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「(株)TakumiVision、リンクウィズ(株)」

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早稲田大学
商学博士 松田 修一 氏

1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。
1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。
1973年監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所、パートナー。
1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。2012年3月教授を退官。ウエルインベストメント㈱取締役会長
特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ代表理事

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No.718 TakumiVision株式会社(代表取締役 片桐 一樹 氏)

片桐社長は、立命館大学山内寛樹教授が画像処理技術で2005年に起業した大学発ベンチャーを2012年に引き継いだ。鮮明な画像の見える化から、どのような場面で活用するかという検知検出の画像処理システムの開発に比重を移した。汎用センサを使い検知実行をセンサに内蔵した非接触モジュールを開発した。要素技術は画像(RGB画像、赤外画像)を用いたセンシング技術で、インテリジェント赤外線カメラモジュールとKinect人物切り取りの2製品で、ビジネスを展開している。非接触モジュールの使用例として、非接触オーダー端末(回転ずし)、ウォシュレット操作端末、小型ロボットの目、自動車内操作端末等がある。高品質の人物切り取りのKinectは、ブライダル、カラオケ、アミューズメント、ゲーム等に使用できる。
IPOまで事業を拡大し、画像処理プラットフォームになるためには、次の諸点をまず解決する必要がある。

①技術開発から事業開発へ

大学技術の延長線上で、何にでも活用できる技術で、顧客にとっては「あったらいいね」という技術開発段階の印象を受ける。2つの製品共に、BtoBビジネスと、BtoBtoCビジネスとが可能である。どの事業領域を優先順位にするかで、事業開発戦略を明確にし、少ない経営資源を集中的に投入しないと収益モデルが立たない。

②オリジナル映像活用の法的対応

マイクロソフトのSDKよりもはるかに人物切り抜きが鮮明で、企業でも、個人でも本当にあったら面白い技術である。しかし、勝手切り抜きの版権問題をクリアにする必要がある。個人投稿の漫画・写真・イラスト・音楽等の普及のプラットフォームビジネスは、採用投稿者への支払いシステム(著作料)があることを考えると、工夫が必要である。

③クローズとオープンでブランドの確立を

現在開発の2製品を短期間に普及するためには、知財を固めると同時に、任天堂などゲーム会社と連携するなど、クローズとオープンを明確にし、普及速度を加速したブランド戦略が必要である。


No.719 リンクウィズ株式会社(代表取締役 吹野 豪 氏)

モノづくりの日本の拠点の一つである浜松で育ち、CADのエンジニアであった吹野社長は、熟練工が高齢化する日本で、匠の技を工場現場に移入するために、皆が使える産業用ロボット向けスマート・システムの開発販売を開始して、2年に満たない。
L-Robot(生産品一つ一つの違いに対応)、L-Qualify(100%トレーサビリティ)、L-Factory(開発中:リアルタイムに改善できる工場へ)の3つのシステムで、工場現場のロボット化に貢献しようとしている。産業用ロボットの姿勢を、パソコンなどを使い、CADデータを用いて3D表示をしながらティーチングするロボットシステムを、長年のネットワークを活用し、導入事例を重ねている。IPOを目指すだけの体制も整っていないが、経営基盤確立には次の諸点を注意する必要がある。

①開発体制の整備を

世の中が最も多忙な2015年3月26日に設立した当時の開発体制が現状でも変わっていない。システムがパッケージ化されるとはいえ、個別企業へのカスタマイズ、アフタケアには多くのエンジニアが不可欠である。これからの業容拡大には、エンジニアの大量採用が必要で、そのための大学研究室などとのネットワークを検討されたい。

②儲けるビジネスモデルの確立を

日本の強い生産現場のロボットをセンサとして、リアルとバーチャルを実現するモデルが、現在競合はない技術であろうが、ロボットをセンサでつなぐシステムの販売と、システムの利用料の両面で収益モデルを考えている。前者については通常の売買であるが、後者のシステムの利用料の把握による課金を自社でコントロールできるかの問題が残る。積み上げビジネスであることを考えると、収益の中心を後者に置きたいものである。

③最優先連携先とのWin-Win関係を

ビジネスモデルは直販ではなく、ファナック等のロボット会社を通した販売になると考えるが、いかなる先とどのような契約内容にしたかが、その後の取引形態に大きな影響を及ぼす。ベンチャーと大企業とのWin-Win関係先を最優先して決定し、できれば連携とマイナー出資を同時に実現できるような資本政策の実現を期待したい。

2016年9月5日インデペンデンツクラブ月例会 丸ビルコンファレンススクエアにて