスピード・安価な価格の優位性がありますが、次のような課題があります。

①小規模事業主への本業集中支援

個人を含む小規模事業者は本業に集中できるように、原始証票からデータ入力が経理代行サービスの主たる業務です。ネット社会における個々人の働き方の変革にマッチした事業ですが、ここが小規模であるため、事業としての規模感を出すために、BtoBtoC(小規模事業者)で、ロットで顧客確保をする必要があります。

②経理代行の出口としての税務対応を

小規模事業主は、白色又は青色申告が必須です。経理代行の延長線上の税務対応サービスが不可欠です。税務申告代行は税理士専業業務ですので、連携が不可欠です。なお、労務関連業務まで事業を拡大するにあたっても、業務ごとに申請書類があります。士業をネットワークに入れながらの横縦事業の拡大を期待します。

③原始証票消滅時代への対応

紙媒体をベースにしたビジネスモデルで、スキャナー・インプットで、各内外の雇用に貢献するのは確かですが、ウェブの進化による原始証票が徐々に消滅する時代に入っています。持てる技術を活用し事務代行サービスを超えたプラットフォームを早期に提供できるベンチャーを期待します。


No.737 株式会社アムノス(代表取締役 田中 淳 氏)

精密部品製造業であるTSSは、主力顧客の海外展開による成長鈍化という危機に直面しました。一顧客や電子部品一業種への過度の依存から脱皮するために、医療機器分野への進出を試みました。社内で開発した血圧計の製造販売のため薬事法3業種の認可をとりましたが、1台も売れませんでした。しかし、医療機器メーカーになったことから大学の技術の事業化の相談が来るようになりました。細胞未分化の羊膜(赤ちゃんの羊水を包む膜)を再生医療へ活用する富山大学の技術です。2014年に当社を広島のポエックとの合弁会社(73%出資)で設立しました。IPS細胞の安全性が確認されていませんが、すでに羊膜の再生医療への活用は、米国に先行事例があり、TSSの加工技術で競争優位を維持できます。乾燥技術を活用したフィルム状での保存が可能ですので、加工工場を建設してIPOを視野に入れ活動していますが、次のような課題があります。

①米国で上市を優先するにあたり知財調査を

羊膜の活用という市場は日本になく、医療機器としてクラスⅣに該当し症例の治験が必要になるが、米国では創傷被覆材として治験が不要で届け出だけで上市できます。すでに先行ベンチャーが存在しますが、加工技術が異なりより安価に、販売会社を通して病院に提供できます。米国での収益モデルを達成し、日本での開発に着手する計画ですが、競合会社の関連知財に抵触するか否かの徹底調査を。

②米国での訴訟リスク

被覆材でも健康障害が発生すると、知財侵害以外の訴訟に見舞われる可能性があります。米国市場で、日本の大手企業が、機能性食品10億円の販売に関する健康障害訴訟プロセスで、不正の証拠提出(開発・製造過程の証言)が発覚し、懲罰責任に問われ2000億円の賠償金を支払った事例があります。訴訟リスクに対応する開発過程の証拠書類を正確に記録として残すこと。

③安心安全な原材料の安定確保

眼科・口内・中耳炎・脳等多様な損傷に対して活用できそうであり、安心安全な素材としてニーズが急増する可能性があります。ただし、羊膜は出産の際に確保され、産婦人科現場では、医療廃棄物として処理され、再利用するための原料とみなされていません。また、羊膜はタダで手に入るとはいえ、使用不能なウイルスなど感染がないかのチェックも必要です。どのような現場から原材料を安定的に確保するか強固な採取チャネルを構築すること。

2016年11月7日インデペンデンツクラブ月例会 東京21cクラブにて