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「国内唯一のWi-Fi認証エンジンの知財戦略」

公開

<話し手>
情報セキュリティ・マネジメント株式会社
代表取締役 佐々木 賢司さん
伝説のベンチャー「コスモ・エイティ」から始まり、1993年日本アルテミス㈱を設立。
2004年には「サーバ運用管理のOEM」という新しい業態を目的として当社を設立。 2007年に「POPCHAT事業(知財・顧客・販売網)」を日商エレクトロニクス社より譲受し
ビジネスモデルの転換・進化を図り現在では「国内唯一のWi-Fi認証ベンダー」として業界内で独自の地位を確立。

<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋さん
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。

鮫島正洋の知財インタビュー

国内唯一のWi-Fi認証エンジンの知財戦略


■ Wi-Fi接続認証「POPCHAT」シリーズ

佐々木:私たちの主力製品である「POPCHATシリーズ」は、累計1900台以上の販売実績と市場占有率65%を確保するホテル向けゲートウェイ・サーバです。宿泊客が持込む様々なPCを「PCのネットワーク設定を変えずに」「インターネット接続が出来る」プラグ&プレイ機能を有しており、2010年には競合先米国会社も倒産撤退したため日本市場では独占状況にあります。
鮫島:完全なニッチトップですね。ホテル以外の用途に広がりはありますか?
佐々木:2013年から始めたWi-Fi認証クラウド事業は、大規模商業施設、自治体、空港、駅、商店街等すべてのWi-Fiエリアオーナーが対象になります。Wi-Fi接続料フリーで運営する会社に、接続認証エンジンを提供するサービスです。平成28年度からは自治体が運営するフリーサービスは、犯罪防止の観点から個人認証システム導入が義務付けられています。私どもは、SNS連携(OPEN-ID認証)、SMS連携(コールバック認証)、メールアドレス認証の機能も提供しており、特許を申請しています。
鮫島:ドコモ、KDDI、ソフトバンクというキャリア系3社との棲み分けは出来ますか?
佐々木:私たちは独立系第4極としてキャリア系3社とは異なりオンプレミス型Wi-Fi構築を行う回線会社やSIerへPOPCHATを供給しており共存共栄が可能と考えています。

■ 情報配信インフラ「AD-Coupon(アドクーポン)」

佐々木:ブラウザーで位置情報を把握した地域情報配信システム「AD-Coupon」を成長戦略の軸にしたいと考えています。Wi-Fiインフラで効果的な情報配信を望む大規模商業施設、商店街、自治体などのエリアオーナーおよびエリアスポンサーなどがターゲットになります。
鮫島:アプリによる地域情報配信との違いはどこにありますか?
佐々木:Wi-Fi接続と同時にブラウザに勝手に周辺の地域情報が表示されます。ユーザーはアプリと違ってダウンロードする必要もなく「簡単に利用者の言語に合わせて自動翻訳された地域情報」が見れます。
鮫島:POPCHAT事業基盤を活かして、情報配信インフラ事業者として新たなステージへ向かうわけですね。インバウンドなど地域活性化への活用も期待できると思います。
佐々木:SI事業者、回線事業者など2000社の販売網を構築していき、月額課金のストック型事業として新たな収益モデルを築いていきます。

■ 上場戦略と知財戦略

佐々木:目先の資金需要はありませんが、事業スピードを上げ海外展開もするために上場を考えています。社員のモチベーション効果にも期待しています。現在の事業領域は「認証・暗号とマネタイズ」をキーワードにホテル・自治体・商業施設などのパブリックWi-Fiでシェア確保に事業集中していますが、次の段階ではIoTをはじめ企業/学校/集合住宅などのプライベートWi-Fiへと事業展開していきます。更には、この“小さな情報通信インフラ”を活用してエリア毎に特化した情報/広告配信事業AD-Couponを拡大していく事でクラウドを最大限活用したストック型ビジネスへ転換していきます。
鮫島:貴社は既に市場支配力があるので何が何でも「知財戦略でお化粧を」という状況ではないように思います。むしろ、今後の競争力を確保するためには、事業提携契約が重要ですが、海外進出をされるのであれば、知財の保護にも一定の配慮をされたらいいのではないでしょうか。ニッチトップからの大きく飛躍に期待しています。本日はありがとうございました。

―対談後のコメント

【佐々木】今回の対談で鮫島先生に教示された知財戦略を元に事業戦略を再考し、オープンにする技術とクローズにする技術を明確にしながら今以上に競争力を高める事で当社の様な小さなベンチャーが大手企業と互した事業展開が可能となると感じました。ありがとうございました。
【鮫島】一般的に特許取得の目的としては、①後発企業の参入を遅らせる、②他社提携がやりやすくなる、などが挙げられます。情報セキュリティ・マネジメント様の場合、これから上場を目指すということですので、③その際のDD対策や投資家・証券会社への説明のために、知財戦略は必要になるのではないかと考えます。

「THE INDEPENDENTS」2016年10月号 P18-19より