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「赤外線カメラのビジネス戦略を考える」

公開

<話し手>
TakumiVision株式会社
代表取締役 片桐 一樹さん
1972年4月7日生。1995年近畿大学理工学部卒業後、(株)ハイテック入社。
1998年イノテック(株)入社。
2005年アルファテクノロジー(株)入社。
2012年TakumiVison(株)/代表取締役就任。
2015年アルファテクノロジー(株)代表取締役就任。

<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋さん
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。

鮫島正洋の知財インタビュー

赤外線カメラのビジネス戦略を考える


■ 技術開発からビジネス展開を考えるステージへ

片桐:当社は立命館大学発ベンチャーとして2005年に設立されました。理工学部山内寛紀名誉教授の保有する画像処理アルゴリズムの特許技術をベースに、当時は画像鮮明化によって人物顔検出の研究開発を公的機関から委託事業として行っていました。私は2012年に当社の経営を引き受けどのようにビジネス展開するかを模索してきました。そこでユーザーが求めているのは鮮明化ではなくそれを活用した検知システムだと考え、それを小型の赤外線カメラとして製品化しました。
鮫島:ソフトウェア技術は特許化が難しくかつ事業収益を考えると、ハードと組み合わせたビジネスモデルを構築する必要があります。貴社はまず赤外線センサをモジュール化して用途開発を進め、次に小型インテリジェントカメラとしてプロダクト化に成功された訳ですね。製品的には従来の赤外線カメラシステムがPC側でセンサ情報を処理するのに対して、貴社の製品はインテリジェントカメラ側でセンサ情報を処理しPC側のCPU/メモリ等を使用しないためコスト面の優位性は非常に大きく新たな市場が開発できる。さらにキーボードに代わる赤外線センサを活用した新しい入力システムとして捉えても面白いですね。
片桐:サンプル出荷段階ですが、展示会出展や事業プレゼンを通じて、産業用からエンタメ市場まで幅広い用途開発相談が持ち込まれています。「モーションキャプチャ(センシング)モジュール」は、寿司注文パネルのノンタッチ化や大型デジタルサイネージへの活用などへ、「Kinect人物切抜システム」は従来のクロマキー合成を凌ぐ利便性と高画質化を実現しており、カラオケなどにも展開できると思っています。
鮫島:技術アピールするために製品化によって市場を広げた次は、収益モデルの確立です。モノづくりだけで収益化するには厳しい時代です。広げた次は、収益モデルの確立です。モノづくりだけで収益化するには厳しい時代です。
片桐:現在は展示会や事業プレゼン会を通じてどのような市場が存在するか確認している最中です。ただ将来は小型インテリジェントカメラを製品として販売するのではなく、サービスとして展開できたらとは思っています。知財を守るために特許出願はしていますが、知財をどのように収益貢献させるかは模索段階です。

■ 知財を活用したビジネスモデルを構築する

鮫島:私どもは知財に関する法律事務所ですが、最近はビジネスモデルをどのように作るかという相談が増えています。貴社はプロダクトの開発段階ですが、事業化やそれに伴う資金調達計画は立てられていますか?
片桐:数値計画はまだ作成できる段階ではありませんが、プロダクトの試作や市場開拓のために資金調達を行いたいとは考えています。ただ、ベンチャーキャピタル(VC)からはビジネス規模が見えない段階での投資は難しいと言われています。
鮫島:モノづくり企業の場合、製品は必ず真似されるという前提に立ったうえでのビジネスモデルの作り込みが資金調達のポイントになります。ベンチャーチャー企業は大企業と違って予算の関係上、特許取得できるのはせいぜい数件までですから、特許だけではどこかで掏り抜けられてしまいます。そこで、iPhoneのように、iTunesというプラットフォームを形成して、モノづくりのみに頼ることなく成功することを考えるべきです。プラットフォーム型ビジネスは利用ユーザーが多い人が勝ちとなるので、特許は真似が生じるまでの先行アドバンテージ期間を確保するためと割り切る事がプラットフォーム構築における活かし方となります。私どもは特許の出願業務は行いませんが、知財をどうビジネスに活かすかはアドバイスできると思います。本日はありがとうございました。

―対談後のコメント

【片桐】当社は技術開発を中心としており、知財戦略やマーケティング等、技術以外のビジネス戦略の企画・立案経験が少ない点において危機感を抱いておりました。本日、鮫島先生のお話をお聞きすることができ、その必要性を再認識しました。またプラットフォーム型ビジネスなど考えてもいなかった発見もあり、驚きと共に刺激を受けました。本日はありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
【鮫島】技術がコモディティ化するにつれ、単なるモノ売りでは儲からなくなってきました。ベンチャー企業の製品はコモディティ化製品ではないのですが、特許力が弱く、第三者の模倣を許容しうるという点では、コモディティ化した製品と同様に考えることができます。この際に、技術から収益を上げる手法としては、サービス化やプラットフォーム化となるのですが、TakumiVision様の製品はまさにそれに適合したものであると感じました。

「THE INDEPENDENTS」2016年9月号 P18-19より

TakumiVision株式会社

住所
京都府京都市下京区夷之町683-3コタニビル3階
代表者
設立
資本金
従業員数
事業内容
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